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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
第5巻 暗黒の淵にて、明星を待つ

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静寂に包まれてⅣ

 ユーキは掲示板で手掛かりを集めるのを諦めて、最後の頼みの綱である受付のコルンへと声をかけた。


「ユーキさん。おはようございます。先日は……その、大変でしたね」


 クレア経由でドラゴンやルビーの話はギルドへと伝わっていたが、ドラゴンなんて単語を迂闊に出せないからだろう。逡巡した後、コルンは言葉を濁して声をかけてくれたようだ。相変わらず、なんの動物かわからない耳が銀髪の中から顔を出して動いている。


「そうでしたね。それで、今度は水の魔力が高そうな場所を探しているんですけど……。できれば、この前のルビーみたいな物があればすごい助かるんですが」

「うーん。それは難しいですね」


 フランを助けるのにも相当苦労したことを考えると、この前、手に入れたルビーのような素材が一番だと考えたユーキだった。

 しかし、コルンは第一声から不安になることを呟いた。


「基本的に水源地は国民の命に関わるので、基本的に王家の直轄領になってるんですよ。だから、そういうところには簡単には入れないです。よしんば入れたとしても、資源などの採取は全て管理下で行われますから、自分の手元には残るものはそう多くありません」

「じゃあ、海とかそういうところに行くしかないってことですか?」


 ユーキが語気を強める。コルンもユーキが何かに必死なのは伝わったのか、非常に心苦しそうに返答を考えている。


「そうなりますね。後は自然界で植物の一部。枝や葉、根。あるいは樹液。動物ならば内臓や血液などに含まれていることもありますが、狙って見つけるのは大変ですね。魔力が含まれているということは、それだけ他の冒険者さんたちも狙っているということですから。そういう意味では錬金術師さんが一番大変なんですけどね」

「では、この前みたくロジャーさんに助けを求めても……」

「素材はいつでも不足しているのが現状です」

「そうですか……」


 肩を落とすユーキにコルンもかける言葉がなく、羊皮紙を無言で差し出した。


「『依頼をユーキさんから出す』という方法もありますが、かなり高くなります」


 コルン曰く、「素材はピンからキリまである」らしく、それこそユーキが先日手に入れたルビー級の物を探そうとすると、金貨百枚は最低ラインだという。依頼となると手数料など込々で倍以上に跳ね上がることもあるので、ユーキの手持ちを考えるとあまりいい方法とは言えなかった。


「残る手段はダンジョンからの入手ですね。そういう意味では魔法学園のダンジョンは近場ですが、闇雲に探すよりは可能性があるかと」

「でも、魔法学園のダンジョンは人工と聞いています。そんなところで、良い素材が出るんですか?」


 ダンジョンには大きく分けて天然でできたタイプと人工でできたタイプがある。その点に関していえば、魔法学園は間違いなく人工ダンジョンではあった。


「そうなんですけどね。深いところに行くと、時々、出てしまうんですよね。稀になんですけど」

「何がです?」

「――――アーティファクト」


 それは、おかしい。

 それならば、ここにいる冒険者は何をしているのだという話だ。学園のダンジョンは常時、冒険者たちに埋め尽くされてしまっているだろう。

 その考えをコルンは見抜いていたのか、さらに言葉を続ける。


「魔法学園内のダンジョンは、生徒専用ダンジョンなんです。冒険者が入れるのは学園が長期休業になる時のみです。そういう意味ではユーキさんは実力も立場もちょうどいい位置にいますね」

「そんなことが……」

「おまけに、何故か誰もいないのに宝箱の中身が補充されていたり、()()()()()()()()()()()()()()()()、ギルドでも一時期話題に上がっていたんですよ。中には王家に献上されるような物品まで出てくるものですから大騒ぎになりました。王家の権限で騎士団が中に入ったことも有ったらしいんですけど、結局はなにもわからず迷宮入りのままです」

迷宮(ダンジョン)だけに?」


 ユーキが指摘するとコルンは顔を真っ赤にして、咳払いをした。言った本人も冷静になると、自分のギャグが恥ずかしかったらしい。目を閉じて、背筋を伸ばすと何事もなかったかのようにユーキへと説明を続ける。


「と、とにかく。ユーキさん的にも一攫千金を狙える。万が一、望む物ではなくても、それを元手に必要な物が手に入れられるというわけです」

「そうですか。少し、考えてみます」

「頑張ってくださいね」


 コルンとの会話を切り上げ、離れたところでユーキは腕時計を見る。時刻は十一時になろうとしていた。精霊石の様子がおかしいことに気付いた後、マリーたちとは今日の正午に伯爵家で落ち合うことになっている。軽い朝食だったために、早めの昼食をとってから伯爵家へ行こうと決めると、ユーキは誰もいない入口の柱の陰に隠れた。

 ユーキは誰にも見られないように胸ポケットを覗き込むと小さく呟く。


「学園のダンジョンに挑もうと思うけど、ウンディーネはどう思う?」


 ――――いいと思います。


 ポケットの中で精霊石は小さく輝きを放った。

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