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聖夜のダンジョンⅢ

 二人と相談して最終的に至った陣形は次の通りだ。

 勇輝が宝箱を左手で開ける。飛んでくる舌に警戒して、右手で刀を逆手に持って正中線をガード。ハリーは槍の穂先を入り口近くに向けて、勇輝が引きずり込まれそうになったら突き入れる。そして、トニーは――――


「実はやることない。だから、後は頼むぜ――――って、嘘ウソうそ! ちゃんと、風の魔法を用意してますよっと!」


 勇輝とハリーの視線に耐え切れなかったのか。ふざけるのを止めて、右手の人差し指を左手を添えるようにして示す。そこには緑色の球体が渦巻いており、確かに風魔法が存在しているのが勇輝には見えた。どうやら、トニーは詠唱なしに魔法を用意していたらしい。


「ほら、ここに斬撃効果のある風を待機させてるんだって。これを兄ちゃんの前に配置しておけば、万が一、剣――――いや、カタナだっけ? それで守れなくても俺が何とか出来るって寸法よ」

「じゃあ、俺の刀要らなくないですか?」

「いやいや、安全策はいくらあっても困ることはないっすからねぇ」


 トニーの言い分は理解できるが、どこか釈然としない部分がある。果たして、この二人に背中を預けて上手くいくのかどうか。

 勇輝は不安に思いつつも、目の前にある宝箱に視線を移す。遠目から見ても黄色の光を纏ったそれは、宝箱かミミックか判断がつかない。何しろ、勇輝はファンメル王国で一般的に見つかる宝箱と言う存在を、魔眼で見たことがないからだ。

 一度裏に回って見たり、側面を見て見たりするが、異常な点は見られない。


「これ、外から攻撃すると、どうなります?」

「ミミックだった場合でも、蓋を開くまでは襲ってこない。尤も、倒した時に手に入る魔石はどういうわけか砕けていることが多いらしい。そして、普通の宝箱であっても、このダンジョンでは中身が入っていない空の物になる」


 勇輝はそれを聞いて、深呼吸をする。覚悟を決めて、宝箱の前に屈んだ。


「では――――行きたいと思います」

「おっ、思い切りが良いねぇ。じゃあ、魔法を移動させてっと」


 トニーは人差し指を軽く動かして、球状の竜巻を勇輝の目の前に移動させる。一方、ハリーは無言で宝箱の前に穂先を差し出した。


「開けますね」


 勇輝は左手をゆっくりと宝箱の蓋へと近付ける。蓋へと指が触れるが、宝箱には動きがない。息を止めて、手を上側へと動かしていく。宝箱は地面に固定されているようで、勝手に動くこともなく、ギッと何かが軋む音が響いた。


「(こいつがミミックなら、攻撃の瞬間にこの光が動くはず……それを見逃さなければ防げるっ!)」


 勇輝の魔眼は様々な光で物を認識するだけではない。わずかに生物が動くよりも先に、その光が先に動くのを捉えることができる。それは未来視の能力に近く、このような戦闘に関わる場面では身を守るのに非常に役立つ。


 蓋の隙間が徐々に開き、指一本が入るかどうかというくらいまで来た時、勇輝の魔眼に蓋部分の黄色の光が唐突に動くのが見えた。


「(――――来る!)」


 瞬時に目の前の存在がミミックだと判断した勇輝の右手に力が籠る。同時に、蓋の隙間から一本の光の束が伸びるのが見えた。

 咄嗟に右手を動かして、刀をその延長線上に置く。すると、そこに光が吸い込まれるように当たり――――


「うおっ!?」


 勇輝の右手に思いきり負荷がかかった。刀が前後にブレるが、手放してしまう程ではない。少しばかり驚く顔の目の前で黄色の光は止まっていた。


「ふんっ!」


 そんな中、ハリーの声が響くと、刀を通して大きく宝箱が震えたのが伝わって来た。そして、腕に感じていた圧力がフッと抜けていく。勇輝が魔眼を閉じると、そこには紫色の舌が、血を滴らせながら地面へと刃に沿って落ちていった。


「これが――――ミミック?」

「あぁ、初っ端から殴ってくる奴を引き当てるとは運が無いな。いや、防げたから逆に運がいいのか?」


 最悪のパターンを経験しておけば、他の場合であっても対応できる。それ故に安心して、このまま進めるという判断なのだろう。

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