合流Ⅵ
勇輝が放った一瞬の雰囲気を察してか、ハリーは肩を竦める。
「まぁ、こいつのテンションについていくのは疲れるからな。反応するのはほどほどで大丈夫だぞ。それで、今回のパーティを組むにあたって色々と決めごとをしておかないといけないんだが……」
「リーダーは、そちらのお二人のどちらかで構いませんよ。俺はわからないことばかりなので、指示を出してくれた方が動きやすいですから」
「じゃあ、問題ないな。俺がやろう。こいつに任せてたら日が暮れちまうからな」
リーダーがハリーになることは速攻で決定した。
取り分に関しては、ギルド長に半々でと伝えてあったが、それを聞くと二人は顔を顰めた。
「それなんだが、俺たちのは実質、無給みたいなもんだ。全部後で、上に持ってかれちまうからな」
「仕方ないっすよ。俺ら二人とも金遣い荒いから」
ハリーは酒に、トニーは宝石集めで散財をしてしまうのだとか。二人とも情報収集や武器として使うために必要だと嘆くが、勇輝はジト目で二人を見る。
「酒場で情報収集と称して飲みまくって、どうでもいい情報を得るだけだったり、武器や魔力貯蔵用だと言って女性への贈り物にしたりしてないですよね?」
「……ナゼ、ワカッタ」
ハリーが急に抑揚のない声で話し始める。その横でトニーは口笛を吹く真似をするが音は出ていない。
勇輝はギルド長が金を渡すのはマズイと考えていたことと、彼らが話していたことから、結果に繋がらない使い方をしているのだろうと推測した。鎌をかけただけだったのだが、二人の反応からするに、当たらずとも遠からずのようだ。
「ま、まぁ、しっかり仕事をやりきれば、お金も手に入るみたいですし、頑張りましょう。俺に提示された金額を考えると、かなり大きなお仕事なんでしょう?」
「え? いくら提示されたんだ?」
「一日、これくらいで――――」
勇輝が手を開いて五を示すと、トニーの顔色が変わった。
「ご、五万!?」
「い、いえ、金貨で――――」
金貨一枚十万クルの価値があるので、五枚で五十万クル。日本円にして五十万円と考えれば、相当な大仕事のはずだ。
「――――俺たちには、そんな金は支払われない。多分、お前の能力に対する対価と見た方がいいな。逆に言えば、お前のおかげ楽に仕事が進むことが保証されているとも言えるな」
「あぁ、俺の眼ですね……。ミミックと宝箱を見分けられるかわかったわけじゃないので、あまり期待しない方が良いですよ? 別に俺がいるから良いアイテムが出るわけでもないですし」
勇輝の報酬金額にショックで崩れ落ちているトニーを尻目に、勇輝とハリーは会話を続ける。
「いや、それも大切だが、俺たちの目的はそれだけではない」
てっきり、ミミックの中から出て来るアイテムを探していると思っていた勇輝。しかし、ハリーが言うには、もう一つの目的があるらしい。むしろ、そちらこそが本命であるとギルド長は考えているとまで言う。
「聞いたことが無いか? 昔、聖夜のダンジョンを攻略したことがある奴がいるって話を」
「それなら友人に聞きました。でも、ダンジョンである以上、攻略する人が出てきてもおかしくないのでは?」
ダンジョンを進んで行けば、時間と実力さえあれば踏破することは可能だ。最深部という名のゴールが存在する以上、辿り着くことができれば攻略完了。その際に、何かしらの豪華な報酬を手に入れることもできるはずだ。
「ところがどっこい。それが問題なのさ」
「復活、早いですね」
トニーがドッキリ箱のように地面からニョッキリと勢いよく直立する。感情の変動が激しいことに呆れながらも、彼の言葉に勇輝は耳を傾ける。
「聖夜のダンジョンに挑む冒険者は、かなりの人数がいる。それこそ、普段は店を開いているようなおっさんですら、お宝を見つけられることを夢見てくるくらいだしな。でもな、兄ちゃん。見当たらないんだよ」
「何がですか?」
聞いた話では宝箱の出現率は、他のダンジョンに比べて異常に多いという。トニーの言う、見当たらないとは矛盾することになるはずだ。
「階段だよ。次の階層に向かう階段をどんなに探しても見つけられないのさ」
トニーはお手上げとばかりに、両手を天高く突き上げた。
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