合流Ⅴ
勇輝が宝箱を探して開け、警戒と牽制をハリーが行い、仕留めるのはトニーという形ならば安定するだろう。
そんな助言をしたコルンは、勇輝と彼ら二人を交互に見た。
「案外、良いパーティなのでは?」
「ほーら、俺の言った通りだ。なあ、兄ちゃん。今、俺たちが欲しいのは『女にやる指輪』くらいでな。それ以外のアイテムはやるから、お試しでやってみないか?」
指輪以外のアイテムには興味がない。
その言葉に勇輝は、彼らの正体に確信をもつことができた。
「お試し、ですか。今日、軽くやってみて――――でも良いですか? 上手くいくようなら明日以降も可能ですけど」
「だってよ、兄貴。案外、この兄ちゃん乗り気だぜ」
トニーが後ろ髪を掴むハリーの腕を叩く。
引っ張っていたハリーだったが、勇輝の言葉に歩みを止めて振り返った。その顔は目を丸くして、正気かどうかを疑っているようであった。あまりにも目を大きく開くので、ギルドを照らす魔法石の光がいくつも反射している。
「マジか? 見た目からお堅い奴だと思ってたんだが……。どうしたもんだか」
トニーを解放し、おもむろに顎を撫で始めた。その視線は、他のカウンターに並ぶ冒険者たちに向けられていた。
「何か、俺では不満ですか?」
「ランクは?」
「Bです。そこまで自分の能力が高いとは思っていませんけど」
ハリーは視線をコルンへと移した。すると、コルンは笑顔で水晶玉に手を置く。
「えぇ、確かに彼はBランクの冒険者です。そこは私が保証します」
「――――そうか。じゃあ、お試しパーティの結成と行こうじゃないか。この馬鹿が勝手に戦利品の山分けを決めちまったがな!」
ハリーはトニーの脇腹を肘で小突きながら、ギルドカードを取り出す。
「とりあえず、あっちの列に並び直しだ。リーダーは誰がやるかとか、色々と面倒なことは並びながら話をしよう」
勇輝は頷くと、コルンに礼を言って彼らに着いていく。
十分にコルンから離れたところで、トニーが横に並んだ。前を向いたまま小さく親指を立てる。
「よう。なかなか話が分かる奴じゃん。おかげでスムーズに話が進んだぜ。うちのギルド長が気に入ってたのも納得だ」
「――――もしかして、白いマスクを着けた人ですか?」
勇輝はトニーの言葉に頬を引き攣らせる。まさか、自分と交渉をしていたのが、暗殺者ギルドのトップだとは思っていなかった。
冷静に考えれば、近衛騎士団長に話を通せる人物なのだ。最低でもギルドの幹部クラスでなければ、話しすら進まないだろう。尤も、その人物本人が交渉に出て来るかどうかは話が別だ。それを考えると、ギルド長はどうも律義な性格らしい。
「そうそう、一応、何かあってもいいように顔はいつも隠してるんだと。まぁ、本人を知っている人からすれば、話し方でわかるんだけどな」
「おい、そっちの話はそこまでにしておけ。聞いている奴がどこにいるかもわからんからな」
列の最後尾にまで辿り着いたところで、ハリーが振り返った。
「改めて、自己紹介と行こうか。ハリー・ヘイズだ。歳は十八で、獲物は槍ということになっている」
なっている、ということは、あくまで勇輝と接触をするために作った人物設定だろう。本来は、短剣や毒針などを扱うのかもしれないと、勝手な想像を勇輝は思い浮かべる。
「俺はトニー。トニー・グレー。見ての通り、髪の毛が灰色だろ? 得意なのは見ての通り、魔法だ。土、水、火、風と何でもござれってな」
各指に嵌められた宝石は黄や赤、緑など様々だ。恐らく、それぞれが杖のような魔法の発動体であり、魔力を溜め込むタンクでもあるのだろう。興味本位で魔眼を開いた勇輝は、宝石たちが放つ光に眼が眩みそうになった。
「俺は内守勇輝。見ての通り、この剣と――――あと、ガンドが得意です」
「あぁ、知ってるぜ。なんてったって、あの魔法学院の壁にトンデモナイ一撃をぶち込んだことで有名だからな」
両手で銃のような形を作って、勇輝を指差すトニー。明るく、話しやすい人柄は素晴らしいのだが、四六時中一緒の空間にいると、勇輝は疲れてしまいそうな気がした。
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