合流Ⅳ
そこに書かれていたのは聖夜のダンジョンに関する通達だった。
既にダンジョンは解放状態にあり、メインストリートの水路からせり出す形で入口が出現しているらしい。
「勇輝さんがこの王都に来てから、初めての精霊の休息日を迎えるということでお渡ししました。かなり人気のダンジョンなので、ぜひ一度は潜ってみることをお勧めします。もしかすると、思いがけないアイテムを見つけることができるかもしれませんよ」
「そうですか。何か注意点とか、ありますか?」
「宝箱に擬態するミミックが少し対処に手間取るでしょうか。開けるまでは魔物かどうかを区別することはできないですし、当たりの宝箱を攻撃すれば中身が何故か空になっているらしいですから」
結局、宝を手に入れたいのならば、気を付けて開けてみるしかないらしい。
しかし、勇輝は魔眼で判別できる可能性がある。上手くいけば一攫千金も夢ではないかもしれない。
「そうですか。やはり、ダンジョンには複数人で行った方が良いですか?」
「えぇ、一人で開けて対処を誤ると、そのまま食べられてしまうことがあります。基本的には、一人が開ける役。あとの二人がミミックの動きを止めて、止めを刺すのが一番です。特に槍などの長物を持っていると便利ですね」
「困ったな。すぐに行って見たい気持ちがあるけど、ちょうど、仲間とは別行動中で……」
勇輝はわざとらしく腕を組んで唸る。そんな勇輝を見て、コルンはカウンターの下から別の羊皮紙を取り出した。
「一応、依頼掲示板でパーティの募集をすることもできますよ。ギルドを通せば、何かあった時にも対応ができることもあるので、知らない人と組む時には必須です」
「そうですか。では、お願いしようかな?」
勇輝はチラリと腕時計を見る。約束の三十分まであと数分と言ったところだ。勇輝が何気なく周囲を見渡すと、二人組の男が近付いて来ていた。
「お、コルンさん。お久しぶりーっす。新入りの案内っすか?」
片手を挙げて先に近づいてきた男が、そのままカウンターに肘を置く。短い鼠色の髪を軽く後ろで束ね、無精髭が目立つ。手にはいくつもゴツイ指輪が嵌められており、一歩間違えれば、危ない輩に見えなくもない。
「ばーか。他人様が先に並んで話してるのに、割り込んでんじゃねえよ、トニー。そこの兄ちゃんが困ってるだろ」
後から追いついて来た男は、彼よりも体が一回り大きい。わずかに青みがかった紺色の髪を伸ばしており、その奥には同じような色の瞳が勇輝を捉えていた。
「そうですよ、トニーさん。一応、順番は守ってくださいね」
「あーいよ。悪かったな、兄ちゃん――――って、あまりここらじゃ見ない顔だな。さては、聖夜のダンジョン狙いか?」
ニヤリと笑みを浮かべたトニーに、勇輝は軽く頷く。恐らく、彼らが暗殺者ギルドが送り込んで来た協力者だろう。
「えぇ、そんな感じです。ただ一人で潜るのは気が引けるので、仲間を探してたんですよ」
「ほぉ、仲間ね。その格好だと……剣士か。それなら、互いにフォローできそうだな。そう思わないか? ハリーの兄貴」
トニーが振り向くと、ハリーは眉根を寄せて呆れていた。
「おいおい、会ったばかりどころか名前も知らない奴を捕まえて、何をするつもりだ? 俺は犯罪の片棒担ぐつもりはねえからな」
トニーの頭を小突いた彼は、軽く手を挙げて謝罪の意を示す。そのまま、トニーの後ろで結んだ髪の束を掴んで連れて行こうとした。
「待ってください。コルンさん、あの人たちと俺の武器の相性が良いって言うのはどう思います?」
「うーん。トニーさんは魔法使い専門で、ハリーさんは槍使い兼魔法使い。そして、勇輝さんは剣士兼魔法使い。三人だけですが、前衛・中衛・後衛とバランスは良いですね」
ハリーの槍もミミックが襲って来た時の牽制に使えるので悪くはない、とコルンは太鼓判を押す。
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