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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
第27巻 撫子に染まりゆく精霊の休息日

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出国Ⅵ

 出航前は曇天だったはずが、急激な視界不良に陥っている。

 果たして、無事に大陸まで辿り着くことができるのか。勇輝の表情に不安の色が浮かぶ。


「大丈夫だよ。この船は最新の防御魔法や探知魔法の用意がある。魔物に襲われようが、霧が出ようが無事に着くことができる」

「……船酔いは?」

「それは別問題だ」


 オーウェンの説明に勇輝が恐る恐る問いかけると、さらりと流されてしまった。

 どうも荒天時の荒波には対応していないらしい。流石に船は海水に浮くことが大前提なので、王家の馬車のように振動を抑えるように波による上下を打ち消すことは不可能だ。


「勇輝。わかってるとは思うけど、早めに言ってくれよ」

「ま、まだ大丈夫だって」


 一度、フェイに胃の中身をリバースするところを助けられたことがある為、頭が上がらない。

 申し訳なさそうにしていると、窓の外に見えていた霧が見る見る内に薄くなっていく。ものの十数秒で紺碧の海面に太陽光が反射しているのが見えた。


「良かった。局地的な霧だったみたいで――――え?」


 桜も外の様子に気付いたようであったが、すぐにその表情が固まる。それは、まるで信じられないものを見てしまったとでも言いた気であった。


「桜、どうしたの? 忘れ物でもした?」

「ううん。そうじゃなくて、港を出たばかりなのに進行方向に陸地が見えたから、少しおかしいなって」


 桜が言うには日ノ本国を北に進むと、幾つか島が存在するという。だが、それは日ノ本国の本島のように大きくはなく、船から見ていればすぐに島だと気付けるくらいだ。

 桜の話を聞いて、マリーとアイリスが窓の外を覗き込む。


「いや、あれ、島じゃない。けっこう向こうまで続いてる」

「もしかして、霧で反転した?」


 勇輝も彼女らの背後から、その様子を窺う。わずかな視界しかなかったが、確かに島というには長い海岸線が確認できた。


「いや、流石にあの短時間で南北が入れ替わるなんて操舵をするはずがない。それなら回頭する時の動きを感じ取れたはずだ」


 フェイが独り言を言っている中で、オーウェンとエリーが二人で怪訝な顔をしていた。

 マリーとアイリスが窓から離れるのを待って、その二人も外の様子を窺う。しばらく、外の景色を見続けた後、オーウェンは目頭を指で抑えながら頭を振った。


「――――諸君、今から自分はおかしなことを言うかもしれないが、落ち着いて聞いて欲しい」

「大丈夫、大丈夫。ここ数ヶ月で色々な経験をしたあたしたちだ。そんじょそこらの事件じゃ、驚きは――――」

「ファンメル王国のノーフォーク領の港にもうすぐ着くぞ」


 ノーフォーク領はファンメル王国の海外線沿いにある土地で、ある侯爵が管理している領地になる。当然ながら、その土地の特徴は海から得られる海産物と肥沃な大地から得られる農産物だ。

 余剰に生産したものはファンメル王国内の都市や諸外国との貿易品として売却されていく。


「え?」


 目が点になったマリーは固まった後、すぐにオーウェンを押しのけるように窓へとへばりつく。


「う、嘘だろ? あたしたち、出発したばかりじゃんか!」

「――――いや、まさか。そんなことあるのか?」


 大声を上げるマリーの後ろで、勇輝は腕を組んだまま呟く。

 霧によって周囲からは見えない状態。霧が晴れたら、別の場所に移動している。そんな現象を引き起こせる人物を勇輝たちは知っている。


「アメリア様の、転移魔法?」

「俄かには信じがたいけど、そう考えるのが妥当だね。いくら万全の用意をしてきたとはいえ、危険な海の上に何十時間もわざわざいる理由もないし」


 フェイは納得した様子で頷いているが、それでも表情は強張ったままだ。この長距離を、さも当然のように数分で無に帰したのだから、驚きを隠せないのも無理もない。

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