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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
第26巻 薄明の呪いに終止符を

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胎動Ⅵ

「――――桜。あなたは本当に、強くなりましたね」

「え、えへへ……」


 泉子からの誉め言葉に、桜はここで思わず目を逸らしてしまう。

 泉子に褒められるのは、巫女見習いとしての最終過程である一年間の地方修行を終えた時以来だ。その為か、どうしても嬉しさより気恥ずかしさが勝ってしまう。


「留学の道を選んだ時は、ほんの少し寂しさを覚えました。でも、これだけ立派になったあなたを見られたのならば、あの時の選択は間違っていなかったようですね」


 泉子もかつては巫女として、日ノ本国を守護する役目を負っていた。自分の娘が同じ道を歩むということに、彼女は喜びを感じていたに違いない。

 その分だけ、ファンメル王国の魔法へと心惹かれた桜の姿を見た時は、悲しみも大きかったはずだ。例え、留学後に巫女の道へと戻ることが可能であったとしても。


「あなたはあちらの学園を卒業したら、何かなりたいものはあるの?」

「うーん。新しい魔法とかを開発してみたいかな。元々、結界術や式神について、別の方法で学べないかって思ってたのが、きっかけだったから」


 桜としては、やりたいことは何となくあるのだが、職業としてとなると、難しくなることを自覚していた。働くということは必ずしも自分がやりたいように出来ることばかりではない。

 例えば、魔法学園の教授となって魔法を開発する研究室や予算が与えられたとしても、その一方で生徒たちに魔法の講義を行うことを求められる。研究だけしたい人間からすれば、その時間をもったいなく感じることもあるだろう。


「なるほど。その点で言えば、既に開発には成功していますね。あなたの式神は一般的な陰陽師の間で使われるものとは似ているようで違いますから」

「え、違うの?」


 広之の感心した言葉に、桜は思わず両手を床に着けて前のめりになる。すると床から伝わる温度が冷たかったため、すぐに元の姿勢に戻ってしまった。両手をふとももの辺りで擦って、摩擦熱で温める。

 その様子を二人は面白そうに見つめながら、桜が落ち着くのを待っていた。


「そうですね。桜の式神は自分の意識をそのまま憑かせているように見えます。擬人式に似ているようですが、一点だけ他と違う点があります」


 何かわかりますか、と広之は付け加える。

 頭を抱えそうな勢いで思考を巡らせるが、桜には何も思いつかない。もし、普通の式神と違う点があるとすれば、それは術式の中に、水精霊(ウンディーネ)が作り出した魔法や妖精庭園で出会った妖精たちの在り方を参考にしている部分があることくらいだ。

 桜が降参を宣言すると、広之はにっこりと笑った。


「それはですね。式神を通して、魔法を使っていることです」

「えっと、別におかしくはないんじゃないの? だって、お父さんの式神さんたちも、炎を放ったり、変身したりできるから」


 一体何が違うのかわからないので、桜は広之に説明を求める。


「説明は難しいですが……そうですね。日ノ本国の術式とは異なるファンメル王国の術式。それらを混ぜた状態で発動するのが難しいという話です」


 国が違えば、その魔法体系においても解釈の仕方が違う。

 日ノ本国は主に陰陽五行の「木・火・土・金・水」。ファンメル王国は四大属性の「土・水・火・風」 。これ一つとっても、魔法への捉え方が大きく異なる。

 広之は、例え属性の無い式神の魔法であっても、その根底には必ず日ノ本国における術式の土台が関わっていると語る。その式神に別の土台の上にある能力を使わせるというのは、魔法の基礎への理解が高く無いとできない芸当なのだ、と。


「それこそ、私と同じか。或いはそれより上の年代のお歴々のような知識があって初めて術式を組み立てることができる、というところだろう。それに関しては私も驚きを隠せなかったと言わざるを得ません。それが例え、感覚で掴んだものなのだとしても」


 かつて海京でそれなりの地位にいた父をして、驚かせたと言わしめる自身の式神の評価に、桜はどう反応していいかわからなかった。

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