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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
第26巻 薄明の呪いに終止符を

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罪滅ぼしⅣ

 とりあえず、この村の危機は去った。心なしか、晴久の体に宿っていた呪いの残り香も消失しているように思える。

 勇輝の魔眼はほとんど黒い色を捉えることが出来なくなっていた。それは文枝という呪術師がこの世を去ったことが原因だろう。


「さて、これで寺の結界を維持する必要もなくなったわけですが、どうでしょうか? 晴久殿が亡くなってから時間は経ちましたが、通夜も開けていない有様でした。よろしければ、ここでそのまま行うこともできますので、参列されていきませんか? 村の方で倒れている方々は、既に別の者たちが救助に向かったので、心配はいりませんよ」

「それは構いませんが……その、あの状態で出来るんですか?」


 勇輝の視線は、他の僧侶たちが集まっている周囲の道具に注がれていた。木魚や()()()といった音を出す道具は、どれもが罅割れており、僧侶たちの持つ数珠ももはや形を保てずに砕け散っている。

 この寺の御本尊であろう金色の仏像も煤がついたように汚れ、顔に斜めの亀裂が入っていた。


「あぁ、先程の呪いを跳ねのけた衝撃で耐え切れなかった部分を肩代わりしてくれたようですね。まさに御仏の御加護かと。お経を読む際に音で調子を合わせるのができませんが、そこは日々のお勤めの成果の見せ所でしょう」


 自分たちの声が出せるのであれば、一切の問題はない。そう言いた気に住職は微笑んだ。


「あ、じゃあ、待ってください。お通夜を行うなら、絶対に呼んでおきたい人がいるので」


 そう桜は告げると、チビ桜を召喚して即座に寺の外へと解き放った。


「友達とのお別れだもの。こういう時に一緒にいられないのは、絶対心残りになっちゃう」

「そっか、寛太さんか」


 友人の死の間際にいて、それを助けられなかった。最後の見送りくらいは、せめてしたいと思うのが人情だろう。呪いによる穢れが無ければ、彼は確実にこの場に足を運んでいたはずだ。

 事実、チビ桜が離れてから十数分で寛太は駆け付けた。自らが作ったであろう提灯を片手に、息を切らせながら山門を潜り抜け、転がり込むように中へと入って来る。


「……そうか。あいつをやった犯人を何とかしてくれたんだな?」

「はい、それで聞いていると思いますが、お坊さんたちがお通夜を開いてくださると」

「あぁ、もちろん出るさ。親友の俺が出ないなんてわけがないだろう!」


 既に寛太は勇輝たちを視界に入れていない。その視線の先にあるのは、焼香が行われている晴久の遺体だった。

 僧侶たちの声だけが静かに響く中、既に保護されていた村人たちが順番に抹香を香炉へとくべ、両手を合わせている。ここで保護されている間に、彼が村を救おうとしてくれていたことを聞いたのかもしれない。両手を合わせている時間が通常のものよりも明らかに長く感じられた。


「――――聞いたよ。俺たちみんな、村長の人質になってて、あいつがそれを何とかしようとしてたって。それで目を付けられたってこともな。ほんっと、変なところで正義感出すから……あの大うつけがよ」


 寛太の表情は晴久を誇らしく思う気持ちと、自分に何も言わずに行動した悲しさが混ざっているように思えた。泣きながら笑っているその顔に、勇輝も思わず目尻に涙が溜まる。


「さぁ、寛太殿。前へ。しっかり彼と向き合ってあげるんだな。彼もきっとずっと待っていただよ」

「あぁ、言われなくても……!」


 大きな体を揺すりながら、寛太は腕で目を擦って進んで行く。

 勇輝たちも顔を見合わせた後、彼の後に続いて、何も敷かれていない床へと正座した。

 無秩序に並んでいた保護された人々も、今は示し合わせたかのように縦横の列を揃えて座っている。時折、葬儀の意味が分からない幼子や声も満足に発声できない赤子の声が響いていた。

 一人ずつ腰を上げ、焼香をするべく前へと進み出る。自分たちの番が来るまでの間、重厚な声で読み上げられるお経に耳を傾ける。勇輝たちも晴久の冥福を祈って、目を瞑った。

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