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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
第26巻 薄明の呪いに終止符を

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除霊Ⅳ

「させるかっ!」


 勇輝が刀を振るうが、形が崩れ始めていた怨霊の腕がブレ、本当の意味で空を切った。既に村人との繋がりは、ほぼ断つことに成功したが、それ故に起きた悲劇とも言える。

 丑式が金棒を使って腕を跳ね上げるが、それも動きを完全に止めるには至らない。丑式の遥か頭上を腕が延びて行き、再び元の軌道へと戻る。その勢いのまま桜の結界を正面から押し潰そうと迫っていた。


「――――魔力制御(マジックバレル)最大解放(フルオープン)!」


 勇輝が言葉を紡ぐと同時に、その体に宿る魔力が体から溢れ出す。

 人が扱うことができる魔力は、魔力が通る架空神経を傷つけないように、無意識にその出力を抑えてしまっているが、勇輝はそれを無視して魔力を流す。

 それは鍛錬の果てに一部の者が辿り着く境地であるが故に、究極技法(アルテマアーツ)と呼ばれていた。身体強化に回す魔力を、それによって極限まで増加させた勇輝は、一瞬で腕を追い越して、結界の前へと姿を現す。


「ふっ!!」


 鋭く息を吐くと同時に、一歩足を踏み出す。左足で地面を蹴り、迫りくる手の横を通りながら刀を地面と平行にして前に掲げていた。

 自分が自ら進む速度と、相手の腕が迫る速度。その勢いも相まって、掌から手首、手首から肘までが上下真っ二つに割れた。

 一つは地面に突っ込んで砕け、もう一方は結界を掠めて空中で霧散する。


「はっ!」


 腕の勢いが弱まったところで、勇輝は手首の角度を変えると共に刀を振り切る。踏み込んだ右脚はそのままに、左足を引いて右手を振り上げた。

 目の前の透明な腕が丸太のようであった。それを勇輝は上から振り降ろした一閃で容易く両断する。


「な、ゼ。なぜ、ナゼ、ナゼエエエェ!」

「今のは、危なかった――――!」


 勇輝の意識が一瞬、途切れかける。

 魔力を過剰に循環させ、目にも止まらない動きを可能にする究極技法だが、欠点があった。

 一つは、長時間の使用が不可能な点。保有する魔力が大量に消費されるのは当然だが、鍛えられていない未熟な体で行えば体が自壊する。

 もう一つは、あまりにも早く動くことに脳と体の感覚が乖離する点。頭は早く動くことに慣れて、周りの動きがゆっくりに感じるが、体が反応できなくなってしまう。結果的に自分の意志で動くことができなくなる。

 極めて短い時間での解放の為、そこまで副作用は起きなかったが、それでも一瞬、意識がもっていかれそうになっていた。


『おい、まだ戦えるか?』

「もち、ろん――――!」


 勇輝は体内を駆け巡る魔力を制限し、元の状態へと戻すことに成功する。それでも大量の魔力を使ったことによる倦怠感と、止まった時間の中に取り残されたような感覚への恐怖が、勇輝を心身共に追い詰めていた。

 両の手が使い物にならなくなり、体の再生も止まり始めた怨霊。それを前にして丑式は、金棒をまっすぐに向け怨霊に問いかける。


「ふ、ふふ、フフフ、アハハはァア……!」

「何がおかしいだ? あまりにも上手く事が運ばなくて、心が壊れちまっただか?」


 戸惑いの声を挙げる丑式だが、怨霊は天を見上げてひとしきり笑うと、勇輝たちを睨みつける。


「最後にイイことばヲ、おしエてヤロう――――」


 崩れ落ちそうになりながら、怨霊は不敵に、傲岸に、不遜に――――再び、笑う。


「――――死なば諸トモ、とな!」


 怨霊の体が全て黒に染まった。それは黒い光のようにも見え、靄のようにも見え、そして、汚泥のようにも見えた。そもそも、そこに「物」として、存在しているかどうかも疑わしい。そんな印象すら受ける。


「村人との繋がりは、勇輝殿が断った。まだ他に繋がりがあるとでも?」

「アァ、そもそも、こいつらがシタガッテいたのハ、自分たちの子をマモルためなのだから――――役に立たナカったヤツには、オシオキガ必要だ、ろう?」


 その言葉に全員の血の気が引く。

 この場にいない、他の村人は誰か。それは、きっと遊び盛りの子供たちや、これから村を作って行く若者たち。その人々を人質にしていたことを誰もが理解し、文枝という老婆の恐ろしさに驚きを隠せずにいた。

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