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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
第26巻 薄明の呪いに終止符を

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変生Ⅴ

 今度は鈍い音が響き、怨霊がトラックに跳ね飛ばされたように横に吹き飛ぶ。実体が無いはずなのに土煙を巻き上げ、十メートルほど滑って行った。


「手応えあり、なんだな」


 両手を着いて立ち上がるような動きをする怨霊だが、その胴体は三分の一ほどが消失していた。


「このまま霊体が消失するまで殴り飛ばすだよ。反省は地獄でゆっくりと、おらに似た獄卒に絞られてするといいんだな」

「ア、ア――――」


 嗚咽のような声を漏らす怨霊に、丑式は歩み寄って行く。彼女が宣言した通り、怨霊の存在が消滅するまで殴り続けるつもりなのだろう。再び肩に金棒を担いだ彼女は、人の姿に見えるのに、どこか鬼のような恐ろしさを感じさせた。


「ア、アハ、アハハハハハ!」


 突如、怨霊の口から漏れる声が、嗚咽からはっきりとした笑い声に変化した。それを警戒してか、丑式が攻撃の届く数歩手前で足を止める。


「死を目前にして、笑うことしかできなくなっただか?」

「シキガミフゼイ、オロカ、ナリ。ソノテイドデ、ワタシ、ガ、アキラメルトデモ?」


 急に人の言葉を話し始めた怨霊に、丑式も桜も眉を顰める。


「怨霊となっても意識を保っているのは流石なんだな。でも、この短時間で――――!?」


 オークのような大きめな人の形を保っていた黒い靄が、次第に輪郭をはっきりとさせていく。それは顔も同様で、凹凸が見え始めたと思えば、すぐにそれが文枝のものへと変わってしまった。


「アァ、オモッタよりもナジムノガ、はやい」

「一体何をしただ!?」

「かんたんなこと。ムラのモノたちにムケタ呪いのザンシを、かいしゅうするついでに、生命力や意識モ頂いているノダ」


 話している間にもどんどん流暢な話し方へと変化していく。それに二人は危機感を抱かずにはいられなかったのだろう。表情が強張り、身体にも力が入っているようだった。


「意識、も?」

「そう。先日の穴津でオキタ、封印塚のオニ。あれを救おうと、躍起にナっているらしいな。その手段をツタエキイテ、私もリヨウしただけのこと。周囲の認識ガ、そのモノの在り方をユガメル―――――こうも簡単にウマくイくとは思わなんだ」


 穴津に現れた少女を鬼に戻さぬようにするため、鬼神として像を作り、奉るという計画が実行されていた。人々に仇為す存在を、人々を救う存在として認識させることで、少女を鬼へと変化させる大衆の無意識の呪いを根本から書き換えるという荒業だ。


「同じ呪いなら、人という体を捨てた方が変化も早いし、規模が小さくてもできるってこと!?」


 封印塚は日ノ本国すべての人々の畏怖の対象になる。それだけの人々がいて、初めて人を鬼へと変じさせる呪いとなっていた。

 だが、それを文枝は自ら肉体を捨てることで、自分を良く知る村人の意識を利用し、小規模かつ高速の成長――――進化を遂げることに成功する。そして、それは今もなお続いていた。


「然り。ただ、このままでは、いずれ対処サレてしまう。村のモノを封じられレば、この身は容易クほどけるだろう。それ故に、私がスルべきことは一つ!」

「――――させないんだな!」


 怨霊が振り返りざまに右腕を振り上げた。その先には、地面に倒れ伏す村人の姿がある。

 丑式はここぞとばかりに加速をすると、その背に向けて金棒を両手でフルスイングした。金属を殴ったほどの鈍い音ではない。だからといって、油断はできない。何しろ、先程は抉れた体が、今回は形を保っているからだ。

 勢いよく吹き飛んだ怨霊は、そのまま長屋の壁へと叩きつけられる。上半身が勢いを殺せずに壁を突き破り、物干し竿にかかった布団のようにぶら下がっていた。


「実体ももち始めただよ。いくらなんでも早すぎるだ!」

「ふふふ、自らの体ヲ捨てる勇気ハ若い時分にはもてナかったが、天命尽きんトいう老体ならば、話ハ別。むしろ、若返ったようデ気分がイイ。まだまだ――――力ガ足りん!」


 体を起き上がらせて呟いたかと思うと、右手の親指以外が数倍に伸び、カギ爪のように変化する。そして、それを怨霊は迷うことなく村人へと横薙ぎに振るった。

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