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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
第26巻 薄明の呪いに終止符を

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複合呪術Ⅳ

 丑式はじっと村人たちを見つつ、勇輝に話しかける。


「勇輝殿。『あの村人たちは、呪いと同じようなものを纏っているように見える』ってことでいいだか?」

「はい。呪いが飛んでいるときには黒い靄と光が、あの人たちもそんな光が漏れているように見えます」

「やはり、この人たち全員を呪術師であると設定して、呪詛返しの効果を分散させると同時に、術の発動を悟られないようにしてるだな」


 仮に呪詛返しを受けても、その受け入れ先が百人いれば、返ってくる効果も百分の一。即死の威力であっても、一人一人にはほとんど効果を及ぼすことはない。あったとしても、鈍痛や倦怠感程度で済むだろうと丑式は告げる。

 加えて、ここにいる全ての人間が呪術を使える状態だ。一人一人に焦点を当てれば、呪術を扱う才能や練度的に発動すらおぼつかないだろう。しかし、文枝がこの呪術の土台を設定し、彼らがその部品となっている今、その部分は文枝が肩代わりすることで、発動を可能にしている。

 それが何を意味するかと言うと――――


「嘘だろ!?」


 どこからか、金槌の音がいくつも響く。すると、村人たちの壁を乗り越えて、複数の呪いが勇輝たち目掛けて襲い掛かって来た。


「んー、何か危険な雰囲気がするんだ、な!」


 丑式が金棒を地面に突き立てる。地面が揺れ、勇輝たちを守る結界のさらに外側で、向かって来ていた呪いが尽く地面へと墜落していく。

 その様子が見えなくても、呪いがありえない挙動をしたことを感じたのだろう。継司が表情を強張らせた。


「これは、一体!?」

「相手が悪かっただな。おらは丑の名を冠する式神だよ。当然、丑の刻参りや丑三つ時のような呪いや霊に関わる能力をもってないわけがないんだな」


 そう告げた丑式の体は、勇輝の魔眼に黒い光を投げかけていた。


「丑式さん。それは――――!?」

「呪詛や悪霊はおらの領分だ。そう簡単にお株を奪わせるわけにはいかないんだな」


 もう一度、金棒を地面に当てると、今度は周囲のあちこちで、間欠泉のように黒い靄が噴き出る。あちらこちらから悲鳴が上がり、村人たちが倒れていく音が響いた。


「丑式、まさか殺していないでしょうね?」

「馬鹿なこと言うでね。初見の時と違って、術式はある程度、見抜いているから威力も弱めてあるだよ。尤も、朝まではお寝んねしちまうのは避けられないけんどな」


 丑式は仁王立ちして、どこかにいるであろう文枝に呼びかける。


「ほら、被害が少ない内に投降するだよ。そっちの術式は効かないのがわかんないだか?」

「ふん。偉そうなことを言っていられるのも今の内だよ。私の呪術が何か理解したなんて、嘘っぱち信じるもんか」

「『丑の刻参り』と『密教系の調伏術式』の複合術式なんだな。大方、丑の刻参りの人形の代わりに、呪いたい相手の『本名』を筒の中に入れて、それを釘で筒ごと打ち抜くのが発動方法と見ただ」


 丑式の言葉に文枝から言葉は返ってこない。それを気にすることなく、丑式は言葉を続ける。


「そうなると、呪いが飛んでくる相手は限られるんだな。恐らく、宿の帳簿に書いた名前を元に、呪物の作成をしてるだろうけんど、おらと午式は式神だから本名なんて書くはずがないし、そこの西園寺の家臣の娘っ子はわかるはずもなし。だから、宿に泊まった嬢と勇輝殿。そして、顔の割れている継司殿の三人しか狙うことしかできないだ。三人とも呪いを防ぐ手立てはあるし、おらと午式が攻勢に出ても完全封殺できるだけの余裕があるだよ」


 ――――それでも、まだやるのか?


 その意図が伝わるように丑式は声を張り上げていた。それでも、文枝からは声が返ってくることはない。


「な、なら、直接殴り殺して――――」

「できると、お思いですかな?」

「うっ……」


 金槌を振りかぶって一歩前に出た村人を、午式は鋭い目で睨み返す。刀を向けてすらいないのに、村人は声を詰まらせて後退った。

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