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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
第26巻 薄明の呪いに終止符を

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2033/2382

丑の刻Ⅳ

 会話をすることで、少しばかり空気が和やかになる中、勇輝と丑式、継司はじっと村の方を見つめていた。村の方では特に何事も起こる様子はない。

 時折、僧侶が大きな麻袋を担ぎ、寺の中へと入って行っては空の麻袋を持って村へと向かっていく。


「(何を運んでるんだ?)」


 勇輝が魔眼を麻袋の方へと向けるが、白色に淡く光っているだけで、中がどのようなものなのかを推測することはできない。

 往復している僧侶たちは、邪魔になっているだろう勇輝たちには見向きもせず、身体から湯気が立ち昇るほど熱心に動いていた。

 一瞬、何を運んでいるのか、手伝いは必要かと尋ねようとしたが、先程の僧侶との会話もあってか、誰も声をかけようとはしない。


「……勇輝殿、村の様子の方は?」


 午式が問いかけて来るが、勇輝は首を横に振る。

 一時間、二時間と村の様子を見守っていたが、明かりがぽつぽつと消えていくだけだ。昼に見た呪いが飛んでいく様子が、再び見られるかとも思っていたが、その兆候は未だない。

 僧侶から目を放して、村を端から端まで、ほぼ全てを見渡していく。


「まだ、何も見えない。かろうじて出歩いている人が見えるくらいです」

「ひひん、拙者たちは大丈夫ですが、勇輝殿たちが風邪をひかないか心配ですぞ」

「俺は大丈夫です。多少の暑い、寒いは何とか出来る服なので。それよりも桜や継司さんたちの方が――――」


 勇輝が視線を向けると、継司と厘はまったくもって昼間と変わらない表情を浮かべていた。白い息を吐いてこそいるが、身体は震えもせず、鳥肌も立っていないようだ。


「俺たちの家は、この程度の寒さに負けるような鍛え方はしていないです」

「右に同じく、です。尤も、こちらの方も、私も体を温める魔道具を使用しているだけなので、鍛えるとかとは別問題です」


 厘にネタをバラされてしまい、居た堪れない表情になる継司。どうやら、懐に現代で言う懐炉(かいろ)的な役目を果たす道具があるらしい。

 それでもその部分から離れている場所であれば、十分寒いはずなのだが、二人は平気そうにしていた。


「私も手は寒いけど、この服のおかげで足は大丈夫」


 桜は赤いスカートを摘まみ上げた。

 火鼠の皮を元に作られたため、火に対する防御力が高い服になっているのだが、それ以外にも自ら発熱して着用者を寒さから守る能力があるらしい。


「それ、夏場だったら、すごい暑くなりそう」

「その時は……別の服を用意する必要があるかも……」

「夏になってみないとわからないよな……」


 勇輝のように耐寒耐熱の両方の機能があれば苦労することはないはずだが、それは実際に作った人物に聞かなければわからない。少なくとも、当分は寒い季節が続くので困ることはないだろう。


「そういえば、子式が言ってただ。その服、凄いいい素材でできてるって。ただ、同じ鼠だから複雑な気分になるとかで――――」

「あ、やっぱり気にしてたんですね。それ」


 以前から気になっていた疑問が解決され、思わず、村から丑式の方へと視線を動かしてしまう。


「おっと!?」

「むっ!?」

「ん゛っ!」


 偶然、間が悪く近くを通り過ぎようとしていた僧侶にぶつかってしまう。


「す、すいませ――――」


 勇輝は咄嗟に謝ろうとして振り返る。今起こった出来事に疑問が浮かび上がった。


「(あれ? 今、俺とこのお坊さんしかぶつかってないよな?)」


 石段に手を着いて麻袋を肩に背負い直した僧侶は、目もくれずに寺の方へと向かっていく。その背中を見送っていると、唐突に肩へと手が置かれた。


「勇輝殿。今はこっちが優先だよ。さっきの住職の言葉は気になるけんど、ああなっちまった以上は仕方ないだ」


 ――――気になっているのは、そういうことではない。


 そう口にしたいのは山々だったのだが、勇輝でも僧侶でもない声について聞いたところで、どうにかなるわけではない。勇輝は村の方へと視線を戻すことにした。

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