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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
第26巻 薄明の呪いに終止符を

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丑の刻Ⅰ

 予定通り継司と厘に合流した勇輝たちだったが、継司たちの視線は勇輝の隣へと向けられていた。


「――――寝て、ないれすよ……私」

「ということにしておいていただけると助かります」


 舟を漕いでいる桜に苦笑しながら、勇輝は二人に説明する。桜は起きるのが苦手なタイプなのだと。

 宿を出てからここに来るまでの間、勇輝の左腕にずっと掴まったまま器用に歩いて来た。数人すれ違った村人の視線を浴びながら、一向に目を覚ます気配のないところを隣で見ていた勇輝は、ある意味、才能の一種なのではないかと思ってしまう。


「いや、ちょっと待ってください。彼女の式神が寛太殿を護衛しているのでは?」

「あぁ、多分、本人の意識がなくても動いてくれる式神なので大丈夫だと思いますよ。いつでも意識を繋げ直すこともできるらしいですし、何かあった時には強制的に桜を叩き起こしてくれるとか」


 勇輝はここに来る前に受けた丑式からの説明を、そのまま伝える。式神を使ったことのない勇輝には、どういう原理かわからないが、丑式曰く、「薄い氷の張った池に、顔面から叩き落されるような衝撃がある」のだという。


「(そんな経験がまず丑式さんにもあるのか、それとも広之さんの経験を代わりに教えてくれたのか。どっちであったとしても、想像できないな)」


 肩の辺りに頬を摺りつける桜の体温を感じて、勇輝は頬を赤らめる。その様子を見た厘が、どこか羨ましそうな視線を投げかけて来ていた。


「どうかした?」

「い、いえいえ、何でもありません。お二人とも仲が良さそうだなと思いまして」

「ま、まぁ、そうだな。とはいえ、羞恥心がまったくないわけじゃないから。今は見張りもしなくちゃいけないし、仕方なくだよ」


 勇輝は右手をひらひらと振って、いつもこのような状態ではないと説明するが、厘の耳には届いていないようだった。


「それで、どこから見張るんですか?」

「村を見渡すならば、当然、高い所ですよ。つまり、あそこです」


 継司が指で示した先にあったのは、晴久の遺体が安置されている寺だ。確かに、その寺は山というには少々小さく、丘と言うのが適切だろう。ただ村全域を見るという点では高さが十分あり、それを邪魔する木々もそこまで多くない。


「ひひ。呪術相手ならば隠れても無駄。それならば、魔眼で術の痕跡を捉えられる勇輝殿の視界を確保する方が優先、ということですな」

「えぇ、しかも、こちらには呪いから身を守る結界を作れる心強い味方がいますからね。寝ていても結界を張れるかは怪しいですが」


 継司の優しそうな瞳の奥に少しばかり鋭い光が宿っているのが、勇輝には見えた。


「大丈夫です。もう少ししたら、目を覚ましますし、万が一の時には呪術の専門家。丑式さんがなんとかしてくれ――――ますよね?」

「んー、そういうのは言う前に確認をしてから言うもんなんだな。でも、勇輝殿の言う通りだ。この二人に色々と学ばせるという形で協力しているけんど、危険な時にはしっかりと働くつもりだよ。主の名に懸けて、ここにいる人には誰一人呪いはかけさせないんだな」


 胸を張る丑式を見て納得したのか、継司は間をおいて小さく頷いた。踵を返すと、先頭に立って寺へと進んでいく。

 まだ、村の中でも一部の明かりが灯っている店もあるが、やはり海京に比べれば圧倒的に外部の人間が少ない。勇輝たち以外にこの村を訪れている者は、そう多くはいないだろう。

 足元もおぼつかない暗い道を歩き、やがて石灯篭に照らされた寺へと至る階段へ辿り着く。流石に桜を寝ぼけたまま歩かせるのは危険と判断し、勇輝はお姫様抱っこに切り替えた。

 本人が目を覚ましていたら、大慌てになりそうだが、今は勇輝の胸の中に大人しく収まっている。ただ、あまりにも収まりが良かったのか、視線を下ろした際に見えた桜の表情は完全に緩んでいた。

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