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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
第26巻 薄明の呪いに終止符を

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2001/2382

親交無き葬式Ⅸ

 ただ真っ白の中に、犠牲者の顔と手だけが肉眼で確認できる。


「その……この方の御家族は? 葬式もこの後行われるんですよね?」

「いえ、彼の両親は既に亡くなっています。親戚などもなく、俺が動いたこともあって、彼の友人も呪いを避けて葬式には参列しないようです。従って、彼を見送ることができるのは、ここの僧侶たちと俺くらいでしょう」


 どこか冷めた雰囲気のある瞳で、継司は棺の中に横たわる被害者を見下ろしていた。

 恐らくは、加害者の感情に同情しないようにした結果の表情だったのだろう。ただ、それでも勇輝は、継司の背中がどことなく悲しそうに雰囲気を纏っているように感じた。


「――――彼は飛脚のような仕事もしていたようです。聞いたところによると、組織だったものではなく、彼個人が隣町へと軽い物や手紙を届ける程度だったとか。大半は作物に関係する書類だと彼の友人は話していました。ここの次は、彼の家に行って見ることにしましょう」

「んだんだ。家の近くに呪物があるかもしれないからな。何となくの雰囲気だと気付かないこともあるけんど、勇輝殿の眼ならば呪物を見れば一発でわかるだ。仮になくても新しい証拠が見つかるかもしれね」


 丑式が言うには、呪物に毎日触れさせることで対象の命をじわじわと削るものもあるという。呪いはそのかける人物に関係する体だけでなく、生活圏ごと呪うこともできるらしい。

 尤も、そんなことをすれば、よほどの術士でない限り、一発で呪物の存在に気付かれてしまうため、丑式も継司も万が一のため程度にしか考えていないようだ。


「事件が終わって、もし間に合うのなら、俺たちだけでも葬式に参列くらいは――――」

「お言葉ですが、勇輝殿。こればかりは彼の友人の考えが正しいですぞ。ただでさえ死は穢れとなります。そこに他人の呪いが入り込めば、大きな穢れとなって時に災いを起こすことにもなります」

「――――じゃあ、終わった時に丑式さんの判断次第で、というのは?」


 勇輝が問いかけると、丑式は迷った末に小さく頷いた。


「わかっただ。でも、穢れが明らかに多い場合は、首根っこ掴んでも連れて帰るだ。いいだな?」


 勇輝は承諾して、もう一度、視線を棺桶の中に戻す。

 魔眼と肉眼。二つの視界を交互に見比べながら、おかしなところや違和感を感じるところを探し出す。ただ、あまりにも喉と胸の部分から出る靄が魔眼の視界を奪ってしまうため、それ以外の場所をしっかりと見ることはできない。そして、肉眼で見てもほとんどわかることはなかった。


「桜や丑式さんは何かわかったことは?」

「私は全然わからない。昨日よりはマシだけど、嫌な感じがするってことくらいかな」


 二の腕当たりを擦りながら桜は棺桶から少し距離を取る。勇輝はとりあえず桜に近づいて、自分の周囲に展開されている結界の中に彼女を入れた。


「因みに、この状態だと?」

「うん。さっきよりはマシだけど、それでもまだ変な感じがする。鳥肌がさっきから立ちっぱなしだよ」


 魔眼では防げているのに、何故か感じる気持ち悪さ。そこに何かしらの事件を紐解く手がかりがあるのではないかと勇輝は疑うが、いかんせん呪いの知識がないので、あまりにもパズルのピースが不足している状態だ。これでは組み立てることすらできない。


「やっぱりここは、仏さんの家を見てみるしかなさそうだな。継司殿、案内を頼んでも構わないだか?」

「えぇ、特に気になるものが見つからないなら、一度、別の視点で見てみることにしましょう」


 金色に輝く一メートル大の仏像を背に、継司は元来た道を戻り始める。続々とみなが戻り始める中、勇輝は棺桶の向こう側に見える、その金色の景色を見て、わずかに首を傾げた。

 お経を読み上げる時に使うであろう鏧子(けいす)や木魚、紫の座布団に赤や黄、緑色の垂れ幕が見え、どこを見ても色鮮やかであった。


「勇輝さん、どうしたの?」

「いや、今行くよ」


 何か気になるが、言葉に出来るほど自分が理解しきれていないもどかしさに、勇輝はため息をついて踵を返す。勇輝たちが本堂から出ていくと、奥から豪華な法衣をまとった老齢の僧侶が姿を現した。


「…………」


 何をするでもなく、その僧侶はじっと勇輝たちが出て言った場所を見つめていた。しばらくして、手を合わせて軽く頭を下げると、彼は黙って奥の方へと戻って行ってしまった。

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