表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
第26巻 薄明の呪いに終止符を

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1993/2388

親交無き葬式Ⅰ

 東雲派家臣団・開藤家。

 その家に負わされた役目は元々は死者の埋葬であった。だが、日ノ本国で代を重ねるうちに、明らかに人や魔物に襲われたわけでも、事故に遭ったわけでもないのに命を落とす者がいた。

 開藤家は武士の家系にも拘わらず、呪術や陰陽道などの才があった。それ故に、時折、妻には神職の家の娘を迎え入れ、刀を握りながらも術を扱ったり、物理攻撃が効かない妖や霊を相手にする方法を研鑽してきた。

 ある時、開藤家の一人が遺体を埋葬する準備中に、死因が呪殺であるということに気が付いた。そこから彼らの家の者のみで行われた調査によって、容疑者を特定し、捕縛するに至ったという。

 それからは、開藤家の役目に不審死の調査が加えられ、逆に通常の死者の埋葬は傍系の親戚へと移されることとなる。


「あぁ、なるほど。雛森村には確かに兄さんがいましたからね。勘違いするのも無理はありません」


 席に座った勇輝たちの正面で茶を啜った後、男は苦笑いをした。

 勇輝たちの目の前にいるのは、開藤継司(けいじ)。東雲家直轄領から派遣された者で、勇輝たちとは初対面だ。

 だが、その顔を勇輝は雛森村のはずれに出現した巨大な骸骨を討伐する際に、見た覚えがあった。

 その男は継司の双子の兄で、名を礼司。双子だけあって、顔は瓜二つであった。留学する前に何度か見かけている桜ですら、礼司と勘違いしてしまう程に。


「しかし、広之様ではなく、君たち二人が、か」

「そこらへんは心配せんでいい。おらがしっかりと主に報告してるから、何かあったら、おらたち経由で言うべきことは言うし、何も言われなくても二人の安全は確保するだ」


 隠形を解き、一人だけテーブルの横で立ったままの丑式は、大きく鎧を揺らして胸を張る。

 午式同様に、久しぶりの屋敷外での活動に加え、娘の桜とその伴侶となる勇輝の護衛兼指導役を任されたとなれば、彼女としては気合が入るには十分すぎるようだ。

 その気迫に押されたのか、継司はわずかに丑式から距離をとりつつ頷く。


「そうですか。それならば良いのですが、その場合は、子供扱いは一切せずに、包み隠さずやるべきことをこちらもお見せします。よろしいですね?」

「んだ。ただし、やることは先に一言言ってもらえると助かるんだな。何事も心の準備が必要だ」

「わかりました。それくらいは配慮しましょう」


 承知した上で継司は、勇輝たちを一瞥して動きを止める。

 すぐに周囲を見回した後、軽く手を上げて店員に会計をする旨を伝えた。


「流石に、飲食店で話す内容ではありませんからね。申し訳ありませんが、場所を変えさせてください」

「わ、わかりました。勇輝さんも、それでいいよね?」


 桜に問われて、勇輝は小さく頷いて肯定する。

 以前、他人そっくりに化ける能力をもった者が、雛森村の人間に紛れ込もうという事件があった。勇輝は、そのことを警戒して継司の様子を魔眼で見ていた。体に纏った光は、記憶の中で見た礼司と似ていたような気がしなくもない。

 しかし、それよりも勇輝は、彼が纏うもう一つの光に目を奪われていた。


「(黒い光でもなく、靄でもない。でも、何か黒いものが見える気がする)」


 継司の纏っている光は青と緑の中間のような花緑青色。その鮮やかさに見惚れそうになるが、不意に肩や腕の色が唐突に色が失われているように見えた。

 その変化は一秒にも満たない短時間で起こるため、焦点を合わせた時には、それが確認できない。継司のどこかに問題があるのか、勇輝自身の眼に問題があるのかわからず、勇輝は両目を細めて見つめることしかできなかった。


「さ、支払いは終えましたが、ほれ、これは俺からの奢り。もう陽も暮れますが、()()()()()()()()()()()()食べておいた方が良いでしょう」

「後、ですか?」

「そう、後。まぁ、今は聞かない方がいいですから、遠慮せず食べちゃってください」


 戸惑った様子で勇輝と桜が、丑式に助けを求める視線を向けると、真剣な表情で彼女は頷いた。


「んだ。食べておいた方が、色々と良いとおらも思うだ」


 それ以上は丑式も話そうとしないので、仕方なく二人で運ばれてきた団子を口にすることにした。

 三色団子の彩に目を輝かせつつ、桜が口の中に頬張るのを見て、勇輝も一気に一つ二つと串から引き抜く。ほのかな甘みを噛み締めるだけで、幸せな気分に包まれる。

 ただ、その中で丑式も継司も気持ち悪いくらい静かに待っていたのが気になった。

【読者の皆様へのお願い】

・この作品が少しでも面白いと思った。

・続きが気になる!

・気に入った

 以上のような感想をもっていただけたら、

 後書きの下側にある〔☆☆☆☆☆〕を押して、評価をしていただけると作者が喜びます。

 また、ブックマークの登録をしていただけると、次回からは既読部分に自動的に栞が挿入されて読み進めやすくなります。

 今後とも、本作品をよろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ