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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
第26巻 薄明の呪いに終止符を

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1990/2384

亡霊武者Ⅴ

 指定された宿屋に赴くと、年季の入った二階建ての建物が見えて来た。

 戸や壁、手すりなどの色は太陽に長年照らされて変色している。しかし、そこにささくれや欠けは見当たらず、手入れされている様子が伺えた。

 建物や建築資材には詳しくない勇輝であったが、今まで交易港の洞津や首都の海京で見た経験から、この宿も相当な老舗であることが推測できた。


「――――でも、驚きましたよ。まさか、そんな姿にも慣れるんですね」


 勇輝は何度も()()()()()()()を交互に見ながら呟いた。


「ひひ。流石にあの姿で人混みの中に紛れるのはいらぬ混乱を招きますからな。ここは()()姿()で安定ですぞ」


 特徴的な笑いを押し殺しつつ、午式が肩越しに振り返る。茶髪のポニーテールが揺れ、白く揃った綺麗な歯が唇の間から顔を覗かせる。


「んだんだ。頭から上が動物のまま入り込めば、雛森村以外では基本的に恐れられちまうだ。いくら式神の存在が有名でも、魔物との違いは一般人にはわからねえだ」


 後ろを見れば、勇輝よりも大きな背丈の黒髪の女性が歩いている。ただでさえその背で注目を浴びているのに、その肩に大きな金棒を担いでいるので、道行く人たちが何事かと勇輝たちを見つめていた。


「――――というか、もーさんは女性だったんですね。私も今、知りました」


 桜も勇輝同様に振り返るが、その視線の先には大きな鎧の下に何とか隠れた胸があった。その余りにも大きいが故に、牛頭形態の時とは鎧の形も大分異なっている。


「おらたちの属性は木火土金水の五行だけじゃなくて、陰と陽もあるからな。十二の内の半分が男で、半分が女だ。まぁ、一部、主の趣向で属性を反転させられている子式と巳式みたいな例外もいるから、少しわかりにくいけんど、基本的には嬢の知っている通りだで」

「うっ……逆に気付かなかった自分が恥ずかしい……」


 桜は一番身近にいて、かつ陰陽道を学んでいたにも拘わらず、丑式の性別に驚いてしまったことがショックだったらしい。


「いや、桜。丑式さんの武器を真っ先に見たら、誰だって力持ちの男の人を想像するよ。失礼だけど、俺だってそうだったし」

「んだんだ。おらの性別を一発で見破った人は、そこまで多くないだ。北御門の爺様とか、後は嬢のお母様くらいなんだな」


 大口を開けて笑いながらも、のんびりとした様子は言われてみれば丑式だとわかるかもしれない。それでも勇輝と桜の脳裏に浮かぶ牛の顔と今の黒髪オールバックの笑顔は結び付かないでいた。

 二人が唸っていると、午式が立ち止まる。


「さて、ここが今日の宿ということですが、連絡によるとここの店の主が、この村の村長を兼任しているとのこと。早速、入ってみるのがよろしいでしょう。拙者たちのせいで、周囲の視線からもおっ嬢たちは早く逃れたいでしょうし」

「そ、そうだね。とりあえず、入ろうか」


 足を止めたことで、先程までは少なく感じていた人々もかなりの大所帯になって来た。桜もそれに気付いたようで、午式の提案に素早く反応する。

 午式が戸を開けて入るのを見て、勇輝は桜の背をそっと押した。


「ほら、先に行きなよ。俺は少しだけ魔眼で確認してから入るから」

「う、うん。わかった」


 桜が中に向かうのを見届けて、勇輝は魔眼で周囲の人や建物を再度見回す。

 ここに来るまでに魔眼は何度か開いて警戒していたが、首無し馬に乗った武士のような嫌な雰囲気も無ければ、異様な色を見つけ出すこともできなかった。


「(とりあえず、村の中は安全と見てもいいのかな?)」


 村の周囲は小さいながらも囲いがあり、村を包むように薄い灰色がかったドーム状の光が存在していた。恐らく前者は物理的な防御で後者が魔法的な防御なのだろう。

 勇輝は小さくため息をついて、魔眼を閉じる。人の命が潰えているという事前情報があったからには、例え午式と丑式がいるとしても油断はできない。自分や桜の身に何か起こっても対処できるようにしなければと言い聞かせ、自らも宿の中へと足を踏み入れた。

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