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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
第26巻 薄明の呪いに終止符を

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1989/2384

亡霊武者Ⅳ

 桜は辺りを見回して、本当に武士の霊がいなくなったのかを心配していた。


「さっきの幽霊。また襲ってこないかな?」

「今のところは大丈夫だ。俺の魔眼でも見えないから」


 勇輝の魔眼の視界には黒い色は一切見えていない。

 少なくとも、村に着くまでは魔眼を維持し、警戒するつもりでいたが、拍子抜けするほど気配を感じなくなっていることが不思議だった。


「丑式さん。因みにアレは俺でも斬れるんですか?」

「うん? おらより本人に聞いた方がよくないか? 自分のことは自分が一番よく知ってるはずだ」


 本人というよりは本刀というべきだろうか、などと丑式は笑いながら勇輝の腰を指差す。

 勇輝の持つ心刀には意思が宿っている。本人曰く、俺はお前だ、と言っているのだが、正直、自分自身の分身とは思えない。

 ただ、丑式の言うことはまったくもって正しいので、勇輝は午式に跨った後に呼びかけてみることにした。


「なぁ、お前だったら、あれを斬れるか?」


 しかし、先程の亡霊と同じく、心刀からは何の返事もない。

 勇輝は大きなため息をつくと肩を竦めた。


「こんな感じです。この前から話しかけてもうんともすんとも言わないんですよ」

「あー、それはそれで勇輝殿と一緒で、ややこしそうな何かが纏わりついてるんだな。何か最近、呪われたものでも斬っただか?」

「え? そんなものあったかな?」


 勇輝は僅かに視線を空に向けて、心刀を手に入れてからの敵を思い出す。

 しかし、心刀が話さなくなったのは、ここ最近のことであり、特段、不思議なものを斬った覚えはなかった。


『――――人が頑張ってるところに、ごちゃごちゃと話しかけて来るなよ。こっちはこっちで忙しいんだ。その程度の悪霊だか亡霊だかくらい、そっちで何とかしろ』


 その時、急にエコーがかった声が響く。すぐにそれが心刀の声であることは理解できた勇輝だが、あまりにも一方的な物言いにむっとしながら言い返した。


「あのな。幽霊相手に攻撃が通るかどうかは死活問題なんだよ。簡単に答えられる質問なんだから、はいかいいえで答えろって」

『出来るって言ってんだよ。幻を生み出すような能力を持ってるんだから、俺自身が魔力を纏っているのはわかり切ったことだろうが。ああいう霊体はな。魔力さえ宿らせてれば、そこらの小石でもダメージは通るんだ。わかったなら、俺に聞かなくても対応できるように勉強しておけ!』


 声量を上げたら、それを超える形で言い返して来る心刀。よほど大変な何かに取り組んでいるような物言いだが、その正体は刀だ。少なくとも、昨日から今日に至るまでにやったことと言えば、寝ている間に僧正の分身を勇輝にけしかけてきたくらいだろう。


「そこまで怒らなくたっていいだろ? あ、おい、聞いてるのか?」


 勇輝が呼びかけるも、これ以上話すことはないとばかりに反応が無くなる。どうしたものかと桜の肩へと視線を向けると丑式が目を丸くして、心刀と勇輝を交互に見ていた。


「な、何か?」

「いんや。ただ、雰囲気からしかわからないけんど、この心刀も大分大変そうだと思ってな。どうにも大層なもんを秘めてそうだから、ここはそっとしておくのが良いんだな。触らぬ神に何とやらって言うもんだし」


 言葉に言い表すのは難しいが、心刀が忙しいのはどうやら本当らしい。

 勇輝は半信半疑ながらも、丑式の言葉を受けて心刀が自ら話すまで放っておくことにした。


「何をしてるかはわからないけど、勇輝さんみたいにしっかり乗り越えて、元に戻るんじゃないかな? あ、でも、勇輝さんって何でも自分で抱え込む癖があるから、それは心配かも」


 笑っていた桜だが、最後の最後で勇輝をジト目で見る。


「え、俺そこまで抱え込むようなこと――――」

「おっかしいなー。勇輝さんってどこの出身の人だっけ?」

「うっ……」


 それは人に相談できる話題ではないと思いながらも、他人に相談をしていないことが、この世界に来てからありすぎる。桜の言う通りなことに気付き、表情を強張らせた。


「ひひん。そんなこと言ってる間に、村の入り口が見えてきましたよ。お二人とも、念のために気は引き締めたままですぞ」


 午式に言われて視線を前に移すと、宿場町というには人通りが少ない村の中が見えて来ていた。

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