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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
第26巻 薄明の呪いに終止符を

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1982/2386

対応部隊Ⅳ

 冷たい空気の中でも、身体が温かくなる。そんな感覚になっているところを午式の嘶きが勇輝の意識を現実に引き戻す。


「さて、ここからは少しずつ速度を上げていきますので、しっかりと手綱を握っておいてくださいね。後、勇輝殿は刀の向きを念の為、太刀のようにしていただけると安心です」


 午式は勇輝の心刀の柄の先にある鐺が体に当たりそうになるのが気になるようで、わかりやすく体を揺する。勇輝は慌てて、心刀をクルリと百八十度回転させて、向きを変える。


「はい、これなら拙者も安心して体を動かせるというもの。それでは――――行きますぞ!」


 勇輝は張り切っている午式の様子に嫌な予感を覚え、手綱を握りしめる。

 次の瞬間、身体が後ろに、手綱を握った手は前へと引っ張られた。あまりの勢いに桜の後頭部が勇輝の顎へと直撃する。

 鈍い音と共に小さな悲鳴のデュエットが響く。


「ごーしーきー。いきなり、速度を上げるのは危ないだよ」

「これは失礼。久しぶりに走れるので思わず……」


 時折、交代で門番の役目から外れることはあっても、基本的には言之葉邸での待機。特に勇輝が雛森村に来てからは、色々と騒がしい事件が立て続けに起こっていたこともあり、彼が自由に駆け回る暇など皆無であった。

 丑式もそのことは理解しているようだが、やはり、第一優先は桜と勇輝の安全。小さく、牛の顔であっても、その体から放たれる圧は強かった。


「安・全・第・一!」


 一言ずつ区切りながら、丑式は桜の肩を離れて、振り返った午式の目にズンズンと近づいていく。乗馬前にふらついていた動きが嘘のようだ。

 瞳に映るまで近付かれた午式は、顔を遠ざけながら何度も謝罪の言葉を言い放つ。それが十回を超えた辺りで、丑式は腰に手を当てた姿勢を解除して、桜の肩へと戻って来た。


「むふん。午式の悪いところはすーぐ熱くなるところなんだな。少しはおらみたいに落ち着くことを覚えたらどーだ?」

「む、丑式。その自慢の落ち着きのせいで、目の前に魔物が通り過ぎていても討伐しなかったことがあったでしょう! だーから、拙者がいつも門番をする羽目になっているのではないですか!」


 互いにヒートアップしていく二人だが、揺れている背中の上では落ち着いて止めに入ることもできない。二人で宥めようと口を開くが、それよりも二人の声の方が大きく、耳に入っていないようだ。

 幸い、午式は走ること自体は問題なくできており、道を逸れることなく進んでいる。乗っている側としては不安が残るので、何とかして口論を止めさせなければならない。


「うーん。もーさん、ごめんなさい!」

「だから、おらの――――!?」


 桜は大きな声で謝罪をすると、丑式を片手でむんずと掴み取り、スカートのポケットへと潜り込ませた。

 牛特有の鳴き声がポケットの中から聞こえる。恐らく、丑式が抗議の声を上げているのだろうが、そのあまりにも間延びした感じの様子では怒っているようにはとても聞こえない。


「まーさん。とりあえず、喧嘩はダメ。せっかく楽しく走れるのに、こんなんじゃつまらないでしょ?」

「お、おっ嬢の言う通りで……」

「出発のあれは次から気を付けてくれれば大丈夫だからね。もーさんには、私からも話すから」


 その言葉に午式が頷いたのを見て、桜は丑式を取り出す。

 午式への注意と関係ない話題での煽りは別であると伝えると、丑式は只でさえ小さくなってしまった体を縮こまらせていく。


「せっかく、最近は『からさん』とみんな仲良くできてたんだから、変なことで喧嘩しないの!」


 からさん、と聞いて、勇輝は少しだけ体を強張らせる。

 正式には巳式という名で、蛇の頭をもつ式神。炎を操り、全式神の中で最も好戦的な性格でもある。あまりの戦闘狂ぶりに、他の仲間である式神たちですら苦手にしている、と本人たちの口から語られるほどだ。

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