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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
第26巻 薄明の呪いに終止符を

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1979/2383

対応部隊Ⅰ

 言之葉邸を去った勇輝は、雛森村との間にある寺に戻ってきていた。


「……戻ったか」


 頭が烏の天狗で、寺の仮住職。そして、勇輝を鍛えてくれている師匠でもある僧正が出迎えた。

 ただ、その様子は明らかに普通ではない。何せ木でできているとはいえ、様々な武器が境内から見えるように欄干に立てかけられているからだ。


「これ、どうしたんですか?」

「うむ。そろそろお主がここを出ていく予感がしてな。教えられることは教えておいた方が良いと思っただけだ」


 そう告げた僧正は勇輝に木刀を差し出す。


「何、そう怯えることはない。軽く実戦形式で稽古をつけるのみよ」


 かんらかんらと笑う僧正だが、勇輝の頬は引き攣るばかり。実戦形式などと簡単に言っているが、武器こそ非殺傷ではあるものの、それ以外は殺し合いとほぼ同じような形式で行うということだ。

 寸止めとはいえ、僧正の動きは魔眼で何とか追えるレベル。使わなければ、手も足も出ないだろう。

 そんな勇輝の表情を見て、僧正はもう片方の手に持っていた木刀を軽くなぞって、首を傾げた。


「何をそんなに怯えている。お主の心刀の力で何度も夢や幻で臨死体験をしているだろうに」

「あれは幻痛で済みますけど、それが当たったら怪我じゃ済みませんから」

「魔物の攻撃に怯まず飛び込むことができるお主が何を言うか。それにある程度のことを見せればいくらでも、それが再現してくれるが、実際に体を動かすのはまた別の話だ。体とここの差がありすぎても上手く動かないのは、よくわかっておろう」


 僧正は木刀の峰の部分で己の頭部を軽く叩く。

 体だけが強くても、脳がついて行かないことを勇輝は実際に経験している。目にも留まらぬほどの早さで動くことができた代わりに、時間を感じる感覚が狂って、一秒が十数秒に感じられてまともに動けなくなった。

 その逆もまた然り。どれだけ頭で理解していても、身体が動かなければ意味がない。僧正はそれを心身一如がなっていないと勇輝に構えるよう促した。


「でも、どうして、俺がここを離れるとわかったんですか?」

「虫の知らせ。いや、鼠の知らせというやつよ。それよりも、あの言之葉の娘を守る為に力を付ける必要があるのだろう? 時間がもったいない。始めるとしよう」


 僧正が半身になって、木刀を構える。

 勇輝も中段に構えて、浅く呼吸をする。数回の呼吸の後、思いきり踏み出そうとして足下の違和感に気付いた。


「隙あり」


 しまった、と思った時には、勇輝の木刀の峰に僧正の刀が叩きつけられていた。手首に衝撃が走ると同時に木刀が地面へと叩き落される。


「戦いというのは何も武器だけではない。服装や周囲の物の配置一つ変わるだけで、有利にも不利にも働くのだ」

「――――もしかして、それを教えるために、わざわざこの格好をさせて行かせたんですか?」


 勇輝は自分の着ている袴を指でつまんで揺する。

 言之葉邸に赴く前に僧正に勧められた服装だったのだが、まさか、この瞬間の為だけに着替えさせられたとは思ってもいなかった。


「それもそうだが、他にも意図はある。お主が普段来ている服だと、足の動きが丸見えだからな。場合によっては、そこから動きを読まれることもある。動きの前兆を隠す大切さも学ばなければいかん」


 仮にズボンで戦うとしても、足の動きの隠し方や誤魔化し方を知っていると知っていないとでは大きく違う。それを理解するために、と僧正自身も勇輝と同じ胴着に袴という出で立ちであった。


「お主の場合、上に着ている外套の揺れまで気を使う必要もあるな。上手く使えば、相手を騙すこともできよう。尤も――――」


 ――――お主が本気になれば、そのような下らない小細工などいらなさそうだが。


 僧正は勇輝に聞こえないように呟くとわずかに腰を落とした。


「さぁ、存分にかかってこい」


 勇輝は僧正との間にある空間がミシリと音を立てたような気がした。

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