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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
第25巻 常盤緑、白雪に消ゆ

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1970/2383

解決Ⅵ

 幾分か疲れた表情をした國明は、首を左右に傾けて肩の筋肉を伸ばしながら中へと歩いていく。心刀を鞘ごと抜いて、正座と共に自身の背後へと置いた國明は目の前の人物を見つめる。


「報告は終わったか?」

「はい、滞りなく済ませて参りました」


 野太い声に國明は返事をする。その声は少しばかり震えているようであった。

 相手は少しばかり間をおいて、國明へと問いかける。


「――――して、水姫様は何と?」

「ご苦労であったと。今後の活躍に期待するとのことでした」


 背筋を伸ばしたまま國明が告げると、扇子が開かれる音が響く。

 冬で寒さが感じられるというのに、わざわざ扇子で扇ぐ必要などない。故に國明は、その扇子に何かあるのではないかと動きを注視していた。


「そうか。巫女との共同戦線は今後も行われそうか?」

「どうでしょう。正直なところ、水龍様や水皇様、水姫様の御心次第としか言えません。私としましては全力で否定の意を伝えさせていただきました」

「当然だ。我々が守るべきものが何かを勘違いされては困る。その点、お前はよく理解をしていて私も安心している」


 その直後、扇子がぶれて影から何かが國明に向かって飛び出した。國明の額に向かってきたそれは、当たる直前で彼の手刀によって叩き落される。


「ふむ、良い反応だ。西園寺の当主に教えてもらった技だが、初見で対応できるのは日ごろの鍛錬のおかげだな」

「お褒めの言葉、ありがとうございます」


 國明の右側へと転がった物を一瞥する。指よりも小さな刀状の物体――――小柄であった。刀の装飾品でもあり、緊急時に投げる武器にもなる他、ペーパーナイフなどの役割もこなす道具である。

 それを目の前の相手は扇子の裏から、わずかな指の動きだけで、國明の額へと回転させながら投げて見せた。


「それで、()()()。話を元に戻していただいてもよろしいでしょうか」

「あぁ、済まない。報告が終わって、安心しきっていないか心配でな。その様子を見るに、試す必要も無かったのだろうが、技を試さずにはいられなかったのだ」


 扇子を閉じて、からからと笑う男。それは寡黙な甲冑武者の中にいた人物であり、國明の父。即ち、南条家の現当主である南条充明であった。

 髷こそあるが、息子と同じように髪の所々に真っ赤な毛が混ざっており、それが二人の血の繋がりをこれでもかと伝えて来る。


「さて、巫女との件に関してだけでなく、今回の内裏城でのあらゆる行動と命令をお前に任せることとした。上に立つ者の大変さの一欠けらくらいは理解できたようだな」


 國明はそれに頷いて肯定を示す。

 戦闘こそ南条家の得意とするところ。だが、家臣団をもつということは、ただ戦闘ができればいいというものではない。部下の様子を見て声をかけるのは当然、領地経営の知識はもちろんで、特に資金をどう集めて、どう扱うかなどかなりの仕事量になる。


「因みにまだ聞いていなかったが、巫女の件に反対する理由は?」

「簡単です。私にとっては、巫女も守るべき対象です。後方に配置しておいた方が安全かつ有用な存在を、わざわざ前線に配置するなど愚行にもほどがあります」


 國明は心底下らない案であるとばかりに語気を強めて言い切った。


「それで自分の命が危険にさらされてもか?」

「命のやり取りをする場に、安全や安心などを持ち込もうとすることが己の心に隙を生む原因になります。何より、命のやり取りをする相手に失礼でしょう」


 國明は即座に充明へと言葉を返した。それを聞いて、充明はうんうんと何度も首を縦に振る。


「……本当に國明は素直じゃないなぁ。女の子が魔物や敵に襲われる危険を減らしたいと最初から言っていれば誤解も少ないというのに」

「――――嘘は言っておりません」


 声を詰まらせた國明だが、表情を変えずに何とか言い切ることができた。

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