解決Ⅱ
魔王がどこからともなく現れるのは、その因子を持つ者が突如として覚醒するからである。そう水龍は自身の推測を語る。
「僕だって今まで他の国が苦しんでいるところを見ていただけじゃない。原因が無いかをこっそり探し回ったこともある。でも、魔王という存在は本当に規格外でね。何の前触れもなく出現したかと思えば、人の住む地域に侵攻し始めるんだ」
だから、その場所を確定し、いつ頃目覚めるのかを特定するのは未だにできておらず、現状ではサケルラクリマの聖女の託宣が唯一の知る方法になっている。
「でも、蓮華帝国の李家の人が、自分の国の近くにある大森林地帯にいるって言ってましたよ?」
「あの占い好きの貴族のところか。彼らなら、まぁ、言い当てることもできるかもしれんな」
李家は日ノ本国の四方位貴族と同様に、蓮華帝国に古くから続く貴族の一角。青龍を従え、風属性の魔法を得意とするらしい。
「正直、あの青龍らとは気が合わん。できれば顔を合わせたくはないな。無視をするに限る」
そんな彼らの存在を知る水龍は、どうも李家に従う青龍が気に入らないらしい。苛立ったように何度も床を尻尾で軽く叩いて、不満であることをこれでもかとアピールしている。
同じ龍であるというのも理由の一つではあるらしいが、一番の理由は、日ノ本国へと工作を担当しているのが李家であることが多いというのが理由なのだとか。
「その点では今回は相手の方が一枚上手だった。彭侯などと言う木霊の性質を弄って、この国に解き放つなど、証拠があれば戦争待ったなしというところだ」
水龍の怒りは収まるところを知らず、今にも床を多々割りそうな雰囲気を醸し出していた。それでも、冷静さを失わないようにしているのか、鼻息荒く大きな呼吸を繰り返している内に、少しずつ呼吸が落ち着いていく。
「その話が真であろうと偽であろうと、この国を救う為には他国とも手を取り合わなければいけない時代になったという事実は変わらない。そして、それは君のような本来、この世界にいなかった者の力も借りなければいけない状況であるというのも確かだ」
彭侯の異変が起こる前に、勇輝は水龍とここで話したことを思い出す。
この世界に呼び込んだのは自分である、という話だ。その時は、そんな力があれば苦労はしないと言っていたが、逆に言うとそれだけの力をもつ者が、この世界にいるということになる。
「水龍さんは、こちらの世界に俺を呼ぶだけの力をもった神様や人物に心当たりがありますか?」
「うーん、あると言えばあるし、ないといえばない。結局、神隠しなどと言っても、時と場の条件と運が無ければ、早々起こることはないさ」
根気強く、何日も何十日も粘っていて、ようやく一人という時もあれば、お手軽に村一つを呼び込んでしまったなどと言うこともあるのだとか。
「その神隠しで魔王を呼び込むって方法なら、突然現れるっていう風に見えません? この世界のどこかに、そういう魔道具があるとか」
「いや、そんな、馬鹿な話があるわけ――――」
何となく勇輝は魔王も何かしらの方法でこの世界に転移させられた存在では、と仮定の話をしてみた。それならば、魔王が成長する瞬間が観測されないという条件を満たした上で、出現させることは十分に可能であり、何かしらの転移の兆候を星神が感じ取って警告をしていると捉えることもできる。
あくまでパッと思いついただけの話ではあったが、水龍はかなり真剣に考えこんでいるようであった。
「例えば、最初の魔王がそんな魔道具を作っていたとかだったら、色々と話も膨らみそうですよね。死ぬ直前の自分を未来に飛ばして、魔物をけしかけている間に自身を回復。傷が癒えたら、自ら進軍とか」
未だ時間を操る魔法には出会っていないが、身体が若返ると言った現象に勇輝自ら経験しているということもあり、可能性がないわけではないはずだ。
魔法の限界を知らないが故に気軽に思いついた説ではあったが、水龍は真剣な顔で聞き入っていた。
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