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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
第25巻 常盤緑、白雪に消ゆ

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1941/2389

彭侯Ⅵ

 やるならば初見で必殺となるための準備が必要。それには何よりも素早い行動が求められる。

 事前に説明を受けていた勇輝たちも、今は集中すべきことを思い出して、気を引き締めた。


「最後に見たのはどれくらい前だ?」

「陽が昇る少し前」

「……その前は?」

「月があの辺りにあった頃」


 國明の質問に雪童子たちが次々と答える。全くそろっていない合唱状態に、國明は顔を顰めながらも、ニ刻程度か、と呟いた。

 既に陽が昇ってから半刻が過ぎようとしている。それを踏まえて國明が出した結論は、誰もが納得がいくところだった。


「一回目の邂逅では追い込んで場所を確認。その後、準備を行って敵を包囲して叩く。作戦決行は正午ぐらいになるだろう。少しばかり長い戦いになりそうだ。倒れるなよ?」


 國明の言葉に家臣団たちの雰囲気が変わる。ただでさえ冷たい空気が肌を刺すのに、それが何倍にもなった感覚を勇輝は感じ取った。


「(土蜘蛛を退治した後に来た、南条家の人たちと同じ気配……!)」


 勇輝たちが宿泊している宿場町は、北側が土蜘蛛に襲われて半壊するほどであった。それを運よく勇輝は倒すことができたが、それが無理であった場合に備えた南条家の家臣団を勇輝は見たことがある。

 塚に封印された強大な魔物を相手にするということで呼び集められた精鋭。勇輝の魔眼で見ても、体から漏れる光が極端に少なく、動きの先読みがほとんどできない猛者。

 魔眼を開いたまま振り返った勇輝の眼に映ったのは、それと酷似した兵たちの姿だった。


「(前の人たちよりもムラがあるけど、それでも恐ろしいほどに洗練されてるな)」


 一対一で戦ったら國明同様、どこまで持ちこたえられるかわからない。そんな気持ちにさせるほど、不気味で恐ろしい存在に勇輝には見える。


「こっち! こっち!」

「わかったから、声量を落せ。敵にバレたらどうするつもりだ!」


 國明が人差し指を口に当てて、雪童子たちを叱りつけていた。

 後ろにいる家臣団たちとは違う少しばかり和やかな雰囲気であるが、國明もまた彼らと同じような恐ろしい力をもっていることを勇輝は思い出して、首を振る。


「どうしたの?」

「いや、俺も随分と腑抜けてたな、って思っただけだ。少し集中していかないと迷惑をかけることになる」


 桜の呼びかけに、勇輝は大きく息を吸い込むと一度目を閉じた。一瞬、喉を閉めて空気の出入りを止めると、息を吐きながら目をうっすらと開く。

 魔眼は相変わらず雪の青と木々の緑を映し出し、己が普通ではないことを自覚させる。そして、同時に脳裏に一つの考えを勇輝は言い聞かせる。

 通常の視界でない今は、戦闘状態と同じ。集中力を研ぎらせるな、と。

 暗示や催眠術が使えるわけではないが、たった一つの意識の切り替えで多少の変化が人には生まれる。少なくとも、今の勇輝は魔眼の視界の範囲においては、あらゆる動きや色の変化に敏感になっていた。


「フェイ、昨日のあいつの姿。見えていたよな?」

「あぁ、それがどうした?」


 勇輝の問いかけにフェイは、いつもの調子で応える。


「万が一ってこともある。もし、彭侯が逃げ出したら、ある程度の場所は示せるけど、その後はフェイはフェイで追ってほしい」

「同じ方から追うよりも、見失いにくいから?」

「あぁ、それに方向転換された時に対応しやすいだろ」


 左右に曲がるという状況を躊躇わせることもできるし、仮にされたとしても直線距離は一方が近くなる。國明の言う通り、大切なのは「彭侯を追い詰めて、逃げた木の場所を把握すること」だ。逃げている最中に無理矢理倒すよりも、囲って叩く方がやりやすい。

 それならば、視界に確実に納められる範囲に人員を配置する方が良いだろう。


「しかし、参ったな。俺とフェイに関しては、ほぼほぼ自由に動いて良いって言われたけど……正直困る」


 國明から告げられた作戦に光子の名は上がったが、勇輝と桜、そしてフェイの名は入っていなかった。

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