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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
第25巻 常盤緑、白雪に消ゆ

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1939/2384

彭侯Ⅳ

 ポケットから顔を出した桜は、両手を突き上げた。


「大当たりだよ。お父さんも文献で彭侯のことは知ってた!」

「よし、じゃあ、安心して國明に報告できるな」

「それが、そう簡単には行かなそうかも……」

「……何で?」


 広之曰く、「彭侯は確かに人面犬の姿をした木霊である」とのこと。ただし、一点だけ気がかりな点があるという。


「山彦の正体であると言われることがあるが、『実際に詠唱返しをする魔物』と言う情報は聞いたことがない、だって? じゃあ、彭侯じゃない可能性もあるのか」


 姿形が似ていても能力が異なる魔物は多くいる。特に迷宮ではありふれた現象だ。その為、見た目だけで敵をの強さを判断し、痛い目を見る冒険者が後を絶たなかった時代と言うのもあるくらいだ。

 ギルドが注意喚起をして、やっと事故は減少をしてきてはいるが、一ヶ月に数件は起こってしまうくらいに頻発している。

 現実でもそれは同じで、同じ種族であっても育った環境や摂取しているものの影響で別種族のような進化を遂げるということもあるという研究結果もあるくらいだ。


「で、でも、お父さんが言うには、山彦の概念で詠唱返しが使えるようになっている可能性もあるって」

「もしかして、茨木童子にやろうとしているアレか?」


 洞津で対決した強大な能力をもつ鬼である茨木童子。彼女は鬼であるという人の恐れが概念として定着し、「鬼の状態にし続ける」という状態異常を引き起こされているのだとか。

 彭侯も同じで、人の声を繰り返すという山彦の正体であるという概念が、彭侯をそうあるべき魔物として、能力を得ている可能性があると広之は指摘していた。


「今から彭侯は、そんな能力をもっていないって、広めるわけにもいかない。いや、そもそも彭侯を知っている人は、この国には少ないんじゃないか?」

「そうですね。恐らく大陸の方の影響が反映されているのだと考えた方が自然でしょう。言い換えると、その人たちの認識を変えない限りは、彭侯の詠唱返しの能力は消えない、と」


 光子は、今更どうにもできないことだと片手で頭を抑える。

 廊下で立ち止まり、國明に知らせるべきかを悩む四人だったが、あり得る可能性は話しておくべきだという結論に至った。

 國明本人も最終的に判断して命令を下すのは自分であると豪語している。一応、組織のトップがいる以上、そこへ報告を上げるのは同じチームとして動く以上は義務である。


「……俺とは相性が悪いけど、あいつ自身が相当なやり手であるのは事実だろうしな」


 後は、それを受けて國明がどう判断するか。勇輝は個人、ないし数人のパーティで戦うことはあったが、大勢を率いた作戦立案と実行をしたのは一度だけ。それに対して、國明は机上でも実践でも何度か大勢の兵を率いたことがあるはずで、調べずともその自信に満ち溢れた様子から自ずと理解できる。

 そもそも、南条家は国防の剣を担当する家だと聞いていた。そうとなれば、餅は餅屋に任せるべきで、この場は一兵卒として動くのが勇輝は適していると判断する。


「(――――で、ずっとだんまり決め込んでるけど、お前は何か言わないのかよ)」

『………………』


 勇輝は心刀に呼びかけるが、一切の反応を返さない。いつもなら減らず口の一つでも叩くか、幻で見せる相手の要望でも聞き出してくるところなのだが、うんともすんとも言わないので、勇輝は刀を口元に引寄せる。


「おい、聞こえてんのか?」

『――――聞こえてるよ。生暖かい息吹きかけんな気色悪い。こちとら忙しいんだ。木霊程度に手こずってんじゃねえ』


 勇輝にしか聞こえない声が、割と怒りの感情を剝き出しにしてくるものだから、思わず勇輝は心刀から距離を取ってしまう。


「当分は幻も見せれん。無駄話なんか以ての外だ。そっちはそっちでやれることをやっておけ。後は()()()()()()()()()()から、覚悟しておけよ」


 言いたいことを言い終えると、電話を急に切られたような感覚に襲われる。それが心刀と繋がっていた何かが一時的に途切れたのだと、勇輝は何となく悟った。

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