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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
第25巻 常盤緑、白雪に消ゆ

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彭侯Ⅰ

「――――作戦は失敗だ。明日、仕切り直す。以上だ」


 不機嫌に呟いた國明は、それ以上何も言うことなく、部屋を去っていく。

 襖が閉まった後、光子は大きく息を吐いた。


「すいません。まさか、こんなことになるとは……」

「みっちゃんのせいじゃないよ。それに、國明さんも今回の件は自分の失態だって言ってくれてたじゃない」


 桜が光子に声をかけるが、彼女は首を横に振るばかりだ。

 光子が肩を落としている原因は、今回の元凶と思わしき魔物を取り逃がしてしまったこと。しかもそれが、自分の得意とする結界を放ったがために起きたことであることが大きかった。


「――――でも、驚いたよ。まさか結界の魔法が反射されるなんて思ってなかったからね」


 フェイは腕を組んだまま顔を顰めた。

 光子が魔物の行動範囲を抑制するために、結界を作り出した。それと同時に追いかけていた勇輝たちの目の前に現れたのは光の壁。猛スピードで追撃していた勇輝たちに、それを躱す余裕などあるはずがなく、正面衝突をしてしまった。

 地面に落下した勇輝たちは、雪のおかげで大怪我をすることは避けられたが、それでも追撃は断念せざるを得なかった。


「あれは山に住む一部の魔物が使う『詠唱返し』。別名を『山彦』と言います。その名の通り、詠唱した術の効果を魔物が自由に操って反撃して来るものです」


 光子は腹立たしいとばかりに眉を顰める。その目は畳の一点を見つめ、両手は固く握られていた。存在を知っていたにもかかわらず、その対策を怠ったことがよほど悔しかったと見える。


「だけど、収穫はあった。その能力をもった人面犬が何かわかれば、対策が立てられるんじゃないか?」


 勇輝が告げると、桜は首を横に振った。


「人面犬ってだけでも珍しいのに、詠唱返しの能力をもってるなんて聞いたことがない、と思う」


 少なくとも、桜の知る知識の中にそのような魔物はいないらしい。勇輝はフェイや光子にも視線を向けるが、同様の反応で心当たりがないようであった。


「ファンメル王国で、そんな魔物が見つかったら大騒ぎだよ。魔法使い殺しの魔物として、高難易度の依頼がギルドから出されるのは間違いないね」

「確かに。日ノ本国は表立って戦う冒険者のほとんどが物理攻撃主体だもんな。仮に術を使うとしてもお札とか多いみたいだし」


 もちろん、陰陽師や巫女、僧侶でも詠唱は行う。ただ、表立って魔物を狩ろうとするのは、一部の僧侶くらいで、ほとんどが守りを堅牢にする道を選んでいる。尤も、守るとは言っても侵入と同時に反撃を食らうような反撃性能を備えているものであるが。


「勇輝さんの知識が偏っているのは置いておくにしても、あの魔物の追い詰め方は考えないといけませんね。少なくとも、詠唱は完全に封じられています。それを打ち破るには無詠唱で術を起動させるか、お札で補助するかの二択」


 光子の考える手段は二つ。今回のように追いかけながら無詠唱で結界を起動する方法。もう一つは、追いかけながら誘導して、お札が張った場所に近づき次第発動する方法。

 そのどちらも決定打にかける。それを光子は吐露しながらも提案した。


「私たちには圧倒的に機動性が足りないです。追いかけながらやるにしても、追い込むにしても相手の方が早いので後手に回らざるを得ません」


 むしろ、今回があまりにも運が良かったと言える。雪童子による早期発見。勇輝の魔眼による位置の特定。この二つだけでも十分と言えるが、それに加えて、その人面犬の逃走経路が近くであったことも大きい。

 こんな好条件が揃うなど簡単にあることではないはずだ。故に、この好機を逃したことが悔やまれる。


「――――次こそは必ず、成功させて見せます」


 光子の瞳に強い炎が灯る。それは巫女としての矜持を何としてでも守り抜こうという意志の表れに見えた。

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