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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
第25巻 常盤緑、白雪に消ゆ

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子供は風の子Ⅵ

 雪を踏みしめながら近づいてきた國明が見たのは、楽しげな声を上げて移動する雪だるま。それも尋常ではない速度で辺りを縦横無尽に駆け回る。


「な、んだ、こいつは!?」


 あまりにも異様な光景に國明だけでなく、他の家臣や巫女見習いたちまでが雪だるまに視線を奪われる。そんな視線を知ってか知らずか、雪だるまは勇輝たちの目の前で急停止した。


「体、ありがと。でも、もっと、欲しい」

「え、もっと欲しいって?」


 両腕の小枝を上下させて、喜びを表現する雪だるまだったが、さらに雪だるまを要求されたので勇輝は思わず聞き返す。


「僕の仲間、まだいっぱい。体、足りない!」

「うーん、どうしよう……」


 勇輝は助けを求める視線を桜に送るが、当然、返って来るのは同じような視線。光子や國明にも視線を送るが、どちらも大差ない表情だった。

 その間も雪だるまは体を揺らして、自らの主張を声高に叫ぶ。一体全体どうしたものかと口を真一文字にして悩んでいると、後ろから足音が近づいてきた。

 振り返るとそこにはフェイが立っており、目を丸くして雪だるまを見つめている。


「いいんじゃないかな? もしかしたら、今回の事件について何か知っているかもしれないし、話をしてくれるのと交換条件で」

「待て、まずはこいつらが何かわからなければ、迂闊に数を増やすことなど俺が許さん」

「大丈夫です。恐らく、精霊や妖精の類――――それも、あまり人に危害を加えない種だと思われます。そうでなければ、今頃、僕たちは生きていないでしょう」


 妖精庭園の妖精は力加減を知らず、遊び半分で強力な魔法に匹敵する力を振るうことができる。その点に関して言えば、ただ走り回って喜ぶだけの雪だるまなど可愛いものだ。


「(いや、でも、何でそんなことをフェイが言い切れるんだ? そう言えば、妖精庭園に入る前も俺に魔眼を使うなって念押ししてたけど……)」


 まさか、フェイも何かしらの魔眼を持っているのか、と勇輝は考える。そうであれば、昨日、勇輝と同じように子供の声が聞こえたということにも納得ができる。同じ系統の能力同士でならば聞こえるものも同じなのだ、と。


「ねぇ、教えてくれないかな? 君たちが一体どんな子なのか」


 フェイが屈んで話しかけると、雪だるまは動かない石の目でじっと顔を見つめる。数秒後、雪だるまがおもむろに振り返った。次の瞬間、雪だるまの足元の雪が思いきり跳ね上げられる。


「ぶはっ!?」


 顔面に雪のシャワーを浴びたフェイは、両手で顔を庇いながら後ろへと倒れ込む。慌てて勇輝と國明が背中を支えたおかげで、斜面を無限後転して滑り降りずにすんだ。

 驚いて瞬きするフェイだが、雪だるまは再び振り返って見つめた後、一言告げた。


「嬉しい? 嬉しい?」


 誰がどう聞いても煽っているようにしか聞こえない言い方に、フェイもイラついたのだろう。無言で立ち上がると、そのまま剣の柄に右手をかけた。


「ま、待て、フェイ。落ち着けって」

「大丈夫だよ、勇輝。僕は今までになく落ち着いているから」


 笑みを浮かべながらフェイが剣を抜き放とうとするのを、勇輝は必死で抑える。

 しかし、勇輝が戸惑っているのに対して、フェイは斬る覚悟を決めているのか。圧倒的な力で勇輝の拘束をものともせずに動き続ける。


「冷静になれ、異国の騎士! このような子供相手にムキになって剣を抜くなど、後で周りの者に笑われ――――」


 國明も流石に不味いと思ったのだろう。何とかしてフェイのことを宥めようとしていたのだが、その顔に雪のシャワーが降り注ぐ。


「――――昨日の、仕返し!」

「――――この、雪だるま風情がっ!!」


 フェイと違って刀に手をかけこそしなかったが、両の拳をこれでもかという程握って、鬼の形相を浮かべる國明。そんな表情を見て、雪だるまは楽し気な声で逃げ始めた。

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