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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
第25巻 常盤緑、白雪に消ゆ

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子供は風の子Ⅴ

 勇輝が感心していると唐突に服が引っ張られる。


「ちょっと、勇輝さん。前に集中しないとみっちゃんが困ってるでしょ」

「あ、あぁ、ごめんごめん」


 桜に言われて視線を前に戻す。視界の端に、ジト目の光子が見えた気がしたので、そちらにも軽く手を上げて謝る。

 横からため息が聞こえ、居た堪れない気持ちになる勇輝だったが、完全に自分が悪いので、ここは半透明の何者かを捉えることで名誉挽回すると決めた。


「――――って、意気込んでも相手の動きをコントロールできるわけではないからな。どうすればいいものやら」


 ひたすら謎の存在が運良く通りかかってくれることを祈るのは、あまりにも運頼りすぎる。下手をすればかなりの時間がかかってしまうことになるので、できれば避けたい事態ではあった。


「妖精の類だったら、何かしら興味が惹くものがあると近寄って来るんだよな? 何かあればいいんだけど……」

「そういえば、妖精庭園に迷い込んだ時は、クロ――――あのフードの人が土人形を作ったら、反応してたよ」


 桜が急に声を上げるが、途中で一回口を両手で抑える。桜が言いかけた名前は、偽名ではあるだろうが、一時共闘したクロウと言う謎の男のことであった。彼は水皇・水姫の暗殺に失敗して逃亡中の犯罪人で、この場でその存在がバレようものなら、面倒なことになりかねない。

 そう言う意味では、桜の咄嗟の判断は正しかった。


「はぁ、土人形ね。一応、人の形というだけで何かが宿る依り代にはなるかもしれないけど、それで一体何をしてたの?」

「あ、あはは、それのおかげで私は生きてるんだけどね」


 そもそも妖精庭園の存在からして、ファンメル王国でも見た者は少ない。説明できない歯がゆさがあることは、勇輝も桜と同じように感じていた。

 ただ、桜の話してくれた土人形と言うワードは()()()()()()()と思った。


「じゃあ、とりあえず、作ってみるか? 雪もあるし、土人形より雪だるまの方が作りやすそうだけど」

「……國明さんに怒られないかな?」

「別に人間大のやつを作るんじゃなくて、これくらいの小さいやつなら大丈夫だろ」


 そう言うや否や勇輝は、さっと両手で目の前の雪を掬って、押し固め始める。十秒程で胴体部分を作り、同じ手順で少し小さめの頭部を作り出す。それを胴体の上に置いて軽く固めると、適当に転がっていた小石や小枝で顔と手を作った。


「反応するならするでよし、しないんだったら、ここに置いて、結界捕縛の方に力を入れ――――」


 勇輝が雪だるまをドスリと雪の上に鎮座させた――――と同時に雪だるまが微かに動いた。

 雪の固め方が甘かったか、と咄嗟に両手を差し出して、形を整えようとした矢先、雪だるまが勇輝の手を避けて逃げ出した。


「――――は?」


 間抜けな声が武士たちの口から漏れ出た。それもそうだろう。脚も何もない雪だるまが、滑るようにして雪の上を走り回り始めれば、誰だって目が点になって、その雪だるまの動きを追ってしまう。


「あはは、楽しー。びゅーん、びゅーん!」


 可愛らしい子供の声を出しながら、雪だるまはひたすら雪の上を疾走する。その速さは、勇輝の魔眼で見ていた半透明な存在よりは幾分か劣るが、それでも雛森村の子供たちと同じくらいの素早さであると感じた。


「何だ、何があった?」


 流石に異変に気付いたようで、背後から國明の声がかかる。武士たちが顔を見合わせて、何とも言えない表情になったので、國明は語気を強めて説明する様に催促した。


「その、雪だるまを作ったら、動き出しまして……」

「――――は? 何を言っている?」


 そもそも、この場において雪だるまを作るということ自体が國明には理解できなかったのだろう。眉間に皺を寄せていた彼であったが、完全に顔から力が抜けて、唖然とした表情になっていた。

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