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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
第25巻 常盤緑、白雪に消ゆ

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銀世界Ⅵ

 甲高い声だが、今までのものとは少しばかり様子が違った。よく遊んでいる子供の屈託のない大声を聞くことがあるが、勇輝の耳に届いたのはどこか緊迫感を孕んでいるように思えた。

 一つ、二つと声が増えて言っていることに気が付いた時には、四方八方から響き渡っていた。まるで幼稚園児が遊び回る運動場の真ん中に放り出されたような感覚になる。


「フェイ、聞こえるか?」

「……あぁ、もちろん。君は見えるか?」


 勇輝は首を横に振って否定する。魔眼に映る光景には、辺り一帯の水色が紅蓮に染められていく光景が広がるが、相も変わらず人や魔物などの姿を捉えることができない。見えるのは最初から見えていた巫女や武士たちだけだ。

 耳に入ってくる音だけを頼りに、勇輝は音の発生源を辿る。数多ある声の中から最も聞き取りやすいものを選別し、その動く方向へと視線を巡らせる。


「(――――透明? いや、色が薄い?)」


 蜃気楼のようにわずかに空間が揺らめくのが見えた。それは良く目を凝らせば人の姿に見えなくもない。身長はおよそ一メートル強。小学校低学年の児童がものすごい勢いで走り回っているようにも見える。


「(早すぎて、どこに行ったかもわからない!?)」


 幸いにも、勇輝たちに襲い掛かるというよりは、ただ勝手気ままに走り回っている印象を受けた。右手の人差し指に集めていた魔力を霧散させて、見ることだけに集中するが、それでも捉えきれない。

 そうこうしている内に、声の主たちはどこかへと消え失せてしまう。勇輝は魔眼を解除すると、大きく息を吐いた。一際大きな白い塊が口から吐き出され、空中に消えて行ってしまう。


「くっそ、何かいるのはわかったんだけどな……」

「何か特徴はなかった? もしかしたら、わかることがあるかもしれない」


 勇輝が呟くと桜がすかさず声を上げた。

 脳内に焼き付けた僅かな光景を振り返りつつ、勇輝は印象的な部分を何とか言葉にしていく。ただ、わかるのは子供っぽい声であることと、大体の身長くらいで有力な情報はなかなか出てこなかった。


「ふん、随分と眼の良さを買われていたようだが、大したことないな」

「その眼があったせいで負けた癖に、偉そうな口を叩くなよ」

「何だ? もう一度、ここで戦ってやっても良いんだぞ?」


 ミシリ、と空気が一気に膨張する感覚と共に、明らかに空気の温度が数度上昇するのを感じ取った。一触即発、という程ではないが、勇輝と國明が互いに牽制し合っているのは誰が見てもわかる状態である。


「はいはい、そこまで。南条家の次期当主様が、下らないことで一般人に喧嘩売ったとか話が広まったら面倒でしょう? そもそも、怒ったふりとか丸わかりですから、こっちの方の問題に集中してください」


 光子が二人の間に割り込んで、光子がきっぱりと言い切る。その姿に毒気を抜かれた表情で瞬きをする國明。勇輝も同様に目を丸くしていると、光子が振り返った。


「そっちはそっちで、安い挑発に乗らない。下らない喧嘩を買う方も買う方。よく命より名誉が大切とか言う人もいますけど、あなたはそれよりも大切なものがあるんでしょう? だったら、馬鹿なことは無視してください。無・視!」


 勇輝にも言葉を言い切ると、光子は言うべきことは言ったとばかりに周囲の観察に戻ってしまう。

 唖然とする中、勇輝は國明が顔を赤くして、頬をひくつかせているのが目に入った。恐らく、光子の台詞に聞き捨てならない部分があったのだろう。

 しかし、ここで光子に食って掛かれば、國明もまた光子の言う「下らない喧嘩を買う方」の人間になってしまう。やり場のなくなった怒りを一睨みすることで留飲を下げることにしたようで、光子の背中に刺す様な視線を向けた後、そっぽを向くようにして見張りへと戻っていく。

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