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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
第25巻 常盤緑、白雪に消ゆ

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銀世界Ⅳ

 そんな二人に桜は短く問いかけた。


「二人とも、何か声が聞こえたの?」

「え、桜は子供の声が聞こえなかったのか?」


 勇輝は思わず桜と視線を交わして、何度か瞬きする。桜が嘘を言っているようには見えないし、言うメリットなどあるはずがない。

 もう一度、視線をフェイに戻すと、フェイは口元を抑えて視線を彷徨わせていた。


「どうした?」

「いや、気にしないでくれ。少し不安に思っただけだ。僕たちだけにしか聞こえないことに、何かあるのかって」


 特定の人物にしか聞こえない。それは何かしらの攻撃の標的にされていることを表しているのではないか。そんな想像が勇輝の中を駆け巡る。

 そう、それは例えば山の神が木を数える時に見つかりやすい人物である、とか。


「は、ははは、そ、そんなこと、あるはずないよ……」


 勇輝が自分の想像を口にすると、桜が笑い飛ばそうとしてくれているが、その頬は若干引きつっていた。どうやら、考え方としては別におかしなことは言っていなかったらしいと勇輝は悟る。

 一瞬、蒼褪める勇輝だったが、すぐにフェイがフォローを入れた。


「だ、大丈夫だ。十二日までには時間があるし、最悪、その日は山の中に居なければいいだけだろ? お得意の魔眼でさっさと原因を突き止めてやれよ」

「そう言ってるけど、フェイ。お前、ちょっと声が震えてるぞ」

「あんな話を聞かされた後に、お前のような想像力豊かな妄想を聞いたら、誰だってなる!」


 開き直ったフェイが勇輝の脇腹を小突く。思わず勇輝が呻くと、前を歩いていた國明が歩みを止めた。


「まったく、騒がしい奴らだ。十二日じゃなくても、山の神様が五月蠅いって怒り出すぞ」

「悪かったな。でも、こうやって話してれば、少なくとも、熊が近寄ってくることはないだろ。冬眠前に起きてとしても腹は膨れてて、人を襲う理由なんてないからな」

「――――ほう、一応、理には適っているな。ただし、それで魔物を引き付けた日には、もう一度、俺と戦うことになりそうだが覚悟はあるか?」


 急に重たい雰囲気が二人の間に立ち込める。

 それに真っ先に気付いたのは桜だっただろう。何しろ、二人は桜を巡って姫立ちの儀で争った間柄だ。こうして、一緒の空間にいること自体も、よくよく考えれば危険であることは明らかである。

 鋭い視線が交わり、火花を散らしていたが、急に國明は鼻で笑うと刀を地面に突き刺した。


「――――冗談だ。だけど、少しは集中力が高まったんじゃないか? お前たち! 目的地に着いたぞ。編成を組み直して、周囲の捜索に当たる。準備ができたところの長は、直ちに俺まで報告せよ」


 國明の命令がはっきりと後ろまで行き渡ると同時に、周囲の雪が國明を中心に溶けていく。十数キロの甲冑を纏った家臣団たちは、真っすぐに伸びた隊列を巫女を引き連れて長方形に並べ始めた。

 修学旅行の生徒が班隊形に並ぶような姿に、どこかシュールさすら感じていると、一分も経たずに並び終わる。


「武士五人に、巫女一人の十二班。特に問題なし、か。これより周囲の捜索に迎え、俺を中心に、各自班に割り振られた方角へと迎え、ただし、まずは俺の目の届く範囲を捜索だ。そこから先には勝手に進もうとせず、何かある場合は報告を優先せよ」


 國明の命令に野太い返事が木霊する。國明が頷くと、それぞれの班が一時、二時と十二の方角に向かって散開し始めた。


「それで、俺たちはどうすれば?」

「今は何もしなくていい。お前は魔眼で周囲を満遍なく見張り、何かあれば知らせるだけだ。緊急事態が起こっても呪術で遠距離攻撃を素早く行えるのだろう? それならば、全員を援護できる中央にいてくれた方が、ずっとやりやすい。その間に、そこにいる素早さに自信があるという異国の剣士を向かわせれば、最悪、巫女を離脱させることは可能だろう」


 そう告げた國明の言葉を聞いて、勇輝はどこか違和感を感じた。

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