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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
第25巻 常盤緑、白雪に消ゆ

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1907/2383

水龍Ⅶ

 数時間後、夜も更けてきた頃合いに時子は小さくため息をつく。

 勝手に異変の調査に水龍が出かけて行ってしまったことが原因の一つに挙げられるが、そんなことはどうにでもなる。正確には、水龍に手を出してどうにかできるのは、高位の神くらししかできないので、どうにかしようと行動できる存在が皆無であるということ。

 問題なのは、その水龍の力を以てしても異変の原因を突き止めるに至らなかったことが問題であった。


「――――いや、参ったね。これは守り神も引退かな?」

「ご冗談を。あなた様には国土が消えたとしても、民が一人残らず消えるその日まで、見守り続けていただかなくてはなりません」


 普段の時子からは程遠い。それこそ、ファンメル王国との会談ですら見せなかった冷ややかな眼差しが水龍を射抜く。

 たかが人間の子娘一人に恐れを抱くことなどあるはずがない水龍だが、笑みを引っ込めて静かに頷いた。


「あぁ、そのつもりだよ。冗談にしては少し不味かった」

「その代わり、水皇、水妃――――今は水姫ではありますが、命尽きるまでお供しますとも」

「この身に宿ってから幾星霜。あの日の願いを違えることはないと思っているが、君たちの苦労を考えると酷な運命に巻き込んでしまったことを申し訳なく思うよ」


 この国が出来上がる地盤が形作られ始めたのは、およそ八百年前。それまでは国という枠組みどころか、魔物が跋扈し、一部の者たちが密かに生き延びているような状態であったという。

 それを纏め上げ、国内の浄化作戦――――いわゆる魔物の掃討作戦――――に踏み切ったのは、水龍の出現とその加護を受けた武士たちの存在が大きかった。


「その『君たち』には、彼や巫女長も?」

「どうだろうね。彼はともかく、巫女長は彼女なりの目的があるみたいだから。お互いに利用する関係の方が近いかな?」


 水龍は悩むことなく、きっぱりと言い切る。巫女長は味方ではあるが、必ずしも日ノ本国の為に動いているわけではない、と。裏切って敵対することはないだろう、と付け加えた上で、水龍は彼女を信頼できるとも評した。

 少なくとも、巫女長によって国が何度か救われたことがあるのも事実。水龍も時子も彼女の要請であれば、多少の願いは聞き入れてもよいというスタンスであった。

 実際に、先日の無憂樹の輸入は時子の権限で何とかしたものである。それに対して、封印塚の茨木童子を無害化させる作業に繋がっていることを考えると、持ちつ持たれつの関係というには、この一件だけでも十分すぎる成果ではある。


「どちらかと言えば、曾孫である彼の方が僕は興味がある」

「蒼玉の魔眼、でしたっけ?」

「あぁ、数百年前のとある武士が持っていた特殊な眼だ。彼は人の感情が眼に見える、という能力だったらしい。感情を色で見て、攻撃の起こりを捉えられるため、鍛錬で技術を学べば学ぶほど向かうところ敵なしと言った猛者だった。当時は僕も彼ならば封印塚の魔物に対抗できるのではないか、と思っていたほどには気にしていたよ」


 攻撃が当たらないならば、防具など必要なし。重りは邪魔とばかりに防具を着こまず挑む姿は、味方はもちろん、知能ある敵も困惑を通り越して恐怖していたとか。

 その武士が持っていた心刀の性能も高く、大鬼であろうとも容易く皮膚を切り裂く業物。一対一ならば、時間こそ掛かれど必ず敵を打ち倒す。

 時子は、その話を何度か水龍から聞いていたので、すんなりと納得できた。何せ勇輝の魔眼も、それに似たような力があるというのだから。


「明らかに未来視や過去視とは異なり、肉眼とは違う色彩で判別する魔眼。そして、この世界の理に触れると言われる七つの奇跡。その一つに属すると聞けば、興味を持たずにはいられない」

「でも、水龍様がお会いした、その眼の持ち主の方は――――」


 不安げな表情で水龍を見つめる時子。それもそのはず、その人物の()()も彼女は聞かされているからだ。


「あぁ、彼はその眼の能力に心が耐えきれず、自ら命を絶った」

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