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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
第4巻 消えた焔は地の底に

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救済の手は剣を掴むⅡ

 揺れと煙も治まった時に、フェイがユーキの傍まで近寄って耳元で囁いた。


「マリーってさ。こういうところ見ると、やっぱり伯爵の血を引いてるんだなって思うよね」

「……違いない」


 父親である伯爵は辺境を守る屈強な騎士。母親は相当な魔法の使い手。そのことにコンプレックスを抱いているということを思い出したユーキは、フェイの言葉に頷いた後、何となくマリーの置かれた状況を今更ながらに理解した。

 今の火球の魔法も一般生徒ならば放つことが難しいレベルの威力を持っている。つまり、マリーの魔法使いとしての技量は普通に考えて高いのだ。ただ普段から意識している人間のレベルが高すぎて、自分で自分を卑下して追い詰めている状態になっている。それは家族だけでなく、飛び級少女のアイリスしかり、留学生のサクラしかり、或いはミスリルを貫通したユーキしかり、である。

 本来ならば、「そんなことはない」と声をかける優しさも必要なのだろうが彼女の性格がそれを許さないのだろう。


「何だよ。あたしの顔見て、ちゃんと威力は抑えたし、アイリスには事前に魔法で防御するように言ってあったから問題ないだろ?」

「はいはい。よくできました。じゃあ、さっさと戻るよ。目的は洞窟の封鎖じゃなくて、フランの救出でしょ」

「そ、そうだけどさー」


 なんだかんだ言って心配しているフェイが気遣ってあげられる位置にいる。

 もしかすると、伯爵にも何か言われているのかもしれない。気心知れたなんとやら、マリー自身も心を開いているので外野が騒ぐことの程でもない、とユーキは二人にばれない様に苦笑いする。

 マリーみたいなタイプは壁を乗り越えたときに、一気に成長するタイプだ。このまましっかりと成長していけば、いずれ大魔法使いになるのだろう。


「ユーキさん。何を笑ってるの?」

「いや、仲がいいのはいいことだなって」

「ふーん。まぁ、あの二人は小さい頃から一緒だったっていうし、そうかもね」


 どこか羨ましそうに見つめるサクラの横で、珍しくアイリスもマリーを追いかけずに見守っていた。その視線はマリーとフェイを交互に見た後に、サクラへと向けられる。


「サクラはそういう相手いないの?」

「えっ!?」


 いきなり矛先を向けられて、声が裏返ったサクラ。そのサクラをじっと見つめるアイリス。視線が定まらず、どう答えようかと悩んでいたようだが、桜が答えるよりも先にマリーが振り返って叫ぶ。


「おーい。なにボーっと突っ立ってるんだよ!?置いてくぜ?」

「ほ、ほら、置いてかれちゃうよ。急ごう」

「むー、わかった」


 不承不承といった形で、アイリスはサクラに背を押されていった。ユーキも後を追おうと足を踏み出した時、後ろから砕け散った破片を踏み砕く音が聞こえた。


「俺たち以外に誰が……!?」


 失念していた。その存在は既に知っていたはずなのに、恐怖から逃れられて地に足がついていなかったのは、ユーキも一緒だった。


 ――――()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 頭の中で帰り際にドラゴンが言っていた言葉が鮮明に繰り返される。()()()()()()()()()()を見ながらユーキは後退する。


「そうだよな。餌場も住処も荒らされれば、怒って出てくるのは当たり前だよなっ」


 怒りを瞳に宿した鉱石トカゲたちが口を開いたのと、ユーキがわき目も振らず走り出したのは同時だった。


「鉱石トカゲの群れだ! 逃げろ!」

「な、なんだって!?」


 先頭にいたフェイは驚愕して後ろを向くと、様々な色のブレスがユーキの背中を追ってきているところだった。

 いくらユーキの結界が有っても、限度というものがある。何十年、何百年という歳月の名のもとに育てられた鉱石と蓄えられた魔力を啜り続けたトカゲのブレスは結界を食い破り、ユーキの後ろの髪の毛の先を焦がし始めていた。首筋に熱さを感じながらも身体強化全開で全力疾走しているとブレスの範囲を外れたのか、急速に空気の冷たさを認識する。幸か不幸か、ここの鉱石トカゲの群れは火の魔力を存分に蓄えていたらしい。それもそうだろう。何せ鉱石に溜まった魔力はドラゴンの炎に宿った魔力を元にしていたのだから。


「あ、あぶなっ!?」


 訂正。どうやら例外もいるらしく、ユーキが振り返った矢先に炎の渦の中から鋭く尖った石礫が数個飛び出して来た。慌ててガンドで撃ち落とすが、一発が右胸へと命中する。


「――――っ!?」

「ユーキさん!?」


 後ろを確認しながら走っていたサクラが声を上げる。革鎧と錬金術師作のコートで衝撃は緩和されたが、それでも数日は痣として残りそうな強烈な痛みに襲われていた。痛みで上げていた腕を下ろし、逃げの一手を一時的に選択せざるを得なくなる。

 その後ろではブレスが届かなくなったことに気付いたトカゲたちが、全身を左右にくねらせて猛スピードで追撃を開始していた。


「ユーキ、早く来い。軽く吹き飛ばしてやる!」


 マリーが杖を構えてユーキが通り過ぎるタイミングで後ろを一掃しようと詠唱を開始した。アイリスも先ほどと同じように爆発の余波を防ぐために風の魔法を唱え始める。

 ユーキの後ろには再び射程圏内に入ったのか、何匹かのトカゲが口を開いてブレスの準備に入っていた。

 あと数歩でマリーたちに追いつく。そう思った瞬間、ユーキの後ろでトカゲのブレスが炸裂した。

 腕をぶらつかせてユーキが辿り着くと間髪入れずにマリーが杖を突き出し、一拍遅れてアイリスが杖を薙ぎ払う。ユーキを追ってきた炎と風はマリーの火球に飲み込まれ、石礫は軌道を逸らされる。トカゲたちは、何が起こったのかを理解する暇すら与えられず、爆発と瓦礫の嵐に飲み込まれた。

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