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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
第4巻 消えた焔は地の底に

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救済の手は剣を掴むⅠ

 しばらく息を整えていると、ユーキの体も少しずつ動くようになってきた。頭痛も治まり、ゆっくりと深呼吸をして、腕を持ち上げたまま手を握ったり開いたりして調子を確認する。


「ユーキさん。大丈夫?」

「まぁ、少しクラクラするけど、何とか。それより、ドラゴンが言ってた、第四位の保持者って言葉が気になってさ」

「私も聞いたことはないなぁ」


 サクラが悩んでいるとフェイがユーキの顔を覗き込んだ。その顔は若干、納得がいっていないとでも言いたげだ。


「ユーキ。あの時、ドラゴンなんて見えてなかったはずなのに、何で危ないってわかったんだ?」

「それがわかれば苦労はしないよ」


 魔眼のことを言っても理解できないだろうし、自分自身が分かっていないのだからどうしようもない。なんとなく魔力のようなものとかが見える、ということでユーキは納得していたので、フェイに説明する気もなかった。

 その態度もあってか、フェイも唸るばかりでユーキにしつこく聞こうにも聞けない状態になって、不良消化を起こしている。


「とりあえず、今来た道を封鎖しよう。離れたところからガンドを撃てば十分だろ」

「全部落盤とかしないよな」

「……多分」


 マリーが不安そうな顔でユーキの右腕を見る。魔法抵抗の高いミスリルを貫通する威力で撃ったら何が起こるかわからない。ユーキとしては全力で撃つ気など毛頭ないのだが、マリーたちからしてみれば、異常な魔法なことには変わりない。


「わ、私の魔法なら上手く塞げるかもしれないよ?」

「いや、きれいに塞ぎ過ぎてもダメなんだ。この先に何かありますって言ってるようなものだろ? できるだけ崩落して完全に塞がれた状態を演出しておきたいんだ。やるなら……そうだな。少し奥をサクラが、手前を俺がやった方がそれっぽく見えるかもしれない」


 ユーキが指差しして、位置を確認する。

 その話を聞いてマリーとアイリスの目が輝き始めた。


「なぁなぁ、それって多少は他の所も壊していいってことだよな?」

「破壊し放題?」


 あんな目に遭った後なのに極端な解釈をして、自ら墓穴を文字通り掘りに行く。いや、この場合は埋まりに行くといった方が正しいのだろうか。いずれにせよ、自滅しかねない行動をやりかねない二人をフェイが押し留める。


「はいはい。まずはユーキとサクラが終わった後で、安全なところから、ね」

「ちょ、フェイ。引っ張んなって!」


 手慣れた様子でマリーを帰り道の方へと引っ張っていくと、アイリスもその後を追っていく。

 ドラゴンを前に毅然とした言動をしていた姿には、似ても似つかない姿を目で追いながらサクラは杖を抜いた。


「じゃあ、私は奥を岩で塞いで、ユーキさんがそこから手前を崩すでいいよね。両方やっちゃっても大丈夫だけど?」

「さっきはほとんど動かなかったからね。少しくらいは働いておかないと」

「もう、意地っ張りなんだから」


 詠唱と共に魔力を流すと軽い地響きが洞窟内に響き渡る。ドラゴンに至る道は数本の岩の槍がまるで巨大ロボットの出撃ハッチを封鎖するかのように規則正しく並んでいく。やがて振動が収まるとユーキはサクラより前に出て、岩の扉の数メートル手前の天井に狙いをつけた。

 洞窟の崩落を防ぐべく、一発ずつ魔力の充填具合を上げていくと、岩の表面が弾き跳ぶような状態から抉られたようなダメージへと変化していく。そのまま威力を上げて天井へ円を描くように弾丸の装填を挟みながら放っていくと三十発を迎えた頃に大きな岩が塊で天井から落ちてきた。その工程を二度繰り返すと丁度、入口が崩落したように偽装することができた。


「おーい、終わったなら早く戻って来いよ」


 待ちきれないとばかりにマリーが手を振る。ドラゴンの恐怖を既に忘れているのか、洞窟に魔法を撃ちこむことしか見えていない。或いは、恐怖からの解放による一時的な興奮状態なのかもしれない。少なくとも、近くでフェイが苦笑いしながら手綱を握っている内は安全なはずだ。


「「……大丈夫かなぁ?」」


 それでも胸中にあふれた不安は、口へと思わず飛び出してしまう。お互いに考えていたことが同じだとわかると、顔を見合わせた瞬間に笑みがこぼれた。改めてマリーたちが待つ場所へと歩き始めるとフェイが松明を片手にため息をつく。


「どうやら、お嬢様は色々とお疲れのようだ。これ以上は僕も止めきれないから二人とも頼んだよ」


 皮肉たっぷりにフェイはマリーの前でユーキたちへと手綱を渡すと、巻き込まれないように三歩ほど後ろへと下がる。


「覚えてろ! 絶対、倒せるくらいに強くなってやるからな!」


 杖を振りかざすと火球魔法をユーキたちが塞いだ付近の天井に向かって放つ。ただの火球が一つ。それでも相当魔力を込めたのか、かつてユーキが放った火球魔法を超える勢いで爆発を起こす。純粋な爆風が狭い空間で反射し、ユーキたちの下へと押し寄せる。


「ちょっと、マリーやりすぎ!」

「だいじょう、ぶ!」


 押し寄せる爆風に向かってアイリスが詠唱すると、慌てて逃げ出そうとしたユーキとサクラの後ろで、見えない壁に黒煙と弾き跳んだ破片が押し留められる。破片は地に落ち、煙は風の魔法で吹き飛ばされる。

 しばらくすると脆くなっていたのか、着弾していた場所とは違う天井も何カ所か落ちていた。

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