鋭き目で射抜くものⅢ
まっすぐに伸びる通路を進んでいく。時間にして五分ほどで更に下り坂が緩やかになり、壁や地面にヒカリゴケとは違う緑の光や、赤い色が目立ち始めた。
ユーキは片手を上げて、赤い光を放つ部分を肉眼で確かめるとピンクや紫に近い色をした石が溶岩からわずかに顔を出しているのが見えた。
「おそらく、鉱石トカゲが掘り出している途中だったのかもしれないな。入口に近い方は既に露出していたから、それ以上掘る必要はなくて苔がたくさん生えていたんだろう。鉱石トカゲが増えすぎて新たな餌場を探していた結果、苔が掘り起こすときに毟られて生えていないんだろうな」
松明を近づけたフェイが地面を指でなぞってトカゲの残した爪痕を確認する。その爪痕の中に僅かに顔をのぞかせている鉱石が目に見えた。
「じゃあ、この辺りを掘り返せば宝石があるの?」
「いや、ルビーみたいな宝石はゆっくり冷やされないといけないから、こんなに浅いところだと違うものか、あっても質の悪いものの可能性が高いと思うけど、フェイはどう思う?」
「同感だ。もう少し広いところで、爪痕が大きい箇所があるなら試してみてもいいかもしれないな。地属性の魔法で直接掘り起こすっていう荒業も使えそうだしね」
フェイがサクラの方を見ると言っている意味が分かったのか、顔を少しほころばせた。
「さっきの所に戻ってもいいけど、もう少しだけ進んでみようか。かなり緩やかになってきているから、溶岩が溜まって、ユーキの言う冷えにくい場所とかがあるかもしれないからさ」
一縷の望みが見えてきたところで、全員のやる気が勢いを増す。すぐさま、立ち上がり奥を目指すために歩き出した。溶岩が流れ込んでくる場所だったためか。さらに道幅は狭くなってきていたが、ユーキたちは構うことなく一列に突き進んだ。
やがて一本道も終わりに近づき、不格好なつららのように行く手を遮る柱状のものが、天井から伸び始めていた。何とか避けながら進んでいくと鉄格子のように行く手に立ちふさがる柱の間から、ヒカリゴケの放つ光が差し込んでくる。
逸る心を押さえて、光の下まで歩いていくと、その先には驚くべき光景が広がっていた。ユーキ、フェイと続いて、二人の間から垣間見るように覗く少女たちは、感嘆の声を上げる。
「すげぇ、あれ。本物だよな?」
マリーの言葉が示していたのは格子の先、約十五メートルほど離れたところにある窪みだった。大きくくぼんだそこには、さまざまな色を見せる鉱石が顔を覗かせていた。大小様々で離れたところからでもわかるということは、相当大きなものだということが予想できた。
ユーキの横でフェイが思わず生唾を飲み込む。思わず手が震える程度にはフェイも驚愕しているようだ。もし、持ち帰って売れば、相当な財産が築けるに違いないことは誰の頭にも過ぎるだろう。
サクラもユーキの肩越しに覗いて夢中になっていた。特にこちらの国では、和の国と違う指輪などのアクセサリーが多数存在し、特に高貴な女性が身に着けるものとしても有名だからだ。
思わず身を乗り出したサクラだったが、ユーキの背中に胸を押し付ける形になっていたことに気付き、慌てて我に返る。
「ご、ごめんなさいユーキさん。今のは、その……」
しかし、不思議なことにユーキからは何の反応も帰ってこない。もしや、ここ最近のアクシデント続きのせいで彼も自分と同じように意識してしまって固まっているのではないだろうか、という結論に行きついた。そう思い至ったことに、更に顔が熱くなっていくことをサクラは自覚する。心臓の音が早鐘を打ち、耳の奥にまで音が響く。
ゆっくりと横にずれて、差し込んだ光に照らされるユーキの顔を見ようとする。次第に露になる顔に緊張で視点が定まらない。
サクラは自分自身にじれったさを感じて、思い切りユーキの横顔を覗き込む。
――――その顔は血の気が引いて真っ青になっていた。
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