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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
第4巻 消えた焔は地の底に

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鋭き目で射抜くものⅡ

 ゆるいゆるい下り坂を進むと、不思議なことに鉱石トカゲの姿を見かけなくなった。

 そして、何よりも洞窟の質感が少しばかり変化したようにも感じる。具体的に言うと、先程のマグマが固まった穴はいくつも残してはいるものの、全体的に滑らかになったような感じがするのだ。所々角ばっていたり、でこぼこしていたりした場所が少なくなってきている。一番、わかりやすいのは地面の溶岩が奥に向かって滑らかに流れていくように固まっているところだろう。その一方で一部だけがやたら抉り取られているような跡も存在していた。まるで熊が木の幹にマーキングをしたかのように複数本の平行な線が残っている。


「ここは比較的、溶岩の粘りがないもので固まったのかもな。もしかしたら、どこかを採掘すれば鉱石の塊の一つや二つ眠っているかもしれないけど……」


 期待を込めて魔眼を開くが、そこに目立つほどの鮮やかな色は存在しなかった。辺り一面、ヒカリゴケか、流れる水、あるいは固まった溶岩の三色で埋め尽くされている。抉り取られた後に他の場所よりも鈍い光を見た気がするが、ユーキは気にしないことにした。

 落胆しながら前へと進むと、次第にヒカリゴケの光が弱くなっていることに気付く。


「なぁ、だんだんヒカリゴケが少なくなってきてないか?」


 マリーも気付いたのか、足を止めて周りを見渡す。元来た道を振り返るとそちらには苔が光り輝いていた。フェイは逡巡した後、用意していた松明に火をつける用意をする。


「この松明が消えたら探索はここまでだ。それ以上進むならば、相応の準備が必要になるからな」

「そう……だね。仕方ないよね」


 サクラは残念な表情こそ見せたがフェイの言葉に頷いた。それは、マリーもアイリスも同様だった。しっかりと乾燥させて年月をかけて作られた松明は一時間は明かりを灯す。帰りも含めると三十分が限度だろう。

 フェイの用意した松明にマリーが炎を魔法で灯すと苔とは違う暖かい光が辺りを照らす。


「フェイ。俺は暗闇でも見える。俺が先頭に行こう」

「暗視か何かの魔眼かい? 初耳だけど、今は頼もしい限りだ。無茶はするなよ」


 フェイより数歩先をユーキが進むと目の前に自身の影が現れる。火が揺らめくと共に影がダンスでもするかのように体をくねらせていた。魔眼を開いて先を確認すると、道幅が緩やかに狭まり始めているのがわかった。


「フェイ。この先、少し狭くなっているみたいだ。陣形はこのままで大丈夫か?」

「そうか。サクラ、一番後ろの警戒を頼めるかい? 何かあった時はマリーは僕が庇えるから、アイリスのフォローはマリーで」

「うん、わかった」

「任せとけ」


 すぐに頷くとサクラは一番後ろに移動し、後方を見守りながら進む。マリーとアイリスは左右を見回しながらフェイの明かりを頼りに滑らないように足を慎重に進める。時折、砂浜に打ち寄せた波が時を止めたかのように溶岩が固まっているところがあり、見落とせば僅かな段差でも足を挫きかねない。

 フェイは片目をつぶって暗闇に慣らしてまま前へと進む、万が一、松明が急に消えても、残っているヒカリゴケが放つ光で対応できるようにするためだろう。呼吸が荒くなるのを押さえて、前方から来るユーキ以外の音を聞き分けられるように静かに足を踏み出すなど、騎士として学んだことを存分に生かしているようだ。


「分かれ道なし、このまま下り路を進むぞ」

「敵影は? トカゲ以外に蝙蝠とかいるかもしれない」

「特に見えない。穴も今まで通りだからトカゲはいないな」

「了解。些細なことでいい、何か見つけたり疑問に思ったりしたら口に出してくれ」


 ユーキは親指だけを上げて、フェイに了承の意を伝えると前へと向き直った。


「(体の調子から考えても魔眼は当分の時間は使える、か。ガンドのことを考えるとあまり戦闘はしたくないな)」


 道はまだ長そうだなと溜まり始めた疲労感を無視して、ユーキはゆっくりと周りを見渡した。

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