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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
第4巻 消えた焔は地の底に

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未知の洞窟Ⅴ

 ユーキはクレアと訪れたプロテル薬草の群生地へ辿り着くと魔眼を開いた。黄土色や緑の光が輝く中にただ一カ所。赤褐色に輝く場所に近づいて、魔眼を閉じるとその場所には岩が座していることに気付く。


「やっぱり、何かあるな」

「ユーキ、このデカい岩をどうするつもりだ?」


 ユーキは軽く掌で岩を叩いた後、フェイへ問いかける。


「身体強化の魔法を使って、どかせられると思うか?」

「……できないだろ」

「だよな」


 高さ一.八メートル、横幅0.八メートル、奥行き0.五メートルの四角錐あるいは水滴上に近い形をした岩をまじまじと見てフェイは答える。

 四角錐の形だと仮定してユーキは頭の中で計算を始める。


「(底面積と高さをかけて三分の一で0.七二。水と比べると岩の比重が二倍くらいあるから一.四トンか。摩擦も考えるとちょっと厳しいな)」


 魔法は万能だと思っていたが、魔法にも努力で鍛えた分だけ能力が上がるところは筋力や学力と変わらないらしい。鍛えているフェイで無理ならば破壊するしかないだろう。そう考えて、二人が反転して数歩進むと後ろから地響きが鳴り響く。

 振り返るとそこには、地面から突き出た岩の槍が先程の岩を押しのけているところだった。唖然とする二人に横から声がかかる。


「あ、勝手に動かしちゃったけど、大丈夫だった?」

「い、いや、問題ない」


 サクラの得意な岩の槍で上手く岩を動かすことができたが、ユーキとフェイは「何故、もっと早く思いつかなかったのか」という発想力の無さにショックを受けることとなった。落ち込む二人を尻目に、マリーは岩の先にあった穴を覗き込む。


「へー結構な下り坂だな。足を滑らせたら危なそうだ。塞がってたから生物がいる気配はあんまりないけどな」

「ヒカリゴケもあるから、松明がなくても安心」


 臆せず一歩足を踏み入れたアイリスは、壁の様子を見て呟いた。彼女の言った通り、壁には苔が生えていく道を照らしている。光るための要因である水もどこかからか漏れ出ていて、足場を濡らしているためか、ところどころ苔とは違う反射が目に映っていた。


「ユーキと僕が先頭を行く。危なくなったらマリーたちはすぐに引き返すんだ。近くにいる冒険者に助けを求めてくれればいい」

「フェイ。それはちょっと無理な相談だぜ」

「マリー。わかってるのか? これはもしかしたら未発見・未踏破の天然ダンジョンかもしれないんだよ」


 その言葉にマリーも息を飲む。

 今、冒険者たちが血眼になって探している未発見のダンジョン。どうして、探しているのかと問われれば、そこにはレアな魔道具や財宝が眠っている可能性があるからだ。

 しかし、それは逆を言えば誰も探索したことがない危険へと飛び込んでいくことが前提となる。()()()()()()()()()()()()()

 ダンジョンの宝に目がくらみ、数えきれないほどの冒険者たちが命を落としていったことは、この世界に生きる者ならば知っていて当然の知識だ。故に冒険者ギルドには常にある言葉が示されている。アイリスが、小さくその言葉を呟いた。


()()()()()()()()()()()()()()

「そうだ。もしかしたら、僕たちは自分の能力を超える未知の領域に潜り込もうとしているかもしれない。だから、万が一のことを考えて動かないといけないんだ」


 サクラの手が思わず胸の前に持ち上げられる。自分の鼓動が跳ねて、身が竦みそうになる体を何とか押さえつけるが、その手は震えていた。


「だけど、それでもフランさんを助けるために」

「ここに助けるための素材があるかも定かではないのに?」

「それでも……!」


 フェイはサクラの言葉に、どこか納得をできていないような顔をする。それもそのはず、お互いの勘違いがあったとはいえ、自分の守るべき人を殺されかけたという事実は消えていない。マリーたちは魔法学園で一緒に過ごすことにより、ある程度距離を縮めることができていた。対して、フェイは騎士団にいるためフランとはほとんど接点がなかったのが原因だろう。

 フェイはマリーの方を見ると、同じようにマリーも見返してきた。その目を見てフェイは苦い顔をした後、首を縦に振った。


「わかりました。ですが、危なくなったら引き返す。ここは譲りません。いいですね?」


 フェイが敬語で確認したことで、マリーもフェイの覚悟を受け止めたのか、黙って頷いた。フェイは腰から剣を引き抜いて前に進む。


「ユーキ、行こう。神の加護も緊急用の転移術式もない天然のダンジョンでは、常に最大限の警戒をしないと……死ぬぞ」

「……わかった」


 同じように刀を抜いてユーキは肩に担ぐ。人一人分の穴を潜ると、その先は明るいというのにも関わらず、ユーキたちを飲み込もうとするような大蛇の口に感じられた。一歩進むごとに壁は広がり、やがて幅は十メートルを超えるような大きなところへと変わっていく。下から吹き抜けてくるような暖かい風が頬を撫でていく。ユーキの魔眼には先ほどの薬草の群生地と変わらないような色が映っていた。

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