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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
第4巻 消えた焔は地の底に

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冥界への旅路Ⅶ

 見とれていたのも数秒で、フランに関する情報を集めるために、四人は近くの本棚一つにつき一人を担当にして見つけていくことにした。

 その理由の一つが、ジャンルがバラバラで入口に近いものほど最近の著書、奥に行くほど昔の本になっていたからだ。本を何冊か抜き出した時にアイリスがすぐに気づいていなかったら、時間を無駄にしていたところだ。急遽、予定を変更して入口から右側の二つをユーキとアイリス、左側の二つをマリーとサクラが担当する。


「吸血鬼、治療方法、あとは後遺症辺りに関する言葉がどこかに並んでればいいんだけど、題名だけじゃわからないよな。おまけに背表紙に題名ないのもあるし……」


 気の遠くなるような作業になりそうだと思いながら、一冊ずつ取り出して最初のページの数行を読んで戻していく。今までに見た数冊だけでも、魔力運用に関するもの、呪文の詠唱の言葉の違いに関するもの、召喚魔法における使ってはならない記号の組み合わせ、といった内容があったが、ヒントになりそうなものはどこにもなかった。


「『魔力侵食による人体破壊』ね。でも、これは自分じゃなくて相手に与える方法だから――――って、これレオ先生の名前?」


 思わず知っている名前に手が止まった。いつも面倒くさそうに授業している印象があるが、自分の研究はしっかりとやっているらしい。ユーキの質問に咄嗟に答えられたのも、自分の研究範囲だったからかもしれない。禁書庫に置かれる程度の研究もしている驚きと危険なことも研究している意外性に驚かされながら本を元の場所に戻す。

 さらに本をいくつか調べていくと奇妙な点に気が付いた。基本的に一冊の本で内容がまとめられているのだが、時々、何十人もの人間が脈絡なく書き連ねた、メモ用紙でも束ねたと思われかねない本が見つかる。しかも、本の題名は書かれていない。唯一の判別方法は、本の色がすべて紺色であることだ。

 ユーキは一番入口に近いところにある紺色の本の所にまで戻って手に取った。


「なるほどね。ここに入ることができた学生たちが残した()()か」


 入ることができたことだけを書き記して名前だけに留める者もいれば、役に立つ本の題名を書いただけの者もいた。中には城の隠し通路を書いてある者もいた。


「おいおい、こんなものが書いてあって大丈夫か? 処刑されても文句が言えないぞ、って書いたのがオーウェンじゃん!?」


 未来の公爵がこのようなことでいいのか、と一瞬頭を抱えるユーキだったが見なかったことにして本を閉じた。目的がずれてしまっていたので、先ほどの所にまで戻ろうとすると、ユーキの右隣の本棚から声が上がる。


「何か見つかったのか?」

「これ」


 アイリスが掲げた本の題名をユーキが読み上げる。


「『四元素を用いた人体の構成と治療方針』か」

「それで中身は?」


 後ろから駆け付けたマリーが急かすように尋ねると、アイリスは頷いた。普段の間延びした読み方ではなく、はきはきと早口で捲し立てるように読み始める。


「『人間の体は、体を土、体液を水、魂を火として構成されているが、先天的・後天的かを問わず四元素のバランスが偏っている者がいる。特に亜人と呼ばれるものは種族により、その形質が偏りやすい。例として鳥などの鳥類の特徴もつ種族は風、四足歩行の地を這う獣の特徴をもつ種族は土に偏りやすい。これは長年に渡り、生命活動を維持するために必要な構成要素の重要性が種族ごとに最適化された結果と考えられる。その最たるものは同一種族であるにもかかわらず多様な属性をもつドラゴンなどが挙げられ――――」

「――――アイリス、夢中になるのはいいけど一番肝心なところを教えてくれ」


 肝心な吸血鬼というキーワードも治療法にも触れないことに業を煮やしたマリーは、アイリスの肩を掴んで前後に揺らし始めた。


「ま、マリー。今、アイリスが読んでるんだから邪魔しないようにしないと」

「そぉのぉとーりっ!」

「お゛っ!?」


 アイリスがいつもの口調で揺られながら、マリーの脇腹へと指先を突き入れた。思わずマリーの口から貴族の女子が出すとは思えない、呻き声が上がる。


「ここからが本題。黙って聞く」

「お、おーけー。続けてくれ」


 脇腹を押さえてプルプル震えるマリーを尻目にアイリスは続きを読み始めた。


「――――特に対人間において危険な特徴を有する存在も場合によっては治療、或いは無効化が可能と考えられる。例としては満月の狩人たる狼人間、生ける屍たるグールやゾンビ、そして()()()()()()()()』」


 ついに求めていた言葉がでたことで全員の目が自然と開かれる。アイリスは本に挟んでしおり代わりにしていた指を動かして数十ページ一気に捲ると続きを読み始めた。


「『夜の支配者たる吸血鬼の特徴は、体液を啜って魔力を得ることである。これは体液たる水の属性が劣っていて、それを欲するために吸血するとも考えられるし、逆に水の属性に優れているために魔力の吸収効率がいい吸血を行っているとも考えられる。これは実際に皮膚や髪、体液などを調査しないとわからない』」

「確かウンディーネは地の属性に欠陥があるって言ってたよな。魔力が保持できないって」

「でも、それが体液を通して魔力が漏れやすいってことなのかな?」


 以前から得た知識と少しずつ一致する部分が見え始めた。そして、アイリスの読み上げる文章はついに核心となる治療の内容へと入っていく。

【読者の皆様へのお願い】

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 今後とも、本作品をよろしくお願いいたします。

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