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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
第22巻 からくれなゐに染まる腕

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怪僧Ⅱ

 橋の上で城壁の向こうにまで届くような声で告げた勇輝に、対応した者が浮かべた表情は困惑であった。


「あの巫女長の曾孫……? そういえば、一ヶ月前にそのような話を聞いたな。しばし、待たれよ。城内に使いをやろう」


 そう告げると男は一度、背を向けて元の位置に戻ると、部下と見られる平服の男を中へと向かわせた。

 距離が開いた状態で互いに気まずい時間が流れるかと思われたが、先程の男が再び歩み寄って来る。今度は彼自身も橋まで歩を進めたかと思うと、そのまま勇輝の目の前にまで近づいた。


「君があの巫女長の……かの土蜘蛛退治を成したという青年か」

「あ、いえ、別にそんな大したことは……それに倒したのは自分だけの力ではありませんし……」


 この国に来て早々、身柄を拘束され、水姫の前に案内されたかと思えば、急に客人待遇になり、数日も経たぬ内に封印されていた土蜘蛛を退治するという忙しない日々が脳裏を駆け巡る。

 土蜘蛛を退治したという感覚は勇輝にはなく、実際には、土蜘蛛を取り込んでいた僧侶と一騎討ちで倒したという認識であった。


「その件について礼を言おう。あの土蜘蛛が襲った宿場町には私の祖父母が暮らしていてね。おかげで、先日も笑顔の二人に出会えた。君がいなければ、二度と二人には会うことが出来たかっただろう」


 そう言って、男は深々と頭を下げた。


「何か私に出来ることがあったら言ってくれ。その時は微力ながら力になろう」

「だ、だから、俺は――――」

「勇輝、その言葉は受け取って置け。そうでなければ、下げた頭の上げ所が彼も見つからないだろう」


 僧正がやんわりと断ろうとした勇輝に忠告する。

 頭を下げるというのは、それだけの意味がある。それ故に、軽々に断ってはならないのだ、と。


「――――わかりました。では、困ったことがあったら、声をかけさせていただくかもしれません。失礼ですが、お名前を伺っても?」

「渡部一慶、と」

「わかりました。では、その際にはよろしくお願いいたします」


 勇輝も礼をして、互いに視線を躱すと、一慶の背後から声がかかる。


「渡部殿。巫女長が中に通しても構わぬと、連れの男が術に反応するかもしれないが、それも構わず通せとのことです」

「何? となると、この男は――――」


 何やら胡乱気な目で僧正を一慶が見ると、僧正はしばし考え込んだ後、何かに思い当たったのか。小さく声を上げた。


「あぁ、もしや、城の結界に妖を察知する類のものでも増やしたか。それならば、その反応も致し方あるまい。我は雛森村に住む天狗だ。平塚張継とも顔見知りなので、危害を加えるつもりは一切ない。むしろ、お主たち人間の協力者だと思ってくれればいい」

「な、なるほど、あの元剣術指南役の平塚殿とお知り合い……。まさか、時々、城で噂になる赤鼻の天狗とはもしや――――」

「断じて違う」


 勇輝も見たことがある僧正と同じ烏の顔をした天狗。お節介焼きで朝の素振りの最中に指導をしてくれたこともあるが、僧正と違ってアレはお面のようだった気がする。僧正と初めて会った時の反応からするに、この城の天狗を知っているようなそぶりがあったが、もしかすると僧正の知り合いなのかもしれないと勇輝は考えた。


「さ、左様でしたか。で、では、お急ぎの用事とのことでしたので、どうぞ中へ」


 一慶が橋の脇に退いて、二人に道を開ける。

 歩き始めた二人の後ろをついて来るのを見て、僧正は思い出したように問いかけた。


「どこかの封印塚に綻びがあると聞いたが、それについて何か知っておるか?」

「聞いた話では北御門領の山にあるということくらいしか聞いておりません。そもそも、その話も本当に封印塚がどうなっているか、などというのは、巫女や僧侶などが北御門領に集結しているのを町民たちが騒ぎ始めてから、我々も知ったくらいですので」

「そうか。下らぬことを聞いたな。忘れてくれ」


 雛森村を治めている張継の下に届いた連絡は間違いなどあるはずがない。そうなると、この件はまだ一部の者にしか情報が与えられていないことになる。僧正は、これ以上聞いてもわからぬと判断したのだろう。早々に話を切り上げて前を見ていた。

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