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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
第4巻 消えた焔は地の底に

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奨励任務Ⅵ

 場所は戻り、冒険者ギルドのレストラン。そこでユーキは困惑していた。

 それもこれも、目の前にいる二人がすごい剣幕で火花を散らしているからだ。


「こんなところで会うとは奇遇ですね。()()

「あら、おぼっちゃん。お勉強はしなくて大丈夫かな? 冒険者ギルドは遊ぶところじゃないから、さっさと帰りましょうねー」

「一度、その頭ぶった切りたいと思ってたんですが、試し切り良いですかねぇ」

「そんな鈍らまだ使ってたんだ。さっさと研いで台所で使った方がよかったんじゃないの?」

「脳筋女にしては、台所なんて単語知ってたんですね。ちょっと驚きました」


 ミシリッ、とテーブルを中心に魔力がぶつかる音が響いた気がした。ユーキが周りを見渡すと、他の冒険者も飲み物や皿を持って、遠くのテーブルへと移動している。

 二人の背後にまるで二匹のドラゴンが幻視できるくらいには、オーラが噴き出ていた。魔眼を開けば間違いなく、眼が痛くなるほどの光量であるのは容易に予想ができる。


「まぁまぁ、二人とも落ち着いて。周りの人の目もあることだし……」

「それも……そうだな」

「これだから、ボンボンのおぼっちゃんは困るんだよね。で、ユーキ。注文、何にする」


 オーウェンが言い返そうとしたところに、クレアは話題をユーキへ振って言い逃げをする。見なくてもオーウェンの額に血管が浮き出ているのがわかったユーキは、できるだけ目を合わせないようにした。


「えっと、とりあえず『本日の魚のムニエル』と『ブロッコリーのパスタ』で」

「じゃあ、あたしは『ソーセージ盛り合わせ』と『マッシュポテト大盛り』。あ、食後のデザートも」

「……『フィッシュ&チップス』と『スコッチエッグ』を」

「あんたは自分で頼んできたら……?」

「さっきから言わせておけば……」

「大丈夫です。私が頼んできますのでお待ちください」


 いつの間にか生徒会副会長のエリー・ベイリーがオーウェンの後ろに佇んでいた。


「ふ、副会長。お、遅かったじゃないか」

「エリーです。依頼が終わって、シャワーを浴びたら待ち合わせの場所にいないじゃないですか。心配して探していたらナンパしてるだなんて、少し会長を見損ないました」

「い、いや。この女とはそういう関係ではないと言っているじゃないか」

「冗談です。ですが、私を放っておいたのは事実なので、後で覚えておいてくださいね」


 先程まで、珍しく怒っていたオーウェンが意気消沈し、素直に頷いていた。人間関係が複雑すぎて、ユーキは半分考えることを放棄したくなる。


「あ、デザートは四人分で食後の時間差でね。おつりは結構よ」

「わかりました」


 大銀貨一枚を指で弾くと慌てることなくエリーは受け取った。渡したのはクレアだが、その出所はユーキであることを忘れてはいけない。

 エリーが注文をしに行く姿を見届けて、ユーキはオーウェンに尋ねた。


「あんまり、聞くもんじゃないとは思うんだけどさ。オーウェンとクレアってなんでそんなに仲が悪いんだ?」

「よくぞ聞いてくれた。話せば長い話になるんだが――――」

「要はね。あたしが生徒会長で好き勝手やった後の始末が面倒になっているから、八つ当たりしてきてるの」

「――――私の話を端折るな!」


 興味本位で聞いた自分を恨みながら、ユーキはすかさず二人の間に割り込んだ。それ以上深く聞こうとすると間違いなく揉めるので、エリーが戻ってくるまでの間、二人をなだめることに全力を尽くすことにする。


「会長? 周りの迷惑なので座っててくださいね」

「う……!?」


 エリーに弱みでも握られているかのように、即座に座りなおすオーウェンにクレアも怪訝な顔をする。

 そんなクレアの目の前にエリーは座ると頭を下げた。


「生徒会長がご迷惑をおかけしています。副会長のエリー・ベイリーです」

「こちらこそ、色々と迷惑かけちゃってるみたいでごめんなさいね」

「公爵家の長男である以上、それくらいはできるようになってもらわないと、ですね」

「ちょっと待ってくれ。いつから私の親ポジションになったんだい?」

「会長を補佐する以上、常に先を見据えて行動しないといけませんので」


 クールビューティという感じが似合うエリーがジト目でオーウェンを見る。いつもは一歩後ろに控えるエリーに言われたことが少ないのか、押されている印象を受けた。


「あれ? 他の生徒会の人はどうしたんですか?」

「私たちはプライベートでペアで活動をしているのです。別に生徒会はそこまで生徒のつながりを拘束するものではないからですから、ね」


 一瞬、微笑んだエリーだが、ユーキの背筋に悪寒が走る。まるで、「それ以上言ったらわかってますね」とでも言わんばかりの笑みにしか見えないからだ。

 脳裏に裏でオーウェンを独占するために裏工作に勤しむ、無表情のエリーを想像できてしまい、ユーキはそれ以上詮索するのはやめることにした。

 それ以降の話は和気藹々としたもので、どの料理がおいしいだとか流行りの依頼は何かだとかを食べながら話をしていた。


「あ、これかき氷じゃん」


 食後に出てきたデザートがかき氷だったせいで、そこから話が膨らんで長々と居座ってしまうことになった。彼らが冒険者ギルドを出たのは入ってから二時間後のことだった。

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