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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
第3巻 白銀の来訪者

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内通者Ⅳ

 出発してからというもの、ユーキたちは疲れと緊張で口数が減っていた。唯一、ワイアットが場を和ませようと話しかけてくれたが、その度に頭を叩かれて意気消沈していく。

 影法師が長くなり始めたころ、マリーが口を開いた。


「お父さんがよく言ってた。一番警戒をしなきゃいけないのは夜明けと日没だって」

「真夜中じゃなくて?」

「目が暗闇や明かりに慣れてない時間帯を狙うんだってさ。だから、ほら松明の準備も結構早くやるだろ」


 周りの騎士たちが明かりを灯す準備をし始めていた。町には少しばかり時間がかかる。このまま順調に進んでも夜になるのは明らかだった。

 サクラやマリーも松明に魔法で火を灯す。ユーキも松明をつけようとして、何気なく森の方を魔眼で見た。


「(――――いる!)」


 以前に見かけた赤と青の光が森の中に紛れ込んでいた。動きも不規則で、一度に素早く長距離を動くことも有れば、ゆっくりと歩くような速度で着いてくるようにも見える。


『そういえば、さっきのゴーレムで気付いたことがあったんですけど。ユーキさんの結界、ゴーレムの再生機能と似ているところがあるんですよね』

「え、なにそれ?」

『一定の魔力を地面から吸い上げて、自動的に防御するっていう感じなんです。この前の試験のような魔法みたく低威力を持続される分にはある程度大丈夫です。でも、狙撃のような一点集中型は防げて一、二発程度。魔力が溜まるまでは機能しない可能性があります』


 どう見ても炎の柱は低威力には思えないのだが、勇輝はその考えを喉元で食い止めて、彼女の話に耳を傾ける。


『ちなみに今の結界の状態は……』

「そうですね……。容量の半分以上はあるかと。見かけによらず意外と威力は低かったみたいです」


 ユーキの魔眼は足元にある二重の円を見つけるが、その光はけして強いとは思えなかった。森から目を離した数秒。ユーキの耳に聞き覚えのある風切り音が突き刺さる。


「まずっ、狙撃!?」


 ――――スパアアァァァンンッ!


 今朝と同じ風の魔法が炸裂する。その標的はユーキでも馬車でもなかった。

 ユーキたちが馬車の左側へと回り込むとエリーがしゃがみ込んでいた。その傍らにはオーウェンがうつぶせに倒れている。


「会長! 大丈夫ですか、会長!」

「んだよ。狙いはこっちじゃなかったのか?」


 アランが森に向かって身構える。他の騎士たちも集まってくる中で、森からの追撃はまだなかった。オーウェンの様子を見ると出血はないものの頭部を打ったのか。口を動かそうとするも声になっていなかった。

 オーウェンの周りを盾で囲い、森に向かって牽制射撃が撃ち込まれる。今のところゴーレムが出現する様子もない。

 隊長が止めの合図をかけるが、森からは一向に反撃の気配がなかった。それでも、ユーキの魔眼は赤と青の二色が森の中で潜んでいるのが見えた。





 全員が森の中へと意識を巡らせる中、一人だけ魔力を纏ったまま顔だけ振り返る者がいた。馬車との彼我の距離は魔法を使えばゼロにも等しい距離。数にして十メートル弱。

 油断すれば魔法で()()()()にされる。騎士団を盾にしていても場所次第でいくらでも狙撃できる範囲だ。

 勝負は一瞬、細心の注意を払って音を立てないように振り返る。体重を前へとかけて踏み出す。その僅か先へ破裂音と共に土煙が舞った。


「どこへ行くつもりですか? ()()()さん」


 ゆっくりと顔だけユーキに向けたアレンの額には青筋が入っていた。瞳孔は開かれて、自分の姿が映りそうなくらいだ。


「てめぇ、どこ狙ってやがる?」

「聞こえませんでしたか? どこに行くつもりかと聞いたんです」

「決まってんだろ。馬車を守りに行くんだよ」

「流石ですね。ぜひ、ゴーレムを吹き飛ばした一撃でどう守るか教えてください」


 ユーキの魔眼でなくても、その魔法は見ることができた。アランの右拳には、夕日に照らされて輝く炎が揺れていたのだから。

 怒りから一転。呆気にとられたような顔を見せたアランは不敵な笑みを浮かべると、紅蓮の拳を握りしめる。


「そうか。じゃあ、覚えていきな。さっきの技には、な。こういう使い方もあるんだよ!」


 踏み込みすらせず、その場で腕を突き出すと炎が曲がることなく馬車へと突き進んでいく。演習場でユーキを包んだ火柱とは違い、炎が紅蓮から黄色へと変化する。その温度は三千度近くに達していた。

 騎士の誰もが馬車へと駆け寄ろうとするが間に合わない。唯一、隊長が追い付きかけるものの、振るった剣が炎を僅かに抉る程度だった。

 腕を振り切ってアランは勝利を確信する。一秒もしない内に馬車へと着弾し、中身ごと燃やし尽くすはずだ。

 ()()()()()()()()()()ことだけに、思考よりも感覚で理解できてしまう。

 だからこそ、その炎が一瞬で消し飛ばされるとは思っていなかった。

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