双龍Ⅱ
「では……そうですね。ファンメル王国で話題の『魔王の居場所』というのはどうですか?」
「な、に……!?」
勇輝と桜の心臓が跳ねる。
現在、ファンメル王国には託宣を受けた聖教国サケルラクリマの聖女が、勇者を探しに訪れている。その目的は、恐らく復活するであろうとされている魔王を討伐するためだ。
既に魔王の配下であった種族が出現したということもあって、魔王の復活はほぼほぼ確実視されているが、その居場所どころか魔王の姿かたちすら明らかになっていない。
「――――どうして、そんなことをお前が知ってるんだ?」
「どうして、と言われても、そういう結果が出たからとしか言えません」
小龍は肩を竦めて勇輝をまっすぐと見返す。
そこには一片の曇りもないようで、嘘をついているようには思えない。勇輝は考えを巡らせ、大龍との出会いを思い出した。
「もしかして、そいつと同じで占いか何かで場所を見つけ出したのか?」
「あぁ、わかってしまいますか。そうです。星神の託宣に比べれば信用度は落ちるでしょうが、占いで嘘をつくのは嫌いなんです。兄もきっと色々とやらかして、そんな目に合っているんでしょうけど、占い自体の内容には嘘は言いません。ただ、自分に都合のいいように捉えがちなんです」
「あ、やっぱり、そうなんだ……」
先程、桜が本人に向かって言ったことと同じことを小龍が口にする。身内の言葉ということもあり、大龍が占いを都合よく捉えてしまうのは今回だけではないようだ。むしろ、日頃からそのようなことをしていた疑いまである。
「おい、ちょっと待て。魔王って単語に面食らっちまっていたけどな。当たるも八卦、当たらぬも八卦と言うだろう。お前さんが本当だと思っていても、外れることだってあり得るのは考えればわかるだろ!」
隆三は何とか魔王の存在を一度は受け入れて、小龍に反論する。彼の言う通り、神の関わる託宣と自分だけで行う占いでは文字通りレベルが違う。加えて、前者は世界でもただ一人の聖女。一方は蓮華帝国とはいえ、たかが一国の数ある貴族の内の一人に過ぎない。その情報が正しいという保証はどこにもないのだ。
「それはそうですね。でも、これくらいしか自分には提供できる情報がありません」
『小龍の占いは主以上に的確なことは我が保証しよう。付け加えるならば、今の情報は一応、当主殿には他言無用と言われていた内容だったはずだ』
青龍が小龍の隣に降り立ちながら弁護する。少なくとも、青龍の言っていることが本当ならば、当主が禁ずるほどということで信憑性が少しは出て来る。
そして、勇輝は隆三との一騎打ちで約束を律義に守ろうとした青龍は信じるに値すると感じていた。
「隆三さん。ここはその情報と交換でもいいですか?」
「……一番の被害者はお前たちだ。それが良いっていうなら、それを止めるほど野暮じゃない」
四方位貴族として隆三が打てる手は色々とあるのだろうが、今この場において、隆三は勇輝の判断を優先した。もちろん、この後はギルドから兄へと緊急の連絡をしなければいけないことは確実であるが、こと魔王という話題は、隆三も聞き逃すわけにはいかない立場だ。
「後は、私たちにあまり関わらなければ……、また近づかれたら何するかわからないし」
「可能な限り希望には答えましょう。兄も一度、国に帰らなければいけないので、少なくとも、今年中に会う機会はないでしょう」
「できれば、一生でお願いしたいところだ」
勇輝が皮肉を言うが、小龍はあまり気にしていないようだ。
「それで、魔王の居場所の情報と兄の身柄を交換ということでよろしいですか?」
「……あぁ」
勇輝は一呼吸おいて、静かに小龍に答えた。
それを聞いた小龍は、少しばかり表情が和らいだように見えた。
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