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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
第3巻 白銀の来訪者

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杖交わるも多生の縁Ⅱ

 先ほどまでだらけていた顔が引き締まり、その目には天の太陽よりも輝く炎を静かに宿す。周りの者もその気迫に声をかけられない。


「調達……材料費……人材……需要と供給……」

「あ、あのー。フランさん? どうしました?」

「大銅貨五……いや、銀貨一枚? 流石に……いや、でも……」

「えーと、そろそろ帰ろうかと思うんだけれど……」

「みなさん!」


 椅子を吹っ飛ばしかねない勢いでフランは立ち上がると大声をあげて振り向いた。

 その瞳に宿る真紅の炎は、いつの間にか金貨が張り付いたかのような輝きに変わっている。後にユーキたちは語る。「金の亡者という言葉は、こういう顔をしている者に使うべきなのだ」と。


「その甘味。今から作りませんか!」

「暑いのが解決できるのなら、何でもいいー」


 アイリスは片手を肩まで上げて賛成を示す。その隣ではマリーが腕を組んで反対の姿勢だ。


「作るのが大変じゃん。余計に暑くなりそうだからパスー」

「私はつくってみたいなー」

「えぇ、サクラも賛成なら、あたしだけ帰るのもなんだかなぁ……」


 マリーが仲間外れを嫌がって考えを翻していると、ユーキの後ろでボソリとフランの声が聞こえた。

 曰く、「パトロン&人員ゲット!」である。

 この意味が分かるのは、数時間後であった。

 フランに背を押され、教室を出て寮へと直行する。相変わらずマリーは入室を拒むので、サクラの部屋へと自動的に集まることになった。


「えーっと、果物って……イチゴとミカンならあるけど……」

「あれ、この暑い時期にできる果物だっけ? しかもこの気温で保管できる?」

「うちの学園の植物園は一年中を通して収穫ができる果物を作ってるんだって。今はそれを穀物に応用できないかって研究をしてるらしーぜ。後は備え付けのアイスボックスに入れておけば大丈夫。こんな高価なのが備え付けてある魔法学園は、冷静に考えると異常だよな」

「発売された当初は金貨六枚必要だった」


 科学ではなく魔法の力で品種改良を行う異世界の不思議さに感心させられるユーキだが、すぐに意識はフランの方へと戻される。


「それで、作り方というのは……!」

「俺の記憶だと氷の塊をこう刃物でスライスしていくんだけど……。こっちの国にはあるかな?」

「刃物でスライスというと……鰹節みたいな?」

「そうそう、そんな感じ」


 アイスボックスの中身を確認し終えたサクラが首をかしげながら問いかける。想像以上に知らないものを言葉だけで伝えるというのは実際に難しい。ましてや、文明レベルが根本的に違うというか。ベクトルが違ってしまうと先入観のせいで余計にわからなくなるものだ。

 そういう意味では、サクラの言葉は渡りに船ともいうべき言葉だった。


「魔法で薄く切り裂けばなんとかできそうかしら」

「集中力が必要そうだな」


 みんなで食べるためにいろいろと方法を考えて出していくがなかなか決まらない。一番の課題は氷をいかにスライスするかというところだった。その内、時刻は正午を回り、お昼時となったため、第一回かき氷制作会議はお開きとなった。


「もうさ、ここまで来たらあたしの家で涼もうぜ。今日は騎士団も午前で上がって、フェイもいるしさ。そのまま明日までお泊り会ということで」

「賛成」


 満場一致で女性陣は決まるが、こういう時に紅一点ならぬ黒一点、疎外感というか居辛さを感じてしまうのは、かつての自分があまり女性と関わってきたことがないからであろう。

 

「ほらほら、さっさと歩くー」


 空気を読んでサクラとマリーが背を押してくれるのが、ある意味救いでもあった。

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