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極彩色の世界Ⅰ

現在、スマホで読みやすくするために、お試しで改行を多めにする作業をしています。まだ、改行がされていないページが多くありますが、どうぞご承知おきください。

 暗闇の中から死神の口笛が聞こえる。


 それは矢が空気を引き裂いて飛ぶ音だった。高速で飛来したそれは若き青年の黒髪を掠め、地面へと突き刺さる。舌打ちのような音と共に土が捲れ上がり、遅れて青年の心臓が大きく跳ねた。



「一体、何なんだ!?」



 街灯どころか電線すらない村の入り口にいるのは、雇われた冒険者の男女二名と青年のみ。それ以外の人々は反対方向の防衛に向かってしまって、もぬけの殻と言ってもいい状態だった。


 その場での快楽しか考えられない低俗な魔物の筆頭であるゴブリンが、まさか陽動などという作戦を実行してくるとは誰も想像していなかったらしい。



(どうして、こんなことになった!? 昨日までは普通に飯を食って、ネットを見て休暇を満喫してたはずなのに!?)



 ゴブリンの恐ろしさは奇襲と人数だけだと村人は語っていた。若い男ならば木の棒一つでも戦えるだろうと言われて協力を申し出たが、青年は話が違うと叫びたい気持ちでいっぱいだった。


 敵が飛び道具を使ってくるとは聞いていない。ましてや飛んで来る矢には麻痺毒が塗られているなど誰が想像するだろうか。青年より圧倒的に戦闘経験のある槍使いの冒険者は、掠めた矢によって既に地面に倒れ伏している。


 髪を振り乱して駆け寄った女性の魔法使いが治療を施そうとするが、それを妨げるかのように矢が飛来した。辛うじて動くことができた槍使いが突き飛ばすことで被害を最小限に抑えることに成功する。だが、状況は最悪のままと言っていい。


 敵の姿は見えず、何体いるかもわからない。ただ一方的に暗闇の向こうから攻撃が加えられ、青年たちは狩りの獲物同然の扱いであった。



(このままじゃダメだ――)



 青年の握った木の棒では、どこにいるかもわからない敵を倒すことなど不可能。それも弓矢が相手ともなれば、さらに難易度は跳ね上がる。村人を呼びに戻ろうと考えるも、戻って来るまでに冒険者の二人は間違いなく殺されるに違いない。


 青年は頭の中に考え得る限りの対処法を浮かべてはみるが、そのどれもが瞬時に消えて行く。同時に胸中を絶望がじわりじわりと侵食していた。


 それでも、わずかに残った願いは膝が地面に着くことを許さない。何としてでも、この二人を――背後にある村を守ってみせる。かつてそうなりたいと憧れた物語の主人公のように。


 青年は頭に激痛が走る中、目の前に広がる暗闇の向こうを睨みつける。



(――せめて、敵の位置だけでもわかればっ!)



 そう考えた次の瞬間、立ち竦んでいた青年、内守勇輝の視界いっぱいに広がる暗闇が――反転した。

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