ラブコメの波動がサムズアップ、ギモーヴを大量食いした様に甘くて砂吐きそうです
マニ姫のカザン国で錬金の日々に、攻略対象者達が来た。
「紅茶の時間ですわ。」
甘い物が大好きなマニが、料理スキルを二に上げてまで頑張った。
それはお菓子作りで有る。
砂糖はこの世界でも高額なレアアイテム。
さとうきびメープル蜂蜜甜菜甘芋とか採取出来る物はこの世界に存するのだが。
それらからの取り出し方などマニの薄い知識で知る由もないし、道具も無いから早々と諦めた。
確実なのは蜂蜜の巣箱を作った蜂蜜作り位だが、虫に触れる訳も無く。
箱だけ組み立てて、花を植え。
ゼファー達に蜂蜜は取ってもらって居る。
神様のチートで色々出してもらえ?
そんなの折角の異世界だと言うのに、有り難みが無くなるじゃ無いか。
前世と違う世界を楽しみたいなら、無い物は諦めるか自作するしかないのですよ。
前世の知識は有る意味ズルだしね。
まぁ、大半は買って来た物を使うのだが。
甘い物が大好きなマニの、冒険者に成り立てお財事情などたかが知れて居る。
なので、コンビニやスーパーの有った前世や、王宮に居た頃のような贅沢はし無いし出来なかった。
試行錯誤して、保存も効くクッキーやギモーヴ(マシュマロ)やプリンを作る。
材料に余裕があればマカロンなども作ったりした。
フルーツを練り込むそれらは、とても甘い。
保存料の無い世界では、砂糖や塩やハーブは早い腐敗を遅らせる作用がある。
長期保存したかったら、大量に砂糖や塩を入れるしか無い。
まあ、だからこそ。
大量には食べられ無い高カロリーとなる。
本当は、ショコラを食べたいのだが。
あれは数が少なく、手間が掛かり過ぎて庶民には手が出無い価格だ。
年に一度食べられれば良い方だろう。
優雅にティータイム。
はふっとティーカップを置くと、神様と龍の二人は困惑顔になって居る。
まあ、私の現実逃避に呆れて居るのだろう。
先程から、イケメンが三人程、地面にぬかづいて、なんて言うかウザい。
分かりやすく言うと、攻略対象者が土下座しながら、申し訳ない事をしたと何度も謝罪しているのだ。
その美貌を悲しげに、まるで捨てられた仔犬の様な姿である。
てか、こっちの。
「もう過ぎた事です。」
と言う言葉は無視して謝られても、ね?
それ謝罪なのか?
消えたマニは、こんな阿呆達の所為と自業自得で消えたのか…ヤレヤレ。
隠れ住むこの地の事も、何処から漏れたのやら。
ああ、パニマ神殿の、総本山に居る神官の御告げですか。
生暖かい目でパニマを眺めるが、知らんフリを決め込んでいる。
反省した者には、優しい神様だこと。
ふと気付いたのは、元婚約者は居なかった。
それ程嫌か?
とか思ったのを察したのか。
彼はあえて連れて来なかったと言われた。
まあ、存在が既に地雷な扱いだしな。
一人は赤髪ショート脳筋騎士ヤーゼフ、庶民上がりの実力派。
一人は青髪ロングのツンデレ魔法使いサリバ、侯爵三男坊。
一人は緑髪おかっぱの泣き虫ショタ司書エイゼフ、伯爵次男。
来なかったのは、銀髪の王子様的風貌の元婚約者。
喋らなければイケメンの腹黒、ギルシュ、公爵長男。
ちなみに、パニマやゼファーは隠れキャラでは無いのですが。
主人公がまともなら、お助けキャラとして登場する。
うんダメたったねヒロインちゃん。
ちなみに淫乱ピンクなヒロインちゃんは、ローズピンク色の艶やかでふわふわな髪の、チェルナと言う男爵の妾腹の娘で、無事に終わって居たらとんだ下克上である。
まともなら、友達になりたかったなあ。
ゲームやって居た時は、ザ、ヒロインって感じで健気で明るく元気な頑張り屋で、ともかく可愛いかったんだよ彼女。
少し遠い目になる。
まぁ、乙女ゲームをベースにしたので、似たような展開にはなっても。
まるで同じ工程にはならないとパニマは前言って居た。
だから今ヒロインもマニの前人格も、王家も消えた世界だ。
私もマニでは有るから、龍子がマニを乗っ取った訳ではないのだが、初めは少しだけモヤモヤした。
パニマ達の愛の言葉も、攻略対象者達からの謝罪も。
龍子への物ではないと思ってしまうのだ。
又来ますと言って彼らが立ち去る。
ぼんやりとそれを見送って居たら、ゼファーが頭を撫でてきた。
パニマは、少しだけ罰が悪そうにこちらを眺めて居た。
この世界の生きた証が何も無い。
記憶が有るが、何処かフワフワ。
私と言う異世界の魂には、この世界に慣れる為の下準備が足りて居ないまま転生させた。
不安定さは、その反動らしい。
いずれ慣れるそうだ。
ぼんやりと、錬金調合作業に移る。
今は誰とも会話したく無かった。
そんなこんなで、錬金調合スキルが、レベル四に跳ね上がっていた。
暫くして、三人の攻略対象者達が、私の家の近くに移り住んだ。
何故か錬金調合を手伝い始めたのだ。
彼等も国に居場所が無かったのか、ヒロインちゃんに執着したのは、心の居場所が欲しくてだったようだ。
私の側に居ることにしたのは、ただ謝るだけで無く。
逃げるのを辞めて、まず私に行動で尽くして反省を行動で示して行く事にしたらしい。
時々私の作った錬金アイテムを、言い値で買取りしたり。
錬金材料を届けてくれたりしてくれた。
そのうち、ポツポツと挨拶から始まり。
軽く会話を出来るようになって行った。
元々スペックは高いから。
真面目にコツコツやっていれば、色々失敗しなかったのだろう。
彼等は嫌な思い出の有る祖国に、私を無理矢理帰還させようとはし無かったし。
彼等も帰りたがらなかった。
だが、私は気がつかなかったんだ。
調合で集中する私に、彼等がいつしか見惚れていた事を。
後日、ここを引き払う頃には、ラブコメの波動がサムズアップを始めて居た。
「今日も麗しいですね、このマカロンのようにマニ姫の唇は甘いのでしょうか?」
「マニ姫は、ギモーヴみたいにとても柔らかそうだね?
触れてもいいかな?」
「努力家のマニ姫が、健気に作業する姿が、とても麗しくて。
僕はずっと貴女を眺めて居ても、全く飽きないんだ。
側で見て居ても良いかな?」
カハッ!血反吐。
お前ら反省何処か捨てたのか?
早いな。
お前らがデレて来る要素、一体いつ有ったんだよ⁈
私全然分からないよ。
ああ、全く厄介な。
パニマとゼファーでも手一杯なのに、何で増えたし!
これ男主人公なら、スカートの中に頭を突っ込んで、パンツの中まで入り込んだ相手が惚れる位可笑しな補正事態ですよ。
彼等が帰った後、私はしつこくされたく無いので。
住処を残し中身を空にしてから、パニマ達と別の場所へと転移した。
パニマもゼファーもライバル増加は歓迎したく無いらしく、即座に賛成してくれたのだ。
ヤレヤレ、なんで悪い事して居ないのに逃亡生活になってんだ?
ああ本当、イケメンが残念過ぎて自身の男運の悪さを呪うしか無いな。
辿り着いたのは、何と海が荒れ狂う無人島でした。
まさかこんな離島に、勇者様が紛れて来てしまう事を、私は知る由も無かった。
うん、ラブコメの男主人公は、何も無いフラグすら、スカートのパンツの中に入り込む、まさにぴたごらだね。
さて、イマイチシリアスになりきれ無いマニちゃんですが、次は勇者様が来るって。
召喚勇者かな?異世界で産まれた勇者かな?
又気が向いたら書きますね。
ギモーヴは、フランス語でマシュマロの事です。
ケーキ屋さんのギモーヴは、フルーツ練り込んでたりしてカラフルですが。
砂糖がチョコレートや生クリームを真っ白にする程入れると言われて居たフランス菓子のお約束。
激甘です。
日本のギモーヴはそれなりにあまいです。