【閑話】ショタショタナイトフィーバー!初恋は海を越えて
海はいいねぇ
「はぁ、母上も父上もすぐ無茶振りするんだからぁ…うぅっ、酔って来た。」
フラフラと豪華客船の甲板で、船酔いで真っ青になりながらルカ・ラル・ウエスティア。家族か婚姻者だけが知る事になる隠し名前は、ルカリオーラ・ル・ウエスティアだ。
もっとも、婚姻なんて婚約決まっても当分先の話だけどね。
因みにウエスティア皇族の婚約は15歳で確定。
なので、今いるのは候補だが、側室腹だと縁談話はとんと少ない。
来ても母上が握り潰して居るのもある。
ボクを恋愛結婚させたいらしい。
多分父上がゴリ押しOKしてくれない限り、立場的に恋愛結婚は無理じゃなかろうか?
「でも、思うだけは…自由だよね?」
ルカ皇子は、遠い空の下のマニを思い浮かべ、ぼんやり海を眺める。
気を取り直して今回の事を考える。
「外交なんて年上の成人した兄弟達とか、もっと相応しい立派な方々を連れて来れば良いのに。
何で成人前のボクを他国に連れ出すんだろう?」
ハッと顔を上げ、別の意味で益々青ざめる。
「…用済み?とか?
やだなぁ、人質的な交換留学とかも困るけど、本当ボクじゃ消しても帝国的に痛くも痒くもないぞ?」
溜息を吐きながら小声で呟くルカの言葉は、波の音に飲み込まれて周囲には聞こえてはいない。
尚、側室な母と皇帝父はルカを連れた少ない機会で、ルカの海外研修と家族旅行で知らない世界に触れさせる為に連れ出した、まさに愛の親の心子知らず状態。
皇帝は特に公務には正室を連れて歩く決まりがある。
だが、今回正室である皇妃は妊婦になっており、代わりに側室な母が元外交官時代の手腕を考慮され付いて来たのだった。
ぶっちゃけルカは完全なるオマケである。
ついでに言うと、父皇帝はとんでもなく女性に手が早い。
しかし、母は他の側室達と違い、目の届くところの浮気には厳しかった。
なので、多分同腹の弟妹が増えそうな予感しかしない長旅である。
何故こんな海上を旅することになったのか?
事は一月前に遡る。
ウエスティア帝国の上位冒険者旅団グループ
[エリシオン]
地球の転生者で固めた旅団だが、知って居るのは記憶のある当事者とパニマ神だけ。
前世の死亡原因は、事故による集団での死亡だ。
特に仲良しグループで固まっていたため、皆んなで同じ特典をパニマに頼んだのである。
転生特典で、彼らは凶悪な敵には存在が認識されない為、行動制限が少ない。
又、パニマの世界の知られざるマッピングと大冒険をして居る。
能力値は冒険者としてはそこそこ高いが、パニマ絡みの世界の危機的なトラブる解消などの対応能力はつけられて居ない。
一般人以上チートなマニ以下。
なので、マニ達主要なメンツとは出会ってないか、ニアミス連中である。
彼等も虫の知らせと言うか、何となく荒事になりそうなフラグスルースキルが高いのだと思われる。
ただし、ある意味チート転生者達にとっては、全ての土壌を作り上げてくれる先駆者で、縁の下の力持ちポジなので、モブとか言って侮ってはいけない。
そして勿論ルカは転生者云々の話は知らないし、冒険者にも詳しくは無かった。
そんな旅団[エリシオン]が、新たな大陸フィラメントと、そのダンジョン地下都市バワーズを発見した報告がルカ皇子にも届いた。
数世代昔に国交が開かれて居たらしいが、その頃はこことあちらの大陸は分かれて居なかったらしく。
太古の大地震の地殻変動だか神々の戦闘の余波だかで大陸フィラメントは隔離されるように大きく離れたと言う神話があちらには伝わって居るそうだ。
こちらだと、あっという間に海に飲み込まれて消えた地域の話が神話に辛うじて残って居る位だろうか?
もっとも、それっぽい設定を付加してパニマが世界を作ったので。
現地の人にとって、本当の経緯なんて神のみぞ知る、であった。
バワーズと国交を結ぶ為に、ルカ皇子の母である第1側室ラーラが元外交官のスキルを活かしてルカ皇子を連れて海を渡るのに至った。
(ラーラさん凛々しく知的美人なバリキャリで、ルカの乙メンな片鱗が見えない、謎の遺伝です。)
「さぁルカちゃん、大冒険へ出発なのだからもっと元気よくいきましょうね?」
背筋に一本棒が通ったような綺麗な姿勢で、キリッとした表情を浮かべながら、言ってる事は素っ頓狂であった。
「は、母上…揺れるから!引っ張らないで。
吐く吐いちゃう。」
「フハハハ、ルカや。
それは気合で何とかなるぞ!
ほら、海に向かって叫んでみよ。
スッキリするぞ〜。」
完全に脳筋思考の父は楽しそうに窘めてくる。
この甲板に、味方は誰も居なかった。
暫くして、乳兄弟のテラが甲板に上がって来て、状態異常回復の魔法をかけて来れて落ち着くまで。
フラフラとしながら、甲板で海を眺めていた。
「そんなに船酔いきついなら、私めを呼んでくだされば良かったのに。」
苦笑しながらテラが呟く。
「まぁ父上と母上に連れ出されたから、近衛も離れてたしテラとフレアには休憩させたかったからさ。」
力なくハハハと、笑う。
因みにフレアはもう1人の乳兄妹で、テラは側近、フレアはメイドだ。
他にボクの直属な部下は執事のメテオ爺。
僕付きの騎士オリオンと女魔導師のプレアデス。
最後に文官のカシオペア。
第二皇子と考えれば少な過ぎるが、まぁ側室腹と思えば優遇されている、と思いたい。
船での旅は一週間掛かった。
魔法船で一週間なのは、距離的に早い方である。
魔法を使わない船は、風を考慮したりするので。
この距離なら一カ月くらい掛かる。
風に混じる砂の幻想的な眺めを船から魅入られたようにルカは見つめた。
「ここが、大陸フィラメント…幻想的で過酷そうな土地柄に見えるけど、砂漠が綺麗だな。」
「新しい大陸に到着です。
ルカ殿下、船を降りる御仕度は整っております。
さぁ、どうぞこちらへ。」
「うん、分かった。
今行く。」
メテオ爺が、俺の手を取り甲板 から降りる階段に案内してくれる。
両親は既に降りてボクを待ってくれていた。
ザクザクと不思議な感触の砂の足場でパランスを崩しかけるけど、予想していたのか、メテオ爺が支えてくれて居るからか倒れなくて済んだ。
その一歩が、ボクのあの人との再会に繋がるなんて思いもよらなかったんだ。
けれど、あの人…マニ姫が大変な事になってしまうけれど。
でもボクは、絶対ボクだけは見捨てたりしないから。
そう遠くない未来の再会は、波乱含めのラ波動だったとマニ姫が笑う。
…ラ波動って何だろう?
転生者冒険者旅団のエリシオンの面々ですが、基本メインキャラとのやりとり有りません。
パニマか家康くらいとは遭遇するかもですが、立ち位置的にはメインキャラに関わらない助っ人サブキャラですかね。
残念ながら、転生した記憶ある時点で一般人にもモブにはなれません。
日本人は目立つ事を厭う気質の方が多い為、地球から貰った魂は順番に目立つポジションにたたせたり、控えめなポジションに転生させたりしてその人に合ったタイプをパニマは模索したりまします。
結構過保護対応なのはマニ相手だけではないのですが、マニ相手は抜きん出てるので数に入れてません。




