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忍び寄るフラグはラ波動の薫り

「はぁ、やっぱり水でも浴びるとさっぱりするわねぇ。」

バワーズの衛星都市トルネアの小さなオアシスの泉に、1人で入ってます。

たまにはダンジョン以外に簡単なオアシスの水質検査依頼を、と冒険者っぽいような前世なら公務員や研究者みたいな依頼でした。

まぁ用意された水質検査用の魔道具用紙を水に浸けて水から出すと、その水の成分が記され、何故か水分も弾かれた状態になります。

魔道具らしい不思議現象ですね。

ちなみに、トルネアの冒険者ギルドにライラと2人で来たんだけど、あっさり依頼は完了したのでライラは宿で先に休んでたりします。

何だか今日は寝苦しくて、1人宿の側にある泉に入ったの。

いやぁ、よるになったらさぁ。

バワーズ独特な、地球で言う白夜みたいな夜なのに薄っすら虹色に空が明るくて幻想的な夜空の中、ぼんやり泉につかるのもオツだね。

温泉なら尚最高だったね。

蛍っぽい光る小さな妖精が泉の周りをふよふよ飛んでいる。

オアシスの泉は麗しい女神の涙、とか水源の少ないバワーズでは例えられる位に大切にされている。

その辺りも、泉の水が綺麗な要因なのかもしれないね。

さて、そろそろ冷えて来たしあがりますかね。

などと立ち上がったタイミングで、ガサッと砂を踏む音が響く。

「へ?」

「あ!?」

油断した、魔物か?

と思って振り返る。

そこには漆黒の黒髪を腰の辺りで緩やかに束ね。

紅い隻眼で眼光の鋭い、魔王様とか言いたくなりそうな180位の長身麗躰、イケメンと言うよりはハンサムな男性が居た。

しかも裸、そう一糸纏わぬ裸体。

それが問題だった。

見えちゃイカんもんまで見えてるんですが。

あぁ、アレの対象者にはなりたく無いサイズだな、壊されそう。

などと明後日の事を一瞬考えた後、我に返った。

「やっ!変態!こっちくんな!」

ヤラレル!と身構え水に浸かり直す。

「変態じゃ無い!見て無い、わざとじゃ無いから!」

ばっと後ろを向いたそのハンサムさんは、まあイイお尻だったよ鍛えてるのかな?

見せんなよ、マジで。

私はそのタイミングで着替えも含めて転移した。

もうね、逃げるか勝ちだよ。

でもさ、まさかあの魔王様みたいなハンサムさんに又会うとは思いもしなかったんだけどね。

ホテルの部屋で服を着替えて不貞寝した。

スタイル的な意味で、負けた気がしたようだ。


取り残されたハンサムさん。


魔法の気配を感じたあと、後ろの気配が消えた。おそるおそる振り返ると、もう誰もい無い。

「転移で、逃げたのか…。」

ハンサムな青年は、困った表情で肩を竦めた。

「この時間に衛星都市の泉に入る者はあまり居ないが、冒険者だろうか?」

痴漢か覗きと勘違いされたらしいと溜め息を吐いた。

白夜と妖精の灯に照らされた裸体は凄まじく美しく、幻想的なまでに蠱惑的で、見惚れた。

女の裸体など、夜這いを仕掛ける馬鹿な女達のせいでなど見慣れていたと言うのに、脳裏に焼き付いて離れないのだ。

彼は女嫌いで有名な、バワーズのシーク。

アルジェント・ダルク・トレジャス。

お忍びで出逢った乙女の事で頭がいっぱいになっている。


彼は彼女のこの誤解から、変態シークとして暫く扱われる不憫枠としてマニに惚れてしまうのだった。

本来は、クールで大人な男性枠だろうに、本当アルジェントさんマジ不憫。


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