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ラブコメの波動が這い寄る感情になっても気付かない主人公補正

祭りだまつりだー

しゃらん

しゃらん

破魔の神楽鈴を、祭りの山車舞台の上で数人の巫女装束の乙女達が鳴らす。

神世の創世を文字ったその舞は、パニマを初めとした神々への感謝祭的な祭りに必ず有るものだ。

勿論、国事に多少違う色は有れど。

この1月1日…パニマ神の日には、必ず踊る類の神事だった。

ウエスティア帝国では、巫女服は日本の千早を羽織った白衣と緋袴姿だった。

祖国シュルツでは鬼道シャーマン的な、卑弥呼みたいなセクシーな服なので。

巫女さん慣れるまで恥ずかしそうでした。

だって、下はミニスカート。

上は、袖の付いた二枚の布を胸と、ウエストと首で結んで止めるだけの、エプロンみたいな服で。

横乳ばっちりなんじゃよ。

しかもノー下着で踊るから。

まぁあれだ。

アメノウズメさまみたいな事になっちゃうわけですよ。

私らの代近くになって、流石に破廉恥だから。

と、やっとインナー着用可能になったんだそうな。

豊饒の祭りだから。

多産的イメージなエロい巫女さんで、色々煽る簡単なお仕事だったんだろうなぁきっと。

巫女さんも、多産系女神と永遠の処女系女神で活動方法が変わると言うのはどうも何処の異世界も同じらしく。

多産系巫女は色々エロイし、祭りの日彼女らは神の教えの元。

奔放に誰とでも関係持てちゃうから、心無い人達からは巫女娼婦とか揶揄されることもある。

見目麗しい女性が多いので、まあ半分はやっかみらしい。

もっとも、生まれた子は神の子として神殿預かりになり管理され。

ヘタな貴族よりもきちんと教育を施され。

神官や巫女や、医療院の治療師や、文官や神殿兵団や王宮メイドとかになれたりするのだ。

素性の知れない庶民より神子達は貴族寄り待遇なので、ぶっちゃけ娼婦よりは全然待遇は良いんだけどね。

細かい実情を知らないと、あまりの高額給料待遇にびっくりするらしいね。

ちなみに処女系巫女は、厳格に神殿に守護され教育を施される。

今でこそ婚期の20代になったら引退できるが、昔は選ばれると結婚できなかったんだって。

ちなみにこちらの巫女達も、選ばれるのは美形が多いため。

だいたい優良物件として引く手数多で、売れ残るケースは少ない。

なので、良家と婚姻させたい庶民の金持ちや、男と接点持たせたくない親による女子校ちっくな淑女養成場所として人気が高い。


まぁ、祭りの巫女役は庶民から無難に選抜され。

神々役は、大体王族貴族あたりがなるのも定番だ。

そろそろあのぽやぽやした坊や皇子様が、輿で来るかな?

皇帝・皇后のセットが過ぎ。

第一皇子第一皇女の兄妹が通る。

その後側室がずらずら続いて。

歓声も静まった頃、ひっそりと第二皇子が来た。

彼の後に、別の側室腹の皇子皇女が数人続いて。

最後は金鎧の近衛兵団と、白銀鎧の聖騎士団。

黒鎧の黒魔導騎士団が続く。

勿論全員ではなく、この兵士達はそれぞれの精鋭二十人で固めており。

一糸乱れぬ演舞と鼓笛隊行列をする。

また、列にまざらない魔法使い達は、幻影魔法による華を舞い散らせたり。

キラキラエフェクトかけたり。

プロジェクションマッピング的特殊効果や、照明や花火効果を演出したり。

なかなか大変そうだ。

なんでも数世代前に、異世界トリップした人が王族と仲良くなって。

あちらに帰るまでに残して行った技術だそうだ。

きっと、社会人でこっちに来ちゃった系だったんだろうなぁ。

しかし、あのぽやぽやちゃん。

影が薄いと言うか、顔も地味だけど全体的に全て凄く地味だったなぁ。

側室腹だと、何処の国でもスペア扱いなので。

特に母親が身分低いと第二皇子だとしても、王位継承権からは遠くなる。

皇帝はどうも無類の女好きなようで。

側室庶民混じりだった。

あのぽやぽやちゃんは、きっと庶民腹だろうなあ。

普段から派手な服装じゃない事だけは、理解した。

つーか、あんなに子沢山だと王位継承権争いとか勃発しそうよね。

あの気弱そうなぽやぽやちゃんは、どう考えても真っ先に殺されそうでちょっぴり心配だけど。

・・・ん?

私会ったばかりなのに、なんで心配してるんだろ?

首をかしげたタイミングで、ぽやぽや君・・・・ルカたんと目が合う。

いや、視線がかすっただけか。

真っ赤になったような気がした。

緊張してんのかな?

ふむ、皇族としてのオーラがないなぁ・・・。

お忍びしていても、育ちの良さはまるわかりだけど。

皇族にはとうてい見えなかった。

しかし、肌超綺麗だなぁ。

あのくらいの男子なら貴族皇族王族だろうと。

ニキビとか出来たり、転がりまくってわんこみたいに薄汚れてそうなのに。

いいものを食べて、毎日お風呂で磨かれているのだろう。

17歳になった自身の肌はまだイケルけど。

王族生活の頃ほどの肌ケアは出来ていないだろう。

まぁ、だからと言って祖国に戻って再建国するか?

と言われてもマジ困る。

そんな帝王学的な勉強は、マニの前人格さんまったくしてこなかったからね。

作って直ぐに傾国とか、お話にならない。

私を追い出したんだから、現地に残った連中に頑張ってもらうしか無い。

婿で優良物件貰うとかいう手も、あちらで戦争を経過し生き延びていたなら考えただろうけれど。

今は解き放たれた自由の身だ。

いずれそういう思考の者が、こちらに擦り寄って来る可能性は有るだろう。

最悪パニマに頼んで逃げるけど。

まぁ、ギリギリまでは自分で今度は動こうと思う。

思考にふけっている間に、ルカたんの輿は通過していった。

パレード見終わったから、屋台に移動しよう。

フードをきゅっと整えて、くるっと後ろを向く。

「え?」

「ぁ・・・マニ様・・・。」

蒼白の表情をした男の声が私を見抜く。

少し強めの認識阻害が効かない魔力の強い男・・・。

じっと眺めるまでもない、懐かしくも憎たらしい元婚約者がそこに居た。

不意打ちの再会。

いや、龍子の人格に上書きされた形の私にとっては、初めましてだ。

「おや、はじめまして?

お兄さんあたしに何か用かな?」

あえて気さくな庶民風・・・いや龍子の口調で。

すると、明らかに衝撃を受けた表情で固まる。

「・・・っ!」

唇を噛んでうつむく。

軽薄さが鳴りを潜め、心なしかやつれている。

多少は懲りたのか?

まぁ女癖もだが、国滅ぼした女の後始末がキツイんだろうね。

知らん振りをして、私は踵を返す。

「屋台まわりたいから行くねー、バイバイお兄さん。」

苦悩に付き合うギリはない。

さくっと立ち去ろうとしたら、腕を掴まれた。

「ま・・・待って下さい。」

真っ直ぐにこちらを見つめる瞳の色が強い。

何か覚悟を決めたのだろう。

だが、私は彼の覚悟を笑った。

「なぁに?ナンパ?間に合ってるから。」

のらりくらりとその腕からすり抜ける。

一定の距離感。

今のマニとギルシュの距離としては近すぎる。

だからその腕には捕まらない。

彼も又、無理に捕まえる氣は無かったようであっさりと手を離した。

「ずっと・・・謝りたかった。

許してもらえるような事ではないとわかっております。

それでも!」

いきなり切り出した謝罪の声は、心なしか大きい。

そうでなくてもイケメンが切々と声をかけているのだ。

チラチラと見られていたのは気付いていた。

流石にいたたまれなくも少し恥ずかしくなって、周囲をキョロキョロ眺めてみると。

大抵の反応は、なーんだ痴話喧嘩か、リア充爆発しろくらいである。

でも恥ずかしいので、仕方なく彼の腕を掴んだ。

「お兄さん声でかいし、なんかそれウザいから、ちょっとこっち来て。

周囲に迷惑かけんな。」

最後は小さくきつく呟く。

「え?あ?ちょ・・ちょっとお待ちください・・・。」

最後まで言わせず、グイグイと公園まで連行。

そして、少し歩いた先の、人もまばらな広い中央公園のベンチに、彼を無理やり座らせる。

「ちょっとまってて、すぐ戻る。」

そう言い捨てて、列のない屋台の軽い串焼き系の食べ物と飲み物を手早く買う。

そして戻ってみると。

ギルシュはシュンとしながら待っていた。

前人格マニが惚れていただけあって、ああして黙っていれば本当見目麗しいイケメン貴公子様だ。

前世のメンクイだった部分だけ引き継いだのかと思うと、なんとも言えないが。

「ほら、これどーぞ。」

ひょいと買ってきたものを渡す。

「あ・・・わざわざありがとうございます。」

「まぁコレでも食べて、少しは落ち着きなよギルシュ殿。」

バレてるし別人のフリも面倒になって、名前を呼ぶ。

「も・・・もうしわけ。」

「あーもう、辛気臭い!

せっかくの祭りなんだから、四の五の言わず楽しめ。

美味いもの食べて祭りの空気読め。」

「は・・はい、頂きます。」

おずおずと頷くと、焼き鳥と林檎っぽいドリンクを口にする。

このあたりの名物だ。

名物過ぎて地元民はあまり食べないが、外国人の私らにはちょうどいいだろう。

美味しかったのか、少し表情が柔らかくなった。

やれやれ、こりゃゼファー笑えないな。

何世話してんだか、あたしゃオカンかよ。

やれやれ。

とりあえず、こいつがうだうだ言う前に、こっちの言い分言っておくかな。

「やっちまった事は消えない。

死んだ連中も帰っては来ない。

まぁ王家や国が滅んだ遠因ではあるが、原因はあの女と攻めてきた他国だろ?

そんな事まで背負う必要はないさ。

まぁでも、それでもどんなやり方だろうと、罪を贖うことは出来るだろう。

あたしは国に戻る気は無いし、再建国する頭もない。

だから、あんたらが国を再建国するなり、他国と合併させるなりしろ。

民だけは被害を最小限にすれば、あとは国なんて器はいくらでもすげ替えられるもんだしな。」

じっとこちらを眺めて、何か言いたげにしているが、黙っていた。

「まあ森に放置られた時は、流石に死ぬかと思ったけど。

運良く助けてくれる仲間に出会えたんだ。

そのとき、色々冷静になれた。

だから、それはもう怒ってってない。

つーかいつまで気にされても面倒くさい。

それにあんまり悩むとハゲんぞ。」

ぼりぽり頬をかく。

軽く林檎もどきジュースを口に含んで飲み込む。

「それに、錬金術士として冒険者の生活が性に合ってたみたいでね。

王宮に居た頃のような、薄っぺらい生き方よりは楽しいよ。

生きてるって感じがする。

だからギルシュ、あんたは人様に迷惑をこれからなるべく掛けずに、あんたの生きたいように生きればいいさ。」

そう言って、答えを聞かずに私はそこから立ち去った。

「それでも・・・申し訳ない事をしたと・・・おもっています。」

大きく叫ぶ声に振り返らず手を振る。

うん、これでいいよね前人格のマニ?

多分、ギルシュとの関係はマイナスからの再スタートだ。

どこかでまた交わることも有るだろう。

私は面倒事は嫌いだから、彼の苦悩には向き合ってあげない。

せいぜいハゲるほど悩めばいいさ。

そんな考えで居たんですけどね。

うん、フラグ立ててたらしいよ。

なんでか裏から熱い視線を浴びてたとか、やっぱり気づかなかったんですよ。

うーん、私一級フラグ建築士になった覚えは無いんですけどね?

つーか、この世界のイケメンの惚れっぽさどうにかなんないんすかね?

あぁ、創造神が惚れっぽい神だったわー。(棒)

数日後、この地の親類の所にプチ外交で来ていたギルシュは。

私の居場所を突き止め。

時折通ってくるようになるのはデジャブですかね。

くそう、甘やかすんじゃなかった。

ルカ皇子の平凡っぷりと、ギルシュとの再会。

そして、どこまでも鈍感なマニたんですた。

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