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ラブコメの波動よりも西へ向かうと思い出すあの歌

異国で温泉三昧

西の国ウエスティア帝国の外れに、小さな館と広い庭園を構える。

元々ここは魔物が闊歩する森林地帯で、一番初めの迷いの森に環境は近い。

冒険者ならスーパーが沢山つくクラスでないと、本来出入りできないような悪環境なのだが。

魔王が勇者によって滅された後は、比較的ゆるやかに魔物は身を潜め。

この森は中級より上なら、生活しても問題はない環境へと変化した。

後は、土地問題的な話になるが。

森林開発が進み、このあたりは一攫千金で得たお金で、冒険者達の小さな村落が出来上がっていた。

既に出来ている町や村は、新たに人が住むには手狭で。

魔物の被害で、世知辛くも帝国は現在予算が心もとない。

だが、精霊の多い森林を怒らせるような破壊しない開発ならば、土地代は無料で住むことが可能な場所として、帝国が斡旋してきた場所だ。

幸い大工的な土木系木工系関連の魔法の使い手が居たら、建物を作るのは造作も無いし。

何より、材料の木材は間伐しただけで大量に有るから。

精霊や妖精達も、森の水はけや風通しが良くなり。

何より程よい日差しも入るようになった為、鬱蒼とした闇に惹かれる魔の勢力がなりを潜めたと好評なのだそうだ。

と、この森林開発計画それなりに各方面で人気となっていた。

「にんにきにんにき~♪」

何が鼻歌まじり(うろ覚え)に調合するマニ。

「む?それはマニの年では知らないはずだよね?」

「え?」

「え?」

「西へ向かうと言ったらこの歌かなって・・・てへぺろ。」

平成生まれの龍子の鼻歌である。

パニマは首を傾げた。

「たしか、主役が不治の病で亡くなったドラマのほうではなく、知り合いの神に、昔のお笑い番組と流れで人形劇を見せられたのだが・・・そちらの人形劇の方かな?」

びくっと固まる。

「あー、知ってたのか。

それ前世パパがお笑い好きでさぁ、有料放送とかので見せられたんだ。

凄いよね、舞台回転とか予算の使い方おかしい感じとか。

私らの世代じゃお笑いも似たり寄ったりだったから、逆に新鮮だったよ。

人形劇の方は、三人組の話におじさんが混ざってた。

色々突っ込みどころしかなかったよ。

朝の六時くらいに本放送してたらしくて、早起きしてパパ見ていたんだって。

歌は耳に残ってたの。」

なんとなくストーリーはうろ覚えだったが。

前世ママはスポーツが好きで、お笑い見ているパパを冷淡に突っ込んでたけど。

何故かパパは楽しそうだった。

ちょっと前世パパのドM疑惑に遠い目になる。

「ふうん?まぁ西は西だしね。」

笑いながら、頷いた。

「所で何を作っておるのだ?」

ゼファーが手元を覗きこむ。

珍しく薬剤ではなかったから気になったのだろう。

漂うのも薬品のそれではなく、濃厚な甘い香りだ。

「楓の木からメープル樹液大量に取れたから。

メープルシロップとメープルシュガー作っていたの。

味見してみる?」

二人に小皿で渡す。

「甘っ、ここいらの砂糖関連より濃度が高いな。」

「おいしいなこれ。」

「沢山は取れないけれど、我が家で使う分くらいならそれなりに作れたわ。

甘みの濃度は、旬の時期に搾取したからよ。

まぁコレで、蜂蜜との併用が可能になったわ。

蜂蜜も美味しいけれど、癖が強いから。

素材の香りとか味とか結構消しちゃうのよね。」

「まぁ女性は特に甘いモノが好きだからね。」

「我もこれは沢山食べたくなりそうでヤバイな。

そうでなくとも、マニの異世界風料理は美味しいのに・・・。」

お腹まわりを気にする発言をするゼファー。

太らない体質のくせに何を言う。

とジト目になった。

ちなみに、元の世界と名前の違う似たような料理や材料が結構有るのは、パニマが地球食に目覚めて、似た食材を作ったためらしい。

何でもありだな。

ってそうか、創造神だしな。

ちなみに、今は亡き祖国シュルツ王家は洋食が多く。

この帝国では何故か和食が多かった。

タルト共和国はなぜかアジアン料理が多いらしい。

マジで謎の偏り具合。

まぁ和食が食べられるのは大変ありがたいからいいんですけどね。


ところでこの国に来た時、身分証明はパニマが作成した。

ここの身分証明事態がシュルツよりザルで、名前とお金さえあれば細かい審査も魔法虚偽認証とかもいらないんだそうな。

まぁ理由は魔物があまりにあちこちの村や町を壊しまくった為。

身分を証明できる者達が死んでいるのが原因の一つらしい。

他国から侵入し放題じゃないかって思われそうだけど。

西なのに、ここは正確には西北の地域でとても寒く。

人が住むにはもともと過酷な方だったから。

地域的魅力も薄く、他国が攻めてくる要素が薄い。

イメージ的にはスイスとロシアが足されて、極寒部分がでかくなったと思ってもいいだろう。

だがこの森の魅力に私は負けた。

そう、山脈が近く。

この辺りちょっと掘れば温泉が沸くのだ。

故に、我が家は温泉のご利益で生活出来ている。

日本人に毎日お風呂は欠かせないのです。

まず、温泉に毎日入る。

次に、温野菜を温泉の湯気で蒸し釜作って毎日食べられる。

洗い物はぬるま湯で。

雪が降っても、結界で囲った館に、蒸気を適度に充満させばらまいて。

雪かきせずにいつでも常温の地面が見られる。

床下にも蒸気を通し、なんちゃって床下暖房も可能。

建物はカビないように術を施し、いつでも新品同様になっているため保全もいらない、と至れり尽くせり。

このあたりは、家をここに設置するとき、三人で相談して作り上げた。

初めはパニマが全部作ろうとしていたのだけれど。

そろそろ確実に三人で住むのだからと、作業は手分けをすることにしたのだ。

このシステムにしたら、野菜やハーブの出来は速くて良質だし。

何より量が取れるようになった為、薬以外の調合を加速させた。

あー、蒸し芋美味しいです。


暫くして、大量に化粧品や香水や簡単な魔法薬が作れたので。

ここから二キロほど少し離れた首都ニナへと向かった。

首都の側まではアイテムボックスに入れて。

近くに見えたら人の居ない木陰でリュックに荷物を入れる。

カートもどきでもいいのだが、液剤が有るので、割れたら怖いからこうやって背負う。

一応リュックの重さ半減の魔法が掛かっていても、ずっしりと重い。

だが流石に慣れた。

なんちゃって行商人みたいな事をし始めたのは、今に始まったことではない。

庶民として暮らし始めてから時々行っていた。

まず、この国に多い煤けた赤銅のような髪と瞳の色を魔法で変え、伸びた髪を三つ編み一つに束ねる。

さらに、顔の認識を薄れさせる魔法の化粧を施し、怪しくならない程度に目立たないように工夫。

服装は、この国の民族衣装風の、同じ年頃のフードポンチョ付きワンピースという出で立ちだ。

服までなんだがケルトとかゲルマンとかあたりの、古い民族衣装ぽい感じで可愛らしくて気に入っている。

門に身分証明を出すと、気さくなおじさんはすんなり通してくれた。

「じゃあ二人共、買い出しは頼んだわ。

私はこれを買い取ってもらってくるから。」

「おう、行ってらっしゃい。」

「気をつけてね?」

ここからは二人と別行動。

私は買い取り専門の業者へと向かった。

結構こじんまりとしている佇まいだが、ユリア商会は冒険者ギルドからのお墨付きの、善良な買い取り商人のユリアおばさんがつくった商会だ。

新人の見習い商人達が、商人ギルドから斡旋され。

研修場所としても選ばれるほどの場所らしい。

マニはここしか知らないので比べようもないが。

たしかにユリアおばさんは、なにわの商人系のおもしろおばはんである。

「おんやマニちゃんか、よう来なすった。

今回は買い取りかい?買い付けかい?」

入り口を開けた途端、目ざとく声を掛けてくる。

「今日は買い取りをお願いするわ。

やっと化粧品が完成したの。」

すると瞳を輝かせる。

「サンプルでもらったアレも良かったから、期待してたのよ。

どれどれ・・・んまぁこれとんでもなく上質ね。

又調合の腕上がったんじゃないの?」

サンプルは蜂蜜のリップと薔薇の化粧水である。

今回はそれに薔薇の香水や、シャンプーとリンスも作ってみた。

「えぇ、レベルが一つ上がりました。

あ、使用説明はこの書類に描いてあります。

あとこれ、柑橘系の香水です。

この辺りだと柑橘系が手にはいらないので、少ししか作れなかったから。

売り物ではなくご贔屓のユリアさんへのプレゼントです。」

渡された香水の香りを嗅ぐと、満面の笑みになった。

どうやらおメガネにかなったようだ。

袖の下効果か、相場より一割マシの価格がついたので、こちらもホクホクで商会の外に出た。

ドンッ!

「きゃっ!」

「ふきゃっ!」

小さな衝撃。

驚いて足元を見ると、小柄な少年が転がっている。

わたしよりも女の子らしい悲鳴ってどういう事?

「あ・・・ご、ごめんなさぃ・・・ふぁ?」

何故か少年は、私の顔をみて固まった。

え?そんなに怖い顔だった?

首をかしげると、少年は起動再開した。

が、真っ赤になって今度はぷるぷるしている。

なんだこの可愛い小動物。

よく見ると、十歳前後の幼い顔立ちは普通だが。

小奇麗な服装や身なりで。

庶民風にしているのに、所作から何処か育ちの良さが伺える。

貴族がやんちゃしてお忍びに来た感全開である。

こういう場合、しのごの言わずにしゃがんで立ち上がらせたほうが早い。

と、とっとと動く。

なんだろうね、顔立ちは普通なのに、すごく挙動不審というか。

所作が女の子みたいに可憐な坊やは。

「あ、あのありがとうございます。」

小声でぼそぼそ、お礼を呟く。

かなりの小心者のようだ。

「ありゃルカ殿下、又お忍びでいらしたので?」

ひょっこり後ろのカウンターからユリアが顔を出す。

殿下?

不思議そうに首を傾げると。

「あぁマニちゃんは帝国に来てそれほど経過していないから、皇族なんて知らなかったっけね。

そちらの方は第二皇子のルカ・ラル・ウエスティア殿下さ。

良く城を抜けだして男を磨きに来るんだけど。

ドジっ子だから何もないところで転んだり、中々楽しい事になるお方だよ。」

それは磨けて居るのだろうか?

ちょっと生暖かい目で眺めてしまう。

「ルカ殿下、その子はマニっていう将来有望の錬金術士さ。

慣れない異国からの冒険者だから、見かけたら仲良くしてあげておくれよ。」

「は・・はい。よろしくおねがいします、です。」

ルカ殿下は、真っ赤になっていっぱいいっぱいの様子。

「ふふっ、よろしくね、ルカ殿下。」

笑顔で普通に挨拶。

ここで王族対応したら身バレするからね。

まだいらない腹は探られたくはない。

しかし、マニは気づいて居なかった。

直接マニにぶつかって二度触れた為。

ルカに対し、掛けていた軽めの認識阻害が外れ。

先ほどからマニに見惚れていた事を。

ぺこりとお辞儀して、待ち合わせの場所へと立ち去った後ろ姿を、ずっと見えなくなるまでルカが眺めていたなんて事も気づかなかった。


合流したパニマが、ちらりとマニを眺めてからため息をつく。

その身体に微かに付いた残り香のような気配に気づいたのだ。

「やれやれ、やっぱ年齢引き離しても出会うのか・・。

まぁ仕方ないな、僕が連れて来ちゃったし。」

小声で何かつぶやいていたが、マニ達には聞こえなかった。

新キャラは一体誰なんだってばよ。(棒)

西の帝国編です。

あと、鼻歌はあれです、ド○フ的なあれです。

カトチャンのピンクタイムが有る斬新な子供向け人形劇があるのはアレだけです。

ちょっとシリアスクラッシャーシたかったらしいです、はい。

では又


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