引きこもりして居たらラブコメの波動が帰って来た。
マニ、引きこもりクラッシャーに会う。
ゴロン。
ゴロン。
ゴロゴロゴロゴロ。
「ええい鬱陶しい!
自分で覚悟決めて勇者追い出して、お前何をウジウジしてやがるんだ。
いい加減出て来やがれ。」
バリッとゼファーに、引きこもった布団を剥がされる。
くそっ、いつもは甘々なのに、なんだよこの引きこもりクラッシャーなオカン状態。
不満げにゼファーを睨みつけるが、とても効果は薄い。
ボサボサの髪、ヨレヨレのパジャマ。
浄化魔法で毎日汚れは落としても。
この一週間、引きこもって何もしないものだから。
みっとも無くも情け無い姿を晒して居る。
最初心配してそっとして置いた癖に。
何か癇に障ったのか、現在とてもゼファーが冷たいのです。
「ん?何か不満か?
取り敢えず風呂だ風呂!」
そう言って、スルスルと器用に服を脱がしにかかる。
「ぎゃ⁉何すんの。一人で出来るわよ!」
シャー!
とアラシを吹く猫の様に、その腕から逃れて風呂場に逃げ出した。
「おうおう、元気そうで何よりだな。」
からからと笑う。
ああ、ゼファーの布団から出す作戦勝ちだ。
そして、閉じられた風呂場の扉前で、苦笑しながらゼファーが心配そうに眺めて居たと、私は気付かなかった。
ひとっ風呂浴びてサッパリすると、身体が暖まり少し冷静になったのか頭が冷える。
ゼファーの言う通り、私が彼を元の世界に返させる事を望んだ。
今更グダグダ思い悩むのは性に合わないし。
征にも失礼だよな。
「元の世界…か。」
懐かしさに涙が込み上げる。
あちらの年と、こちらの私が覚醒した年は偶然だが同じ15歳。
それもあって、何と無く時間の感覚共有がおかしい。
でもこちらのカレンダーは、前世と同じ太陽暦方式に近いから。
呼び方さえ覚えたら、あまり間違えなくて済んだ。
さて、征を追い出したのにはもう一つの意味が有る。
過去に囚われて居るのは私も一緒。
マニとして生きるなら、私も乗り越えなきゃいけないのだ。
「よしっ、気合い入れた!」
パシッと頬を叩く。
「征、ゴメンね。
私こっちで頑張って生きるよ。」
小さく呟いて、遠い遠い異世界に居る彼の幸せを祈った。
既にその彼が、あちらで私とほぼ同時に亡くなったなんて、思いも寄らずに。
部屋に戻ると、ゼファーとパニマが荷物をまとめて居た。
「どうしたの?」
「僕達話し合ったんだけれど。
この孤島に、何時迄も若い君を閉じ込めるのは、そろそろ良く無いと思ってね。
ここに逃げ込むのは、マニちゃんが本当に全てを失ってからでも遅くないんではとね、思ったわけですよ。」
「我らもマニに相談もせず悪かったが、我もパニマに同意見でな。
すまんが強行させて貰う事にした。」
「あー、うん。
そうだね。
ここは私に優しい箱庭だけど。
誰にも関わらずにずっと生きるのは、年頃の女の子的に寂しいよね。」
言い辛そうな二人に苦笑する。
凄く心配をかけたようです。
私にとって大切な異世界の家族。
彼らが居なかったら、私はもっと前にヘタれて折れていただろう。
今だに異性としては見え無いが。
まぁ、それはそれだ。
既にほとんどの荷物は荷造りされて。
アイテムボックスに入れるだけの状態だったので、私の準備はあまり無かった。
短い期間過ごした孤島の我が家を眺め、そっと別れを告げて。
私達は、西の国ウエスティア帝国へ転移したのだった。
そこで又新たな出会が待ち構えていた。
さて、次回は新天地です。
どんなところでしょうね?
では又




