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No.25 猫と羊とおつかいと

作者: 夜行 千尋

出されたお題を元に、一週間で書き上げてみよう企画第二十五弾!

今回のお題は「夕焼け」「硬貨」「実験」


2/9  お題出される

2/13 別件にこの日まで追われる

2/14 まさかの胃腸風邪ダウン

2/15 思いのほかネタが浮かばず四苦八苦

2/16 急遽思いついたネタで執筆。相変わらずの遅刻投稿


もう遅刻がデフォルトになりつつある……困ったもんだ……

すみません 本当にすみません orz

 まず、このレポートを初めて見る者のために今プロジェクトにおける概要を説明する。

 今プロジェクトは、ヒトゲノムの操作、および、人の遺伝子に他の動物の遺伝子を加えた場合どうなるかの調査である。考えられるのは、人以上の身体能力を有し、動物的特徴が身体に現れるであろうこと。しかし、人以外がかかる病気を媒介する可能性もあり、経過を確認する必要があると考えられる。そのため、被検体、総勢30体は街一つに集合させ、厳重な警備体制の元隔離。隔離しながらも人としての倫理観を試す為、また知性が人間の子供の成長と大差ないか確認するために、今回の様な実験を行った。


 実験目的は、人間の子供と同じだけの倫理観などが備わっているか、状況を自力で判断できるだけの知性が有るか、という実験である。……が、如何せん、人間の子供を見守る親の気持ちに我々研究員が成ってしまったのは否めないことだと思う。


 さて、実験内容は至って幼稚な物を用意した。

 三個入りのクリームパン二つを、我々研究員4人と被検体二人で分けた場合、一つも残らないはずだが、そこで一つをわざと余らせ、且つ研究員二人に嘘をつかせ、研究員二人が食べていないのに余りが一個しかない、という状況を作り出した。これに関し、被検体の善悪の基準、もう一人の被験者を責めるか、自己犠牲の精神から嘘をつくか、あるいは、被検体No.3:ドライ(カラスの遺伝子を組み込んだ被検体であり、異常に頭脳が発達していたと思われる。男。当時五歳)のように、研究員の嘘を見抜くかどうか……

 被検体が5歳の時にこの実験を開始、その一部始終を記録する。



 以下、被検体No.26:ミーア(猫の遺伝子を組み込んだ被検体。女。当時五歳)、被検体No.27:ラウ(羊の遺伝子を組み込んだ被検体。男。当時五歳)、この二名に関する今回の実験の記録である。



 まず、被検体二人が食べているところで、研究員ナオと、研究員ケイトに嘘をつかせる。


「あれ? 私たちまだ食べてないのに、残りは一個しかないの?」

「どうして数が合わないのかな?」


 わざとらしく目の前で疑問の表情を浮かべ、反応をうかがう。

 最初に反応したのはミーアだった。頭上に生えた猫の耳をぴくつかせ、警戒の色をはっきりと表しながら彼女は言った。


「私たちは一個づつしか食べてないわ。イオやマイク(他の研究員二人)に聞いてみたら?」


 自分たちの立場をはっきりさせる、そうすることで問題には無関係を示したいようだ。

 だが、それでこの実験は終わらない。特に、すこし一瞥くれただけで俯いたラウに関しては情報が取れていない。

 実験を次のプロセスに移す。


「ラウじゃないの? 食べた? 二つ」


 自身にあらぬ容疑がかけられた際、どう反応するか……


「え、あ、あの……僕は……」


 なかなか要領を得ず、時間を割いたが、根気強く、責めることなく聞いてみる。が、予想に正しく、自分が疑われたことが針の筵らしく、ラウは泣き出してしまった。

 それに対し、ミーアがラウの、羊の様な巻き角が生えた頭を撫で乍ら慰める行為を確認。ミーアには他者をいたわる心が芽生えていると思われる。あるいは、猫独特の群れ意識から、泣いている者を放っておけなかったのか。

 実験は次のプロセスに移行する。


「じゃあ、悪いんだけど、二人で新しいのを買ってきてくれないかな?」

「そう、二人だけでね」


 幼子二人とはいえ、街を出なければそれほど大きな問題にはならないはずだ。街の中で三個入りクリームパンを買える場所は予め教え込んである。この時の為、と被検体たちは気づいているかは別として、記憶力や人の話を常日頃聞いているかどうかのテストにもなる。

 ごねる二人を半ば無理やり追い出す形で、お金を渡し、買い物袋とメモを渡し、さながら我が子を送り出すかのような情景の元、被検体二人を送り出した。


 街は人間社会の物と変わりなく作ってある。幾つか違うところもあるが、それはごくわずかな差である。

 なので、一般的な街並みを想像してもらえれば、と思う。

 被検体がどう動くかを確認する為、あらかじめ街中の大人たち、および監視カメラは実験のために稼働することになる。二人には決して手出し、手助けはしないが、ひたすらに危なくないか、緊急時にはすぐに医療班が出せるように待機し、その動向を見守った。



 道中、猫じゃらしの薄野に気を取られ、ラウが必死にミーアを引っぱるも効果なく、ミーアが満足するまで時間を割いたため、すっかり日が暮れつつあった。そこに偶然通りがかった被検体ドライ(当時18歳)が、ミーアを窘め、暇で昼寝をしていたラウをミーアが起こすことで実験は再開した。干渉は禁止されているが、今回はやむなしと判断。

 スーパーには難なく到着し、三個入りクリームパンを購入。おつりの硬貨を貰い忘れていたため、これを研究員が回収。あとで再度教え込む必要があると認識。だがこれぐらいは人間五歳児でもあり得る問題だと我々は考える。


 帰り道、ひたすら先導していたミーアが、歩き疲れからか駄々をこねはじめる。


「もうやだー! 足痒いもん! 帰りたいー!」


 待機していたスタッフに聞こえるほど大声で泣きはじめてしまう。

 その場で座り込み、クリームパンをお尻に引きながら立ち上がろうとしない。それをラウが励まし、ミーアの頭を撫で乍らミーアが立ち上がれるようになるまで待つ。


「大丈夫? でももう少しだよ。足痒くなくなったら、また歩こう。帰ろうよ」


 ミーアは泣き腫らした目をしながら、ラウに手を引かれて歩きはじめる。買い物袋が地面に擦れて穴を空けているが、二人は気づいていない様子である。

 夕暮れは終わりすっかり夜になっていたため、研究員が二人を回収しようかと言う時、ラウがミーアをおんぶしながら歩きはじめる。足元がおぼつかずあまりに不安だったが、被検体No.2ツヴァイ(犬の遺伝子を組み込んだ被検体。男。当時19歳)が通りがかり、ミーアを代わりにおんぶする形になる。本来は手を貸してはいけないはずだが、ミーアが疲れて眠り始めてしまったため、仕方なくこれを了承。


 ラウは自力で歩行しながら帰宅。ミーアはツヴァイの背中によだれをたらしながら眠って居た為、彼女が起きるまでツヴァイはひたすら彼女を背負い続けた。彼には悪いことをしたが、体力面などで人間の子供と大差なく、いささか不安な点なども確認できた。

 ミーアは起きた後、クリームパンを潰してしまったことや、ツヴァイに背負われて帰って来たことなどを謝り、改めて、励ましてくれたラウにお礼を述べていた。


 なお、その後クリームパンには「○○(研究員の名前)の」と書かれるようになり、それぞれが多く食べないか、ミーアに確認されるようになったのは言うまでもない。どうやら物を所有するという意識が芽生えていると思う。(なお、最初は油性ペンで書かれていたため、これに関しては叱責を行った)

 実験は以上で終了とする。しっかりと人間の子供並みの知性を有していると確認できたためである。今後の彼らの成長を追って記録していく。

 実験に置いての幾つかの記録をここに残す。







 などとレポートを書き記す私のすぐ傍で、もうじき六歳になるミーアとラウが寝ている。二人とも寝相で布団をけ飛ばし、押しのけ、そのうちお腹を見せながら寝はじめるだろう。その前に仕上げて布団を直してやらなければ。

 見ればほとんど人間の子供と変わらない。だがいくつかの問題もある。だからもうしばらく……この子たちを我が子のように私たちは育てていきたい。

 「マイクの」と食用ペンで描かれたクリームパンを見ながら、私はそう思った。


非道な実験ものだと思ったら

ハートフルな「はじめてのおつかい」になっていたよw

いえ、当初からこの予定でした

夕焼けの中、猫耳幼女と羊角少年とがお互いに励まし合いながら買い物袋を引きずって帰ってくる、というビジョンから造りました


でも正直これ

「だからどうした?」と言われる作品になった感が否めないんですよね……

ちびっ子どもの可愛さを前面に押し出せない歯がゆい作品になった感が……



ともあれ

ここまでお読みいただき、ありがとうございました

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