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黒い羊

作者: 羅知火 夜鷹

偽る事で人は人と関わりを作る。本音()を隠して建前()を被って。


けれど羊を被れない狼は誰からも嫌われていく。

狼はただ、羊に成り切れないだけなのに。

ただ、その色が隠し切れないだけの、黒い羊と成っているだけ。


黒い羊は願っていた。理解者を得ることを。

自分がただ、狼を隠し切れていないだけの、素直すぎる黒羊であることを理解してく

れる理解者を。

黒い羊は唯一の理解者を求めて、今日も何処かを彷徨っていた。



―その人は、何処に居るの?

そう、狼は風に問う。しかし、風は答えない。


―その人に、どうすれば会えるの?

そう、狼は太陽に問う。しかし、太陽も答えない。


―その人は、本当にいるの?

そう、狼は自分に問う。そんなもの、分からない。


その人の居場所を、会える方法を、その存在を、狼は知りたがった。

けれど、誰もその答えをくれはしない


だから、狼は彷徨うだけ。

彷徨うことでしか、見つけられないような気がしたから。

そのまま彷徨い続けても、見つかる気はしなかったけれど。

それでも、ただじっとしているよりは、動いていたかった。

そのほうが、見つけられる可能性があったから。




狼が右に彷徨えば、皆、左に逃げた。

狼が左に彷徨えば、皆、右に逃げた。

狼が前に進めば、皆、後ろに逃げた。

狼が後ろに下がれば、皆、前に逃げた。


皆、黒い羊に恐怖して、近付けないし、近寄らない。

近付けば逃げ、遠巻きに恐怖の眼差しを向けているだけ。

―近付かないで、食べないで。

そんな思いの籠った目が、狼にただただ突き刺さる。


その眼差しが、行動が、狼を傷つけていることなんて、知らずに。


傷付くたびに、狼は何とか羊をかぶろうとした。

けれど、どうあがいても、努力しても、そこにいるのは黒い羊。

狼を隠しきれていない、出来損ないの羊。


その姿で彷徨っても、狼のまま彷徨うのと変わらない。

皆皆、狼から逃げていく。


狼は泣きたかった。

けれど、泣いても何も変わらないことを知っていた。




狼は今日も彷徨う。

どこにいるのかも分からない、理解者を探して。


―いつか、会いたい。


そう願って。





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