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蝶々仮面のパンドラ  作者: ギュラ ハヤト
第八章【眠りの森の美女】編
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眠りの森の美女編――第2部――



「とりあえずは迎撃といくか」

 そう言うと、パンドラはいつもの様に両手にフォースボールを造り出し、それらを合わせて大型のフォースボールを生成すると、それを牛頭の方へと撃ち放つ。だが、

「ヴォッ」

「!」

 あろう事か、牛頭はパンドラの大型フォースボールを、まるで羽虫を追い払うかの様に、そのままパンドラの方へと払い返したのである。

 【蝶・反・応(バタフライリアクト)】によって間一髪これを回避したパンドラは、波導エネルギーを胸部中央に凝縮し、そこからフォースカノンを放った。

 しかしこれすら、牛頭が持つ武器に容易く斬り裂かれてしまう。

「バカな!」 

 驚愕するパンドラに、今度は接近した馬頭が横から勢い良く武器を振り抜き、その上半身を斬り飛ばした。

「・・・・・・ふぅ、【蝶・効・果(エフェクト)】が使えなかったら、今ので死んでたな」

 パンドラは【蝶・剛・筋(バタフライストロング)】で全身を漆黒の鎧で覆うと、町を破壊していく牛頭馬頭に追いつき、再戦を挑む。

「ムーンライトインパクト!」

 DOGOOOOOOOOOON!

「!」

 右腕に凝縮した波導エネルギーを渾身の力で牛頭に叩き込んだパンドラであったが、まるで大人に子供がパンチしたかの如く、牛頭は微動だにしない。

 それどころか牛頭はパンドラの方を振り返ると、持っていた武器を振り上げ、思い切り叩き付けた。

「くっ!」

 当然、パンドラはフォースバリアを展開して防御体勢を取るのだが、牛頭が振り下ろした一撃は、そのバリア毎、パンドラを腰まで地面へとめり込ませたのである。

「トホホ・・・」

 いつもであれば通用する筈の攻撃手段がことごとく通用しない事態に、パンドラは心底困り果てた。

 ムーンフェイスの様に魔力そのものを無効化している訳でもなく、かといってダメージが入っている様子も無い。

「・・通用するとも思えんが、魔宝具の攻撃を試してみるか」

 【蝶・効・果(バタフライエフェクト)】によって半身埋められた穴から脱出したパンドラは、試しに赤ずきんを魔宝具形態で起動し、馬頭へ狙いを定めて引き金を引く。

 ところが当の馬頭は飛来する焔弾に気付くと、棍棒の様な武器を手に、まるで千本ノックの様に次々とパンドラの放った焔弾を打ち返して見せたのである。

「おわっとっと・・」

 間一髪のところでこれを避けると、パンドラはフレイムバスターカノンをブローチに戻し、そこからキタカゼとタイヨウを魔宝具形態で起動し、風を纏う光の矢を馬頭目掛けて放った。

 だが、そうして放たれた光の矢は、直撃こそしたものの、突き刺さる訳でもなく、かといって真っ二つに折れる訳でもなく、ビヨヨン、と、くねり弾かれる。

 これには流石のパンドラも口をあんぐりと開けて呆然とする他無かった。

 その後も桃太郎やウラシマ等次々と魔宝具形態で起動しては攻撃を仕掛けるものの、一つとしてそれが通る事は無く、パンドラはこれまでに無い苦境に立たされる。

 だが、それに反してパンドラの思考は驚く程冷静になっていった。

「・・(効いていない。全く以って効いていない。手も足も出ないとはまさにこの事か。だがムーンフェイスの時とも違う。死の危険を感じない。これ程脅威だというのに・・・・・・)」

 しかしこのままではマルチビットスカートによるフォースバリアで逃げ惑う住人達を守る事しか出来ず、既にジリ貧に追い込まれる。

 ところが新たな展開は突如としてやってきた。

「見づげだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!」

「!?」

 その耳をつんざく様な、しかしどこかエネルギーに満ちた様でもる声の持ち主は少女――頭部に曲がりくねった羊の角を持つ少女がキラキラ輝かせた眼をこちらへ向けていたのである。

 少女は真っ直ぐ牛頭馬頭を見据えると、全速力でこちらへ駆け出した。

 対する牛頭馬頭はというと、パンドラの時とは異なり、明らかに狼狽えた様子で、恐怖の色さえ窺わせる。

「は~~じめ~~の~~ウ~~~~~~ンコ!!」

「!」

「ブギェェェ~~ッ!」

 目の前でウンコを手に嬉々とする少女と、それに吹っ飛ばされる牛頭馬頭の光景を、パンドラは信じられないといった表情で見ていた。

「・・どういう事だ? 何故動物の排泄物が奴等に有効なのだ?」

『ボクにもサッパリだ・・・・・・』

『これは奇々怪々な』

「・・とにかく奴を追う」

 そう言うと、パンドラは涙目で逃げる牛頭馬頭を追いかける少女を追いかける。

 当の羊頭の少女はというと、逃げ足の遅い牛頭に追いつき、その尻尾を掴み取ると、グルグルと砲丸投げの要領で勢いをつけて投げ飛ばし、更に前方を走っていた馬頭へとクリーンヒットさせた。

「ビヒーッ!」

「・・あの小さい体格のどこにあんなパワーが?」

 驚愕するパンドラをよそに、羊頭の少女は二体に追いつき、両手を目の前で合わせる。

「いただきます!」

 すると次の瞬間、少女はその口を自身の数倍の大きさまで大きく広げ、二体を丸々呑み込んで食べ尽くした。

「パックンチョ!」

「なッ!」

「ゴクリッ!」

 かくして新たな童話世界におけるパンドラの戦いは、全く持って歯が立たず、突然現れた羊頭の少女によって収束したのである。



《眠りの森の美女編――第3部へ続く――》

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